超約 ヨーロッパの歴史

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487811991

作品紹介・あらすじ

大人の必修科目・ヨーロッパ史をこの一冊でマスター!

ギリシャ、ローマといった古代から中世、近代、そして現代まで、2000年以上におよぶ「ヨーロッパ」の歴史を大胆に要約、すなわち、「超約」して解説。
ヨーロッパの歴史・構造を「ギリシャ・ローマ文化」「キリスト教」「ゲルマン戦士」という3つの要素に還元し、現在につながる流れが本質的に理解できる。

世界的ベストセラー、“The Shortest History of Europe”の日本語版がついに刊行!

感想・レビュー・書評

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  • そろそろ西ヨーロッパをまとめた本を読もうかなと思い立って図書館で借りたのだが、他の市からの借受なので絶対に2週間で返さなくてはいけない。
    他の数冊と並行して読むには時間が足りなかった。
    「読み終わった」と記録してはいけないくらいに、ものすごいすっ飛ばし読み。
    かと言って、後で購入しても、私の場合、本書は間違いなく積読本と化すだろう。

    本書は、たぶんよくまとまっている良書だと思えるが、時間的にと私の「おつむ」的には難しかった。
    私には、やはり国ごとの歴史本を少しずつ読みためていくことの方が合っているように思う。

  • ヨーロッパの歴史を一冊にパッケージ化したもの。原題は”The Shortest History of Europe”、最も短いヨーロッパの歴史、である。このもっとも短いとした部分は本書の最初の二章「ヨーロッパの誕生――三つの要素」と「近代ヨーロッパ」について、である。この二章で要約をしてしまっているわけだが、その肝はこの独特なヨーロッパを形成したのが、三つの要素、「古代ギリシャ・ローマの文化」「キリスト教」「ゲルマン戦士の文化」の混合物だとまとめている点であることに異論はなかろう。その混合から近代ヨーロッパが生まれ、それが産み出した「文明」をそれ以外の世界に強要してきたのである。

    著者による要約ではこれら三要素の混合は、「世界はシンプルかつ論理的・数学的である」と考えるギリシア人と「世界の本質は悪であり、キリストのみが救うことができる」と考えるキリスト教徒と「戦闘は面白いものである」と考えるゲルマン人のありえない混合の結果とされる。歴史的には、ローマ帝国がキリスト教化され、教会がローマ・カトリック教会となり、さらに教会がギリシア・ローマの学問を保護したことで繋がり、最後にゲルマン戦士がキリスト教徒になったことでこの三要素がひとつの混合物となったという。この混合物は西ローマ帝国が終焉を迎えた476年から1400年代まで、いわゆる中世と呼ばれる時代にキリスト教会を中心にして強く結びついてきたのである。
    そして、これらの結びつきが壊れていった以降の時代を著者は「近代ヨーロッパ」とみなす。そこで何が起きたかというと、ルネサンスと宗教改革である。それらは科学革命と啓蒙主義を生み、科学と理性と進歩への信仰がヨーロッパを席巻することになるのである。そしてまた一方の極ではゲルマン戦士の方は脱宗教の後にナショナリズムに走ることになったのである。

    これが、”The Shortest History of Europe”のさらなる私的要約である。興味がある方はここまでであればそれほど長くはないので是非手に取ってほしい。「ヨーロッパ」の特殊性の上に現代世界は成立していることを否定することはできないのだから。ヨーロッパの特異性を形成した三要素は現代ではそれらの間の絆を失ってしまったが、三つの要素自体は現代ヨーロッパの中にも深く根を差しているのである。だからこそ、その系譜を知ることはこの世界を理解する上でも意義があることなのである。

    この超訳である二章の後、それぞれの時代の動きを補足するための八つの章が続く。
    「侵入と征服」... ゲルマン人そしてイスラム教徒によるローマ帝国侵入の歴史を追う
    「政治の第一形態――民主主義」... ギリシア時代を含めた民主主義の歴史
    「政治の第二形態――封建制」... ヨーロッパ独特の絶対王政と封建制の詳細
    「皇帝と教皇」... まさしくヨーロッパならではの独特な支配形態
    「言語」... ラテン語、ゲルマン語、ロマンス語、ケルト語、スラブ語といった言語がどのような経緯で定着していったのか。著者はかなり興が乗っている感じでおそらくこの辺りは好きな領域なのだろう。なので、面白い。
    「普通の人々」... 支配階級ではなく中世までにおいては大部分の人口を占めた農民や農地の扱いについての分析。
    「産業化と革命」... 英仏独露の諸革命(産業革命を含む)がどのようにして起こったのかを追いかける。このときすでにナショナリズムの根強い芽が生まれている。
    「二つの世界大戦」... ヒトラーがいかに権力を奪取し、世界大戦とホロコーストを引き起こしたのかにかなりの頁を割く。これはヨーロッパの傷であり、世界が立ち帰る必要がある史的事実なのであると。

    最後に著者は、なぜヨーロッパ文明がどこよりも早く最初に産業革命・科学革命に辿り着き、世界を席巻する結果となったことをたからかに問う。答えは、最初に辿り着いたのではなく、奇妙なその独特さからこそそこに辿り着いたと結論付ける。それはジャレッド・ダイアモンドが『銃・病原菌・鉄』で主張するロケーションや動植物相がよかったために早くそこに行きつけたという史観とは必ずしも排他的ではないが大元では対立する史観だ。著者が主張するこのヨーロッパ文明の独特さについてこの本を読んで納得することができただろうか。


    もちろん、この本よりも短くまとめた教科書はあるだろうが、その本質に必要かつ十分である分量で記述しようとしたものとしては、おそらくはとても優れたものだと言えるだろう。現代世界を覆うこととなったヨーロッパ文明の特徴とは何だったのかを、三つの要素という手札を使って鮮やかに歴史分析をしたものであるが、それをオーストラリアの学者が書き、日本含めてグローバルに読まれているのは、ひとつ何かしらの意味があるように思われるのである。

  • 流れが良く通史として概要を掴みやすい。

    1.ギリシア・ローマの学問
    2.ローマのキリスト教会
    3.ゲルマン人の挙動

    を軸に持っていれば、
    複雑に絡み合うヨーロッパ史の中でも迷子にならなくて済む。

  • 確かに分かりやすい、欧州に流れる根本は理解できるが、19〜20世紀のゴタゴタがもうちょい詳しいといいなぁ

  • 第二章までは、伝説的に分かりやすく面白い。

  • 面白い
    枠組みを捉えるだけで、今まで断片的に詰めてた知識が一気に繋がる

  • 最初の3ページほどでヨーロッパの成り立ちがほぼ理解できるすごい本。通常この手の本は、過去から始まって年代順に出来事や登場人物、その関連性などを解説するが、この本は切り口が宗教や民族になっていて、年代がジャンプしたり、話題が政治や芸術、陰謀など柔軟で、読んでいて全然飽きない。これ一冊でヨーロッパの仕組みや現在の成り立ちが本当によく理解できるので、感心ある人には絶対おすすめ。欧州の中でも西側には大きな国が多く(スペイン、フランス、ドイツ)、東側には小さな国が多い(チェコ、スロバキア、ハンガリー、スイス、ギリシャ)。これもこの本でスッキリ解説されている。眼からうろこ!

  • 2020/02/05 読み終わった。
    ルネサンス期までの内容が一番分かりやすく印象に残った。ルネサンス期までのヨーロッパは、ギリシャ・ローマ時代がベストだと思っていたそうだ。昔がベストだと思うなんて、今の感覚からは変な感じ。

  • 非常に興味深い視点で書かれており、ヨーロッパ史の一般的な通史を読み解くための参考書として大変良いと思う。
    最後の二章くらいの部分が、全体の中で少し異質な印象になっており分かりにくい。原文がそうなっているためなのか、訳が悪いのか定かでないが、文章も雑になっている印象で、数カ所誤植も有った。
    しかし前半の美点は高く評価すべきだと思う。ここ十数年ヨーロッパ文化の起源や基礎を解説した本を探して来たが、これまでの所、最も納得のいく解説を与えてくれる本と言えると思う。

  • 第一次世界大戦以前のヨーロッパの歴史をざっと掴みたかったので買った本。
    同じような目的であればこの本を買ってほしいと思う。高校の時世界史を勉強していてわかりにくかったところ(フランク王国とかイングランド史あたり)がストンと落ちてくる。
    教皇と皇帝の関係、宗教と科学の関係、政治形態の移り変わりについては本当にわかりやすい。頭にモヤがかかっていた部分が晴れていく気分だった。
    超訳、ということで各時代の歴史はそこまで掘り下げられていない。ローマ崩壊から産業革命までのヨーロッパ史についてもっと掘り下げた本を次は読みたくなった。

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