- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488104177
感想・レビュー・書評
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ニューヨークとフィラデルフィアの中間に位置する街、トレントンで起きた殺人事件。あばら家で刺殺体となって発見された男の素性は? そして犯人は?
国名シリーズしか読んでないのでぼちぼちライツヴィルへ挑戦しようかと、まずはこの過渡期にあたる作品から読み始めました。
いやはや。トリック一辺倒ではなく、各自の人間心理の機微に触れつつドラマチック、そして読者への挑戦状をたたきつけてくる。やっぱりクイーンカッコイイ。
他のヒストリカルロマン系な作家ならば、あの金持ちの令嬢の秘密を明かさない態度のままずるずる作品の半分以上引きずって読者をイライラさせると思いますが、クイーンはそこらへん意外と早いうちから明かしちゃったり。途中に裁判のシーンが入ったりと、次々にテンポ良く進むので、苦痛なく読ませますね。
良い意味で各登場人物達が、ただの記号ではなく『人間』として動いてるところが良かった。
ラストの論理的な絞り込みによる犯人の提示は予想通りではありましたが、物語としての膨らみがあって楽しめました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最後の最後まで犯人に騙された。
裁判の件を読んでると、結構大事なコトが証拠として上がらなかったりして。この国の裁判がこんなんなのか、時代なのか。そこが引っ掛かる。 -
二重生活を送っていた男がニューヨークとフィラデルフィアの中間にあるあばら家で殺されます。
エラリーは友人に頼まれ事件に関わっていきます。
本書はその友人のビルの恋愛要素も入っていまして、そちらの方も結構楽しめます。
読んでいてニヤニヤしちゃいました。
ミステリの方はいつもの読者への挑戦状も入っていて、今回もエラリーの論理は素晴らしいです。
この解決への過程の論理、ロジックは胸が躍ります。 -
作者エラリー・クイーンが自らお気に入りのひとつに挙げている作品だが、読んでみるとなるほどと思う。とてもクイーンらしい傑作である。
クイーンの特色というのは、トリックよりも犯人を見つけ出す過程のパズル性にある。犯人が使った想像を絶するような(あるいは盲点を突いた)殺人方法を見抜く、というのだけがミステリではない。誰が犯人かを数学のようなすっきりした形で割り出していくダイナミックさがクイーンの真骨頂だと思う。ものすごくおおざっぱに言えば、「犯人は血液型がA型である」「犯人は誕生日が7月である」ってことが犯罪を分析しているうちに見えてきて、容疑者を分析しているうちに「7月生まれのA型はKAZUのみである」ってことがわかってきて、「だから犯人はKAZUである」となってエンドマーク。そういうと無味乾燥なようだが、うまく決まるとものすごい爽快感がある。ごちゃごちゃだった部屋がすっと片付いていくような。
その爽快感で言えば、今までクイーンのベストは「オランダ靴の秘密」だと思うのだが(あくまで「爽快感だけ」を言えばね)、この「中途の家」もそれに勝るとも劣らない気持ちよさがある。ミステリとしてちょっと残念なのは、ひとつの大きな手がかりが最後のほうまで出てこないこと。しかし、序盤に示される設定のおもしろさ、中盤で展開される裁判シーンのサスペンス、終盤の逆トリックなど、読みどころが多くて、小説としておもしろい。更に、この時期はそろそろクイーンが風俗小説的な雰囲気をかもし始めた頃で、その味わいもなかなかおもしろく、楽しく読むことができた。
それにしても、探偵エラリー・クイーンというのは、実はかなりイヤな奴なんじゃないかな。
2009/10/5 -
消去法で推理した結果ほぼ完璧に当たった。感動。