第三帝国の興亡〈1〉アドルフ・ヒトラーの台頭

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488003760

作品紹介・あらすじ

1933年1月30日アドルフ・ヒトラーは、ドイツ首相に就任した。この日をもってヴァイマル共和制は終焉を迎え、ナチス第三帝国が誕生したのだ。ヒトラーはただちにドイツのナチ化を開始。侵略と戦争への道を突き進んでいく。ウィーンで悲惨な青春時代を過ごし、第一次世界大戦では無名の伍長。ビヤホール・プッチの失敗により投獄された男は、いかにして権力を掌握し、総統としてドイツに君臨するに至ったのか。膨大な資料と豊富な取材経験を駆使してナチス第三帝国の全貌を描き上げる、第一級の歴史ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • ナチ党の誕生からアドルフ・ヒトラーの独裁国家誕生までが1巻に細かく記されています。

    ヒトラーがビヤホール・プッチ(ミュンヘン一揆)で投獄されている間に書かれた「我が闘争」や、部下ゲッペルスの日記や手紙などを元にしています。

    第一次世界大戦後、ヴェルサイユ条約により多額の賠償金を請求されていたドイツ(ヴァイマル共和国、プロイセン)
    1320億金マルク(当時で、約330億ドル)
    国家はお金を刷りまくり、スーパーインフレが起こり国はぐちゃぐちゃでした。

    ヒトラーはオーストリア人。
    父親は下級税関史で、そのいとこの子との間に産まれる。
    当時父親の姓はシックルグルーバーだが、認知されてからヒトラーと姓が変わり、子どもであるアドルフは、ヒトラーとなる。

    メモとして、
    第一帝国は、中世の神聖ローマ帝国
    第二帝国は、ビスマルク時代
    第三帝国は、ナチスドイツ

    議事堂炎上に関して

    ナチ党員は、共産主義革命だと言い、射殺
    ゲーリングが犯人?
    知的障害のあるオランダ人共産主義者を利用

    選挙では過半数を手にできなかった。ヒトラーの望んだ議会の同意により独裁制を樹立する3分の2の議席数には不足していた。

    「全権委任法」を議会に提出
    憲法では、3分の2の議員の承認が必要
    共産党議員の欠席
    若干の社会民主党員の入場を拒むことにより、解決
    →3分の2を押さえるために必要なだけの野党議員を逮捕する
    国家人民党党首のフーゲンブルグはヒトラーの手に全権を集める事に気が進まず、大統領ピンデンブルグの関与を求めようとする
    大統領府官房長官のマイスナーは、すでに自分の将来をナチ党に預けていたので、大統領の協力は不必要と判断

    全権委任法が可決され、第三帝国の誕生。
    ドイツ社会民主党の党首「われわれドイツ社会民主党はこの歴史的瞬間に、人道と正義の原則、自由と社会主義の原則を堅持することを厳粛に誓うものである。全権委任法といえども、永遠に不滅の理想を滅ぼす力を与えるものではない」
    この言葉に対し、激怒したヒトラー。
    「きみたちは遅れて来た。おめおめと、やってきた!(絶叫)きみたちは、もう必要ない。ドイツの星はいま昇ろうとしている。きみたちの星は沈むところだ。すでにきみたちのための弔鐘が鳴っている。きみたちの投票など必要ではない。ドイツは自由になるだろう。が、それはきみたちの手によってではない!」(万雷の拍手)
    独裁国家の始まり。

    ヒトラーはドイツをナチ体制にするため、プロイセンを除く全州の内閣を解散させる法律を公布し、再編成させる。共産党の議席の補充なし。
    首相の定める全般的政策。ナチ党員で固める。

    他党も次々と追い込まれ、ナチ党だけとなる。

    一つの法律が布告される。
    「国家社会主義ドイツ労働者党は、ドイツにおけるただひとつの政党である。
    その他の政党の組織機構を維持、あるいは新政党の結成を企てる者は、その行為が他の規則でより重い罪を科せられるのではないかぎり、三年以下の懲役、もしくは六ヶ月以上三年以下の拘禁に処される」

    ヒンデンブルク大統領の死後、大統領の称号は廃止された。
    アドルフ・ヒトラーが国家元首と軍最高司令官を併せ持つことになり、独裁制は完璧になった。

    ヒトラーの演説力は相当のもので、疲弊していた国民の胸にとても響いて支持を得た。
    その裏ではヒトラー周辺の取り巻きが金銭や暴力を駆使して第三帝国を築いた。
    彼の台頭は必然だった。
    世の中が独裁を求めるような不穏な時代にならない様にするにはどうしたら良いのか、人々が考えようとする意思を持つ事が大事なのだと思う。
    自分はともかく、子供たちの未来がかかっているとなると、皆他人事ではすまない。

    5巻までありますが、容量がすごいので続巻はのちにまわします。
    ナチスドイツに関しては大まかな流れは頭に入っていますが、真実を知ることが大事だと思っているので、いつかぜひ読みたいです。

  • ヒトラーのように歴史と人類学に無知な男には、ドイツ人を現代のアーリア人種に、支配者の人種に仕立て上げるのはなんでもないことだった。ヒトラーにとって、ドイツ人は「地上で最高の人種」であり、「犬や馬や猫を繁殖させるときのように、自分の純血を保つことに専心」すれば最高であり続けるはずであった 。ヒトラーの頭の中は戦争、征服、権威主義的国家の絶対権力の賛美、アーリア人種すなわちドイツ人が支配民族であるという盲信と、ユダヤ人、スラブ人への憎悪、民主主義とヒューマニズムに対する軽蔑でいっぱいだった。これらはヒトラーの独走ではないが、あとにして思えば適用の仕方は独創的だった 。

  • 1933年1月30日、ヒンデンブルク大統領により、ヒトラーはドイツ共和国首相に任命された。前年夏、国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)の得票率は37%。第一党とは言え、過半数には及ばず、抵抗する勢力もまだあった。しかし、その後またたく間にヒトラーは独裁権力を築き上げ、ドイツを根本的に変えてしまった。

    この巻は、ヒトラーの出自からその精神が育まれる過程、第一次世界大戦後のヴァイマール共和国の苦闘、ナチ運動が生まれ、いかにして勢力を伸ばしたか、首相就任後独裁権力を確立するまでの軌跡を追う。ナチ党全盛期にドイツに駐在した著者の体験と、第二次世界大戦直後に連合軍に押収された膨大な資料に基づく克明なドキュメンタリー。

    首相に就任したヒトラーが独裁権力を得るために取った強権的手法と、それに押し切られてしまう政治家と国民、団結を欠いた民主主義勢力や労働者、独自の勢力を保ちつつもヒトラーの進める再軍備を歓迎し、曖昧な立場のまま支配体制に組み込まれていった軍部。なぜヒトラーの台頭は止められなかったのか、という疑問は、何度でも問い直す価値がある。

  • ずっと読もうと思っていた本。大著だと聞いていたので覚悟はしていたが、思っていたよりも読みやすい。ヒトラーをはじめとする登場人物の内面に深入りせず、かといって無味乾燥な教科書にもならず、分析を交えながら人と出来事をバランスよく平易に書いていく。
    第一巻はヒトラーとナチスの権力掌握まで。選挙を通して合法的に、じわじわと力をつけていく過程が怖い。ヒトラーは攻めてきた宇宙人ではない。ナチスを呼び、育てたのは一般のドイツ人たちであり、その責は負わなければならない。
    読んでいてふと怖くなる。おれたちは大丈夫なんだろうか?

  • 「それより耐えがたいのは無名の人間のひとりに数えられて、生きるのを許されるのも偶然、親しい隣人が気づいてもくれないうちに存在を消される、そんな何百万人のひとりになることだ。」

    ヒトラーの幼少期からSAに対する血の粛正までが書かれている第一巻。ヒトラーが権力を奪取するまでに様々な困難がこれほどまでに存在していたとは知らなかった。よくあきらめなかったものだ。そして、ヒトラーが首相に就任する前に、ナチ党が国会で議席の過半数を獲得できなかったのも知らなかった。

    この本の著者がいかに当時のドイツ人を忌み嫌っているか分かる。批判に使われている言葉が過激だ。

    ゲーリングの政治手腕が優れていた。ゲーリング議長がパーペン首相の国会解散動議を無視して、首相の解任決議を行ったのは面白い。そして、その後にパーペンの国会解散動議は、すでに首相という地位を失った者による動議のため否決した。

    自分だけが権力を握るようこだわったヒトラーは、国会で過半数の議席獲得ができなかった。しかし、あくまで法律に則って権力を手にしたかったヒトラーは、全権委任法を提出した。暴力、テロ、恐怖、逮捕を通して、出席議員を減らし、3分の2の賛成を集め、法案は可決された。

    第一帝国は、神聖ローマ帝国。
    第二帝国は、ビスマルク率いるプロイセン。
    第三帝国は、ヒトラー率いるナチスドイツ。

    ミュンヘン一揆の頃からの仲間であったSAのレーム。レームを粛正した裏にあるエピソードについて、ヒムラーの暗躍は知っていた。しかし、陸軍、ヒンデンブルク大統領がSAによる混乱を早く治める要求していた点については知らなかっ。なんとかレームを失わないように行動したヒトラーであったが、粛正という結末になった。

    序盤は正直面白くなかった。しかし、人間は過去の積み重ねで思考が構築されていくのを考えると、歴史を追って第三帝国を見る必要があると感じた。

  • 1960年に出版された図書を新訳をもって2008年に再刊したもの。
    ナチスを実際に目の当たりにし、同時代を生きた著者が、戦後公にされた膨大な資料と自身の体験をもとにナチスドイツの歴史を紐解いていく大著。

    本書を読んで、まず改めて驚嘆するのはヒトラーの状況分析能力の高さと、演説能力です。彼はこの2つをもって、ドイツという国を掌握したのだということを強く感じました。ヒトラーがどんなことを為そうとしているのか、演説の端々や新聞への投稿論説、そして『わが闘争』の中に権力を握るずっと前から現れていたのにもかかわらず、そこへの不安を感じさせず、国民や政治家・軍人たちにそれぞれの希望を観させることに成功したのだと。
    ヒトラーの、権威をうまく利用する、偉人の言葉を引用する、その手法もすごいです。ナチスのやろうとしていることが、ドイツに以前から脈々と続いてきた思想であるという誤認(部分部分で真であることは確かだけれど)を与えることに成功しています。

    また本書を通じて、大不況といった危機のときに、正常な判断能力が大きく失われる、ということも改めてわかります。目先の心地よい訴えに乗りやすくなってしまうのだと。
    今思えば、ヒトラーの野望をつぶすチャンスを政治家や軍人、国民は逃していたことをとても口惜しく、苦々しく思わずはいられない第1巻でした。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    1933年1月30日アドルフ・ヒトラーは、ドイツ首相に就任した。この日をもってヴァイマル共和制は終焉を迎え、ナチス第三帝国が誕生したのだ。ヒトラーはただちにドイツのナチ化を開始。侵略と戦争への道を突き進んでいく。ウィーンで悲惨な青春時代を過ごし、第一次世界大戦では無名の伍長。ビヤホール・プッチの失敗により投獄された男は、いかにして権力を掌握し、総統としてドイツに君臨するに至ったのか。膨大な資料と豊富な取材経験を駆使してナチス第三帝国の全貌を描き上げる、第一級の歴史ノンフィクション。

    面白いとは聞いていたけれど、本当に面白い。
    分厚いし、考えながら読むので時間がかかって一気読みとは言えないけれど、かなりその感覚に近いもので読み切りました。
    『脳が殺す』の中にあったんだけれど、ナチス幹部やSSの中にはどれだけ人を殺す脳を持った人たちが採用されていたんだろうとこれを読むと尚更思う。
    結局は落ちこぼれの伍長でしかなかったヒトラーがのし上がっていく際に、ブレーンがブレーンとして機能してないし、ナチス政権になるまでもすでに無意味な粛清が始まっているから、恐怖政治が行われると分かっているのにヒトラーを潰す人間がいなかったという恐ろしさ。
    ユダヤ人だけでなく、自分の気に入らない人間、批判した人間をもう34年には粛清してたんだから恐ろしい。
    ドイツが連邦制でまとめられていたのがヒトラーの背中を押したのかと思うと残念でならない。
    読むのは大変だけれども面白いので次行きます!

    The Rise and Fall of the Third Reich by William L Shirer

  • ふむ

  • なんでまた、ヒトラーは首相になれたのか、結局のところよくわからない。最後、力技で首相になったのはあるが、とはいえ、比較第1党を創設できたわけで…

  • イギリスの行動の背景がわからない。

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