イヴの末裔たちの明日 松崎有理短編集 (創元日本SF叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018382

感想・レビュー・書評

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  • 2020.12.12市立図書館
    (長女はあっというまに読み終えた模様、とても気に入ったとのこと)
    「あがり」「5まで数える」と同様の短編詰め合わせ。「人間の極限」をえがくというテーマやテイストはちょうど今年ハマったテッド・チャンとちょっと似ているので、長女にはテッド・チャンも謹んでおすすめした。

    「未来への脱獄(The escape to the Future)」自称未来人で投獄された二人が獄中でタイムマシンをつくる話。ちょうど獄中シェイクスピア劇団を読み終えたばかりなのでさらに興味深く。ちょっと狐につままれたような結末。創元SF文庫『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』(2019)所収。

    「ひとを惹きつけてやまないもの(Men at the Extremes)」中編。19世紀のトレジャーハンターと21世紀の数学者の、謎の解明にとりつかれたそれぞれの生涯が並行して語られていく。ビール暗号とビール予想はともに現実にあるものらしいが、終盤は思い切りSF。のめりこむことで犠牲にされるもの、謎解きのたすけになるもの、周囲の目、それでも得られる歓び…数学者は業が深いというか因果な職業だなと改めて思う。2つの世界の対比だけでなく、それぞれの話の中でも「選ばなかった並行世界」がえがかれていて読み応えあり。東京創元社(webミステリーズ!)初出

    「イヴの末裔たちの明日(A Human Job in the AI era)」近未来、AIに仕事を奪われ失業した主人公の次なるお仕事は…? ちょっと皮肉が効いた結末に、まちがいなく人間じゃなきゃできない仕事ってほんとに少ないなぁと改めて思い知らされたような。東京創元社『Genesis 一万年の午後』(2018)所収。

    「まごうかたなき(The Hunting)」書き下ろし。時代劇風妖怪退治は宮部みゆき『荒神』のような世界。古風なオノマトペをたくさん使っているのが個人的ツボで、白と赤のコントラストが印象的。

    「方舟の座席(Women at the Extremes)」書き下ろし。「ひとを惹きつけてやまないもの」スピンオフでもあり、「イヴの末裔たちの明日」とも地続きの世界のようでもあり。老人(男)ばかりの宇宙ステーションになぜか乗せられていた文学少女の女子大生が泣き寝入りせずに行動派に変身し、仲間に助けられながら自分の目標に向かっていく姿が胸アツな展開。
    5篇それぞれに好みではあるけれど、一つと言われたらこの作品がいちばん好きかも。

    代書屋、架空論文界隈は学術業界にちょっとでも興味がないととっつきにくそうだけれど、この作品や「5まで数える」あたりは清水義範&ディストピア小説が好きな高1次女もけっこうハマるんじゃないだろうか。

  • ふたりは出会えたんだろうか…

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著者プロフィール

1972年茨城県生まれ。東北大学理学部卒。2010年に「あがり」で第1回創元SF短編賞を受賞。著作に同作を収録したSF連作集『あがり』のほか、『架空論文投稿計画』『5まで数える』『イヴの末裔たちの明日』などがある。

「2022年 『シュレーディンガーの少女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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