ピラネージ

  • 東京創元社
3.70
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488011116

作品紹介・あらすじ

ピラネージは海に囲まれた神殿を思わせる、巨大な建造物の中で孤独に暮らしていた。他にこの世界にいるのは、たまに話をする学者だけ。だが、ある日見知らぬ老人に出会ったことから、彼は自分が何者で、なぜこの奇妙な世界にいるのかを疑問に思い、失われた記憶を探り始める。数々の賞を総なめにした『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』の著者が、異世界とは何か、人はなぜ異世界に惹かれるのかという根源的な謎に挑む傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 迷宮にもほどがある 今イギリスで売れている小説の異空間ぶりがすごい:朝日新聞GLOBE+(2021.11.7)
    https://globe.asahi.com/article/14475032

    Summary Bibliography: Susanna Clarke
    http://www.isfdb.org/cgi-bin/ea.cgi?13823

    ピラネージ - スザンナ・クラーク/原島文世 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488011116

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      Web東京創元社マガジン : 原島文世/スザンナ・クラーク『ピラネージ』訳者あとがき[全文]
      https://booklog.jp/edi...
      Web東京創元社マガジン : 原島文世/スザンナ・クラーク『ピラネージ』訳者あとがき[全文]
      https://booklog.jp/edit/1/448801111X
      2022/05/16
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      Web東京創元社マガジン : 『ピラネージ』『人魚の嘆き・魔術師[復刻版]』『美しき瞬間』…「装幀の森」第八回 柳川貴代-もじのしょうそく-...
      Web東京創元社マガジン : 『ピラネージ』『人魚の嘆き・魔術師[復刻版]』『美しき瞬間』…「装幀の森」第八回 柳川貴代-もじのしょうそく-【〈紙魚の手帖〉vol.13(2023年10月号)掲載】
      https://www.webmysteries.jp/archives/35083384.html
      2024/03/26
  • 彫像が立ち並ぶ広間がいくつも連なる館に、生きている人間は「僕」と「もうひとり」だけ。
    何の疑問もなく毎日を過ごしていたところ、ある老人との出会いから、その世界について、自分自身について探り始める。

    彼の行動範囲は館の中だけなので、日記の記述や「もうひとり」との会話で物語が進んでいく。
    最初は何のことだか分からないまま、手探りで読み進めていくのが面白い。物理的な動きは少ないけれど、不思議な空間や「僕」の思考に引き込まれた。

    たくさんの彫像や、そこを棲み処にしている鳥たち、広間を襲う潮。どれもが幻想的で、別世界が目の前に広がる。
    訳者あとがきにもあるように、子どもの頃ナルニア国ものがたりが好きだった私も例外ではなく、この別世界に惹かれた。
    大人になっても、違う世界への扉がどこかにあると思いたいのだ。ないと思ってはいるけれど。

  •  これはいったいどういう場所なのだろう。まず思ったのはそんな疑問だ。数字や方角を付けて呼ばれる広間や玄関。さまざまな像のある城のような迷宮のような不思議な建物。しかもここには潮が満ちてくるのだ。
     ここに住む〈僕〉こと〈ピラネージ〉とはいったい何者なのか。〈もうひとり〉とは、〈十六人目〉とは? 〈僕〉の日記という形で綴られる物語は進むにつれ、謎が謎を呼び、しだいにどこかミステリー小説のような様相を帯びてくる。
     フォントの使い分けられたページも凝っていて実によい。奇想にあふれた素晴らしい本。今年一番の収穫かもしれない。一読の価値あり。

  • 僕が住んでいるのは絶えず潮が注ぎ込む広大な館。無数の空間が連なって迷宮となっていて、僕は十三人の死者の骨と暮らしている。
    という、まさに幻想文学らしい世界観で楽しめた!少しずつ世界の謎が明らかになっていく過程が飽きさせない。今回はサクッと読んだけど内容は分かりやすかった。もちろん謎解きのような気になる記述もあったので、ゆっくり深堀りしたら更に面白そう。

    生きた人間の居ない幻想的な世界では美しさとやさしさを強く感じる一方で孤独に苛まれる。我々が住む現実世界は孤独ではないけど、数多くの他人との人間関係の煩わしさがある。
    現実世界に疲れやすい人も、心のなかに自分だけの静かで美しく優しい幻想世界を持つことで前向きに生きられるし、本当に信頼できる人間とその世界を共有することで幸福にもなれる。そんなメッセージを受け取った。
    訳者あとがきを読むと、著者自身が引きこもって自分の世界に浸るのが好きな一方で、重い鬱病も経験したそう。自分の幻想世界を作り上げるだけでなく、ごく僅かながら信頼できる人と共有することができれば幸福になれる、というのは筆者自身の経験なのか、そうありたかったという願いなのか。

  • あらすじが辻褄合わない、作者の容量オーバー、もろもろの事情でそんなつもりはなかったのに、SFやらファンタジーというジャンルにせざるを得ない物語がここ20年ばかり溢れかえっているが、この作品は久々に純粋のファンタジー作品と言えるのではないでしょうか。そういう意味では手に取れた喜びなどはあるのでしょうが、だから面白かったのかと言われますと、どうでしょう。自分の頭の容量が足りませんでした。

  • 特殊な設定のファンタジー。設定に馴染むと面白いと感じられる。状況が分かってから結末までが少々冗長に感じるが、主人公の暮らす美しい広大な館に惹きつけられ、子供の頃の世界の捉え方を思い出すようなノスタルジアに満ちた作品。学者の世界の光と闇を少々大袈裟に詩的に描いた作品でもある。

  • 面白かった!...のは間違いない。けれど、全体的に訳文が子供っぽいように感じた。
    物語は、マッドサイエンティストの気まぐれで、異世界の館に囚われてしまった、哀れなジャーナリストの話。すなわち、35歳のおっさんの独白なわけで、もうちょっと成熟した感じを出しても良かったのでは、と率直に思った。
    特に、後半に登場するラファエルは印象的で(彼女もけっこうなおばさん)、リアルの世界に疲れてしまって、むしろ自分から、人間のいない静謐な世界に迷い込みたいと願っている。こんな枯れた感情は、全体を貫く訳文の雰囲気からは唐突で、この場面だけちょっと浮いている気がした。
    日本のマーケットでは、一般向けのファンタジーじゃ売れないからって、YA向けに再設定されてしまったのだとしたら、とても哀しい。

  • 最後に現代世界に戻ってくるのが予想外だった。
    キッタリーは主人公に会う日以外は現実世界にいたからいつもパリッとしたスーツやら着ていたということか。

  • 波音が聞こえてくるような、
    不思議な本

  • 古代彫刻が雑然と並ぶ巨大な大広間が無数に連なり、上層は雲、下層は定期的に押し寄せる潮に浸された〈館〉を彷徨い歩く「僕」。唯一の話し相手は、週に2度会う初老の男「もうひとり」だけ。二人で〈館〉に隠された神秘的知性の研究を続けてきた「僕」と「もうひとり」だったが、第三の人物が現れたとき、〈館〉は少しずつその真実の姿を明らかにする。


    タイトルは『ピラネージ』、邦訳版カバーはモンス・デジデリオ(塚本邦雄の文庫版『紺青のわかれ』と一緒)だが、読んでいるあいだ私の頭に浮かんできたのはファブリツィオ・クレリチの「ローマの眠り」だった。
    第一章で語られる〈館〉の構造はバロックかつ豪奢で、垂直的なイメージは確かにデジデリオっぽい。その後、語り手は天体観察のために何時間もかけて移動するのだが、〈館〉内での冒険らしい冒険はこれっきりになってしまう。中盤以降の〈館〉は、大英博物館やルーヴルの彫刻エリアが波に洗われ、荒れ果てたイメージだ。それにぴったりなのはクレリチか、ユベール・ロベールだろう。
    オカルティストが唱えた異世界という真相は面白いが、正直、第一章で見た幾何学的想像力の世界をもう少し続けてほしかった。山尾悠子の「遠近法」のような、精緻な世界観を期待してしまった。
    結局マシューは教授に直接会いに行かないので、〈館〉という異世界の来歴などもよくわからない。作中資料を読む限りでは強い意思によって行ける世界とのことだけど、それがなぜ誰にとっても宮殿風の建物に古代彫刻が並ぶ場所として立ち現れてくるのか、なぜ「古代人は自由に行き来できた異世界」が近代風なのか、謎が尽きない。「もうひとり」が〈館〉から見える天体の動きが天動説と地動説どちらに従っているかを確かめようとしていたことからして、こちらの世界で否定されたり忘れ去られたものが行き着く場所なのだろうか。
    個人的には期待値の高い作品だっただけに、日記を読み返すだけですべてが明らかになってしまうのは物足りなく感じてしまった。〈館〉の異世界か、あるいはオカルティストの狂信か、どちらかを詳細に、魔術的に描写してほしかった。そこが薄いので、「人生には純粋な想像力の世界が必要だ」という後半のテーマも薄まっている気がする。

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