愛は時間がかかる (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815729

作品紹介・あらすじ

「誰かのつらさに、大きいも小さいもない」3カ月にわたる、トラウマ治療の記録を書く。『かなわない』の著者による、4年ぶりの新刊!

感想・レビュー・書評

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  • 植本一子|note
    https://note.com/ichikouemoto/

    植本一子
    http://ichikouemoto.com/

    愛は時間がかかる 植本 一子(著/文) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480815729

  • “誰かのつらさに、大きいも小さいもない”

    植本さんの日記をずっと読んできた。

    いつも、不安。誰かに頼らずにはいられない人。そんな印象だ。

    一緒にいる人と、同じようにもたれ合いたい。少しでもバランスが崩れたと感じると、とたんに不安になり、相手にも同じように不安になって欲しくて、イヤな態度をとってしまったりする。

    その気持ちも、わからなくはない。子供だったら。

    治療では、イヤな場面を思い出させる。そこで、何が見えるのか、話す。イヤな思い出だからといって、思い出さないように気をつけてた。無理矢理目を開いて、その場面を思い出す。ふと、今までは見えていなかった、母のことをみてみる。あれ、思ってたほどじゃない。母も、辛かったんだ、と初めて思えた。そこからは、まったく辛い思い出の場面じゃなくなった。まるで「カット!」の声がかかったみたいに。

    そうやって、治療を三ヶ月ほど進める。なぜ、この治療を受けたかというと、今のパートナーとの良好な関係を続けたかったから。依存することをやめたかったから。

    自分から見えてるものは、自分からの視点だけだ。相手がどう思うか、どう受け止めるかは、相手次第で、こちらからは、どうもできない。それでも、相手との関係をお互いに良好に保てるように努力する。そうやって人との関係は続いていく。

    その治療の中で、ようやく気がついた。あんなに憎まれてたと思ってた、母親から、私は、愛されていた。

    植本さんの、潜る感じが、やっぱりとても好き。とても心地いい。こここら、たぶん植本さんは、少し新しい、楽しい植本さんになっていくんだろう。こういうことこそ、書き残すべきだと思う。

  • 自分を変えたい、もう少し生きやすくなりたい__過去のトラウマに向き合うためのカウンセリング記録。時間が経って、立場が変わった今だからこそ理解できることもある...あれは愛だったのだと。

  • 一子さんの本は、多分全て読んでいる。
    そして、この本にはサインしてもらったんだー。文学フリマで。
    ありがとう、一子さん。
    なんだか友だちのような気持ちで、これからも応援しています。

  • 「働けCED」「家族最後の日」以来、久しぶりの植本作品。いつも濃い内容をいい意味でサラサラと読まされる。
    トラウマ治療を受け、それにより気持ちが楽になる著者。言葉にすることによって、気持ちが修正されたり、楽になる効果が高いことを改めて認識した。著者はきっと書くことによっても、気持ちが整理されていくのであろう。
    私がもっと聞き上手だったらとも思うし、私も言葉にすることによって、バランスをとりたい。

  • 一子さんってどこまでも嘘がない人。
    ここまで曝け出しても人と関わる事を止めない人を見ると希望さえ感じる。
    B&Bの柴山さんとの対談も合わせて拝見。
    なんか気になってしまう人。
    人生をずっと見せてくれてる近くにいて遠い友人のような感覚。

  •  植本さんの最新作。トラウマ治療の過程に関する記録で新境地の1冊だった。これまで日記を読んできて断片的とはいえ植本さんの人生について知っている読者からすると安堵というとおこがましいかもしれないが、そういう気持ちになった。同時に自分の根源的な部分にガチで向き合う勇気にも敬服した。
     植本さんのこれまでの日記の特徴として正直ベース、かなり深いところまで書かれている点があったと思うが今回もそれは健在。そもそも精神的な治療のプライベート性というのは極めて高いものであり、医師側の守秘義務が他の医療よりも格段に高いレベルで求められる。ゆえにトラウマ治療をする側の書籍はあると思うけど、治療を受ける側が体験記として紹介しているケースはほとんどないように思う。しかし、そこを軽やかに超えて淡々と治療について綴られていた。内容が重たくないことが本著の素晴らしいところだと思っていて、それは治療のみならず日常の周辺の出来事が日記のように付随して書かれているからだと感じた。治療される人が特別というわけではなく、生活を営んでいることが分かるというか。キャッチコピーのとおり「誰かのつらさに大きいも小さいもない。」というのはその通りで、我々はすぐに他人と比較して相対的にどうなのか?を追い求めがちだが、ことセルフケアにおいては絶対的に自分がどう思うか?を大事にすることが大切だと思う。また手紙という語り口も読み手がいる前提になっているので語りかけるような文体もあいまって優しい要素が強くなっているのかもしれない。
     日本だとカウンセリング治療を受けるとなると相当に心配される現状があるが、VOGUEでの宇多田ヒカルのインタビューなども含めてカウンセリングや精神医療のハードルが下がる一助になる本だと感じた。

  • 一気に読み終わってしまった。トラウマ治療について、大きなトラウマを持っている人のみが受けるものかと思っていたけれど、植本さんもおっしゃっているように、トラウマに大きいも小さいもないのだ。自分の過去を乗り越えたい、自分を変えていきたいと望む人全員が治療を受けることができる。

    トラウマの内容が仔細に語られているわけではないけれど、治療を受けるに従って自らの思い込みやパートナーへの執着を手放していく植本さんの強さに涙が出た。過去の嫌な出来事は、忘れていることも気づかないくらい自分の記憶の奥底に沈められているから、それを取り出して向かい合うのは本当に辛いこと。

    でも、今のままではいけない、パートナーとの未来を願い、パートナーがもしいなくなったあとでも自分と子供たちが元気よく生きていけるようにと強く願い、覚悟した人は強い。実際は書かれているようなサラリとした感じではなかったのかもしれないが、着々とトラウマを乗り越えていく姿に感動しました。

    トラウマ治療について書いたこの本を出版すると決めてくださって本当にありがとうございます。

  • 私にも深刻に受け止めていないトラウマがあると思う。自分を粗末に扱ったり、扱われたりしたと思う。まずはこれまでの人生のグラフを書くところから始めてみよう。

  • 3ヶ月にわたるトラウマ治療の記録。
    治療を重ねるごとにパートナーとの向き合い方が変わり、その心の動きが手に取るようにわかる、読みやすい本だった。
    突飛な言い回しや表現はなく、平易でシンプル。だからこそ、作者がまるで自分の身近な人かのような親近感もあった。

    トラウマ治療の手法や経過は興味深いものだった。光の点を目で追うことで脳を刺激することで、トラウマの原因になっている情景を思い出し、新たに捉え直すというもの。現在起こっていることに対する対症療法ではなく、過去に向き合い直す根本治療。そういう治療が世の中に存在すると知っておくことは、心のお守りになった。

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著者プロフィール

植本 一子(うえもと・いちこ):写真家。1984年、広島県生まれ。2003年、キヤノン写真新世紀で優秀賞。2013年から下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」をかまえる。主な著作に『愛は時間がかかる』『かなわない』『家族最後の日』『降伏の記録』『台風一過』『うれしい生活』『家族最初の日』などがある。

「2024年 『さびしさについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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