教育再生の迷走

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480863904

作品紹介・あらすじ

教員採用試験での汚職、教員免許更新制の導入、小学校から始まる英語教育、全国学力調査の意味…政治に翻弄される教育。この国の教育は、いったいどこへ向かうのか。

感想・レビュー・書評

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  • 安倍政権以降の教育再生論議に基づき、ウエブ上の教育時事評論+αをまとめたもの。教育委員会の非形骸化・活性化のため、教育委員や教育長を教師・校長のあがりポストにしないことは本書指摘のとおりだが、物的・人的には不十分。その意味で、個別学校の問題には関われないとすべきか。併せて、教育専門家として制度改変・維持、教育行政、教授法を提言するシンクタンク的な役割に徹するのはどうか。また、教員を総体的に減らす現状の方針を維持しつつ、カリキュラム増をこなせるか?多様な高校やカリキュラムの必要性(普通科偏重の弊害)は同感。
    ただ、本書自体が、何か革新的な提言があるわけではなく、本著者の他書のように鋭い現状分析があるとまでは言いにくい。一読の価値はあるが、購入する要があるかは??、といったところかもしれない。

  • 本書は、ちくまwebに著者が書いていた内容を書籍の形にまとめたものである。

    全体を通して思うことは、教育問題は時事の風に流されて、腰を据えた議論、もしくは自分の小さな教育経験から結論を出すことが多いように思える。教育問題にはもう少し考えて対応してほしいと思った。

    目次は下記の通り

    第1章 教育再生会議とはいったい何だったのか
    第2章 教育政策はどのように変わるのか
    第3章 教育問題の本質とは
    第4章 学力調査から見えてくるもの

    終章 迷走する教育改革

  • 著者苅谷剛彦氏は言わずと知れた超有名人なので紹介を省く。
    今更ながら、大学時代に彼の講義を履修しなかったことが悔やまれるが、まああのときは優先順位があったので。

    さて、本書はWebちくまの連載をベースにした
    ここ2年ほどの教育改革の事実を、その政治的背景とともに解説したものである。

    この数年、教育再生会議を中心とした教育改革は政治に翻弄され続けており、
    概観すると、国家による全体的な統制が進む一方で
    予算配分の削減が図られ、その結果として現場はより一層の疲弊が想像される、
    と著者は警鐘している。

    以下、備忘録として箇条書きにまとめるが

    ・新自由主義的な考え方に基づき、学校の成果を分析し、予算配分の効率化が進められている

    ・一方で、ポジティブリストの考え方に則り、現場の声を顧みずに「あれもこれも」追加しようとしている

    ・「教育改革」はキャッチーでわかりやすいため選挙の道具にされており、上記の「あれもこれも」が実際に意志決定されている

    ・その結果、授業時間増や英語授業導入など、教員負担は増えるものの、教師数の増加などは図られていない

    ・また、その基盤となる全国学力テスト自体も十分な議論の結果導入されたものとは言い切れない

    といったもの。

    友人の小学校教員から、その労働時間の長さは「公務員」のそれとは大きく異なるものであることを
    また、マスコミの扇動的な報道に対して懐疑的な私としては
    その背景の大まかな流れや論点が整理されていたため、面白かった。

    しかし、大きな流れとして整理されているわけではなく、
    この2年ほどの流れのウォッチだけなので、わからないことも多かった。

    また、意思決定過程の不合理さは描かれているものの
    逆に理想の姿は本書では全く描かれていないのが個人的には物足りなかった。

    加えて、全体的に同じ議論が繰り返されていることが多く
    このあたりはWeb連載をほぼそのまま掲載したことのデメリットが色濃く残っている。

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著者プロフィール

オックスフォード大学教授

「2023年 『新・教育の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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