- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488003845
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ナチスドイツは1億の書物を焼いたが、連合軍は1億2千万の書物を戦争に持ち込んだけど
という題目から始まるノンフィクション作品。
舞台は1940年代のアメリカ軍。
題字の通り、ナチスドイツは軍事的侵攻のみならず文化を侵す思想戦も繰り広げられており、それによって生じたプロパガンダも一因となり、フランスも破れてしまった。
それに対抗するため、アメリカの図書館司書を始め、市井の人々、そして軍、国家が立ち上がったというホントのお話。
思想戦対策と言うこと以上に兵士からは貴重な癒しとして歓迎されていたようです。 -
第二次世界大戦。それは各国の武力同士の衝突であり、そしてもうひとつ。思想と政治、社会、経済、精神の戦いでもあった。
ナチスドイツは大戦終了までに焚書と発禁によってヨーロッパ中から一億冊以上もの書物を消し去り、憎悪と荒廃をもたらした。一方アメリカでは、国民から寄贈された書籍や、新たに発行したペーパーバックを世界中の戦地に送り続ける図書運動が展開された。
ヨーロッパ戦線、アフリカ戦線、太平洋戦線。戦いに次ぐ戦いの中で、米軍兵士たちは、読書に慰めを見出す。
戦友を失い、自身も負傷や病に倒れ、そうでないものは頭上で砲弾が飛び交うなか、塹壕で泥まみれとなる日々。故郷の記憶は遠く、家族の顔も思い出せずに、戦場で心を擦り切らせた若き兵士たちが書籍を開けば、そこに故郷を見出すことができた。
書籍は思想や知識の宝庫であり、それが兵士、弾丸、航空機から原子爆弾まで投入された大戦の、もうひとつの武器となった。戦い続ける兵士の心を支え、平和を願う心を育てた。かくも大規模に展開されながら、戦後には忘れられた “図書作戦”の全貌、本が持つ力に光を当てたノンフィクション。 -
第二次大戦中、米軍には兵隊文庫があったという。
ナチスの焚書と対局にあるような体制。現在のペーパーバックの普及にもなったという。
米国って、いろいろとすごいなあ。連合国の中でも特殊だったようです。
ともあれ、対日本軍の戦いは米国にとっても過酷だったようです。
いろいろと思いを馳せる本でした。 -
第2次大戦中にアメリカ本国から最前線で戦う兵士たちへ向けて送られた本について調べられた労作。
特に、「兵隊文庫」と言われる、兵士たちのためだけに編集された本は、アメリカの出版のあり方にも大きな影響を与えたといわれる。
「戦場のコックたち」(深緑野分)にも出てくる「兵隊文庫」。その「兵隊文庫」がどんな経緯でできたもので、どういうものだったかがわかった。 -
1933年ナチス・ドイツは最も大きな愚行を行った。焚書、ゲッペルスの指示で、非ドイツ的な思想で書かれた本を焼いたのだ。これは何度も行われ、町中や学校においても、多くの本が運ばれて来て炎の中に投じられた。ヒトラーが「我が闘争」という本を書いて、自らの思想を国民に訴え、国民を動かし、政治的に成功したにも関わらず、今度はその本を焼くことで、都合の悪い思想を抹殺できると考えたのだ。
これにアメリカが真っ先に対抗した。
アメリカ軍では戦地で戦う兵士たちが活字に飢え、本を読みたがっており、読書が戦地のひどい環境や、苦しい戦いのことを少しでも忘れさせてくれるため、士気の高揚に役立つことを知った。戦地において文字に親しむこと、それがナチス・ドイツに対抗する力になることがわかったのだ。
初めは戦地の兵士たちに送る書籍の寄付を集めることからはじまった。しかし、普通のハードカバーがかさばり、ただでさえ荷物の多い兵士には適さないものだとわかると、兵士の胸ポケットや、尻のポケットに収まる大きさのペーパーバックが開発された。それは「兵隊文庫」と呼ばれ、無料で兵士たちに配られることになった。
兵隊文庫はたちまち兵士たちの間で人気となり、兵士たちは塹壕の中で読み、負傷して横たわる野戦病院のベッドの上で読んだ・・・。
第二次大戦におけるアメリカという国の懐の深さ、徹底ぶりをまた知る。