深夜の博覧会

著者 :
  • 東京創元社
3.30
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本棚登録 : 161
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027902

作品紹介・あらすじ

昭和12年(1937年)、銀座で似顔絵描きをしながら漫画家への夢へ邁進している那珂一兵のもとを、帝国新報(のちの夕刊サン)の女性記者が訪ねてくる。5月末まで開催中の名古屋汎太平洋平和博覧会の取材に同行して挿絵を描いて欲しいというのだ。華やかな博覧会の最中、一行が巻き込まれた殺人事件。名古屋にいたはずの女性の足が、遠く離れた銀座で発見された――! 名古屋、東京間に仕掛けられた一大トリックに、那珂少年はどんな推理を巡らせるのか? 空襲で失われてしまった戦前の名古屋の町並みを、総天然色風味で描く著者最新長編。

感想・レビュー・書評

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  • 銀座で似顔絵描きをしている漫画家志望の那珂一平はある日新聞記者の降旗瑠璃子経由で挿絵を依頼され、名古屋汎太平洋平和博覧会の取材に同行して名古屋へやって来た。新聞社社長にそもそも声をかけてきた取材の元凶宗像伯爵の案内で博覧会を堪能している間に知り合いの少女の目の前に名古屋にいるはずの彼女の姉の足だけが降ってくるという猟奇事件が銀座で起きる。姉の生死は?真相は?都市を股にかけたトリックを楽しむというよりは乱歩のパノラマ島を彷彿とさせるエログロ要素漂う探偵小説感と戦争に向かっていくきな臭さが不穏な都市の描写、時代に絡まるホワイダニットの方に天秤が傾いている印象。伏線回収も丁寧で読み応えあるけど人を選びそうな雰囲気。そしてやはり「たかが殺人じゃないか」の先に読むんだった…。

  • ミステリ界のレジェンド辻真先先生。ミステリは言うに及ばず、SF、漫画原作、サザエさんや名探偵コナンなどのアニメ脚本と、御歳88歳の超大家の作品を全て追うのは、もはや不可能に近い。その辻先生が86歳で物した新シリーズが本書。

    時は昭和12年。日本では前年に2.26事件が起き、世界を見ればヒトラーが力をつけ始め、にわかに、きな臭くなってきた頃。舞台は銀座、そして名古屋汎太平洋平和博覧会。2つの地点を結びつけるバラバラ殺人事件が発生する。

    名古屋汎太平洋平和博覧会なるものは初めて知った。実際に開催された国際博覧会で、ネットを検索すると、いくつのかのサイトで当時の写真を見ることができる。本書を読みつつ、そうした写真をパラパラ見ていくのはお勧めである。

    トリックはかなり大掛かりなものが用いられ、至るところの小さな伏線がすべて回収される。さすがである。

    ちなみに辻先生は今年、本書の続編を発表。さらに別シリーズの新刊も控えている。88歳というご高齢に注目されがちだが、量産が難しいとされるミステリにあって、いずれの作品も並の作家をはるかに凌ぐクオリティを維持している。正にレジェンド!

  • 昭和12年の探偵小説。

    活気ある昭和初期の銀座・名古屋の街並み、華やかな名古屋汎太平洋平和博覧会、お化け屋敷のような慈王羅馬館、哀しい美人姉妹、昭和の香りプンプンのこの雰囲気好き。

    名古屋、東京間に仕掛けられた一大トリック!銀座で働く妹は誘拐され、名古屋にいるはずの姉の足だけが何故か銀座で発見される。姉の体は?姉は生きているのか?那珂少年の推理は…。

    何気ない文章が後にいきてきて、そうだったのかと何度も唸った。面白いのだけど、とにかく色んな事が詰め込まれていて、なかなか読み進める事ができなかった。参考資料の量凄かった(^_^;)

    慈王羅馬館のところや、満州の歴史のあたりも苦手で…
    慈王羅馬館は凄く凝っていて好きな人は本当に好きだと思う。

  • 一応ミステリーカテゴリーにしてみたが、むしろエンタメ要素の方が強いような。
    昭和12年を舞台にした、個人的には好きなレトロ感ある設定。
    少年探偵・那珂一兵が知り合いの記者と共に名古屋の博覧会を取材中、東京では思わぬ事件が起きる。
    事件そのものは凄惨なのだが、一兵少年がその場に居合わせていないだけに謎解きもどこか冷静。その方が返って良かったけれど。
    乱歩先生の少年探偵団シリーズのようなテンポの良い語り口、でも中身は大人向け乱歩作品のようなエログロさがあったり、その後の歴史を暗示する陰鬱さも垣間見えたり。
    事件の一番の謎は、名古屋にいた筈の人間がどうやって東京で殺されたのか、そしてなぜそこまで大掛かりな事件を起こさねばならなかったかという、HOWとWHY。
    HOWに関してはそれほどは驚かなかったが、WHY部分とその結末には苦しくなったり辛くなったり。
    そして一兵少年の片思いの行方に関わる、ある事件に関しても、その後の歴史を知る読者側としてはWHYは分かるのだが、一兵少年には理解出来ないというところが、なんとも苦いような。
    謎解きというよりは、一つの歴史の裏側を垣間見ているような、大きな歴史のうねりの中で、こういう前振りが色んなところで起きていたのかなというちょっとしたドラマを見せてもらったような、そんな作品だった。
    調べてみると一兵探偵の作品は他にもあるようだ。
    機会があればまた読んでみたい。

  • 昭和12年の名古屋博覧会を舞台にした本格ミステリ。「たかが殺人じゃないか」を先に読んでしまっていた。本作は太平洋戦争の直前、満州との関わり方や、不穏な空気感を描きながら、割と突拍子もない大トリックを仕掛けたミステリとなっている。途中のプロットがどうしても散漫なのだが、なんだか心に残って後引くシリーズなんだよなぁ。

  • ちょっと難しいのか、想像しにくくて、
    頭に入ってこなかった・・・
    でも、ちゃんと理解できれば凄く面白い小説のように思えます。

  • 前後しましたが、「昭和シリーズ」の1作目を読んでみました
    時代は遡って戦前、曰くエログロの時代です
    知らない用語が結構出てきます
    こんな時代に「名古屋汎太平洋平和博覧会」があったことは知りませんでした

    余談なのか、伏線なのか、よくわからないまま話が進み、凶悪な事件が発生します
    犯人は容易に推測できますが、動機の方が複雑でした

    先に読んでおけば、次作「たかが殺人じゃないか」のやや唐突な探偵登場に納得できますね
    3作目が予定されているそうです

  • 東京音頭が響き、和装とモガが行きかう。
    夜店が連なる銀座の片隅で似顔絵を商売にする少年、那珂一兵。
    帝国新報の依頼で名古屋平和博覧会の取材に駆り出された一兵は、記者の瑠璃子と一緒に超特急燕号で名古屋へ。
    銀座の怪しげな料亭で密会する、軍人の甘粕と寺中。
    世界をまたにかける富豪の宗像伯爵、その侍従の操。
    満州の要人、崔氏、崔氏夫人、崔氏の愛人。
    第2次大戦が迫る日本で、さまざまな思惑が絡む中、事件が起こる。

    雑踏の銀座、博覧会の透明人間に魚雷実演、変装上手な宗像伯爵、紅顔の美少年、操。あちこちに散りばめられた江戸川乱歩の世界。
    パノラマ島のような慈王羅馬館。気球から滴る血。纏足の婦人。支那服の美女。
    そして、ラストに打ち上がる花火と犯人と。
    トリックはともかく、犯人や思惑は早々にわかってしまうんだけど、乱歩の世界観でありながら、忘れてはいけない戦争の悲惨さがくっきり描かれる。
    印象深い物語。
    黄金仮面じゃないけど、犯人が実は…って言うのがあって欲しい気も。

  • 昭和12年。似顔絵描きの少年、一兵が名古屋汎太平洋平和博覧会の挿絵を描くために取材に同行し、名古屋と東京にまたがる不可解な事件に遭遇する…
    戦前の時代背景や博覧会の様子が生き生きと描かれており、事件が起きるまでが長かったが面白かった。
    事件の首謀者の心情が壮絶すぎる。

  • 面白くない 全く入れなかった

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著者プロフィール

1932年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒業後、NHKに入社。テレビ初期のディレクター、プロデューサーをつとめたのち、脚本家に転身。『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆した。また、推理小説作家としても活躍しており、『仮題・中学殺人事件』、『迷犬ルパンの名推理』、『あじあ号、吼えろ!』、『完全恋愛』(牧薩次名義)など多数の著作がある。現在、デジタルハリウッド大学教授。国際アニメ研究所所長。本格ミステリ作家クラブ会長。

「2009年 『『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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