- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488110185
作品紹介・あらすじ
温厚で小柄な紳士ポンド氏には、穏当な筋のとおった談話の最中に奇妙な発言をまじえる癖があった。二人の意見が完全に一致したために片方がもう一人を殺した。背が高すぎるが故に目立たない……など、辻褄の合わないポンド氏の発言が明らかにする不可思議な事件の真相。巨匠自らが逆説集と銘打った、珠玉の短編集。「黙示録の三人の騎者」「博士の意見が一致する時」など全八編を収録。
感想・レビュー・書評
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素直な筋の小説がかなり少なくて、脇道にそれたりどうでもいい表現のところでページを費やしていたりする。執筆された時期が1936年なのもあって共産主義・社会主義やら戦争の話やダーヴィンのことも出てきて時代を感じる。さらにイギリスの劇のパントマイムが題材になっている話があって、イギリスの風俗に詳しくないとよくわからない感がますます高まってしまう。
「黙示録の三人の騎者」の完成度が非常に高い。この話一本で本書の価値の5割はある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
唐突に矛盾するようなことを述べ周囲を戸惑わせるポンド氏が逆説に満ちた物語を語る連作ミステリ。よく噛み締めれば理解できるのに気を抜いた途端、何を読んでいるのか迷ってしまう文章はさながら森のよう。囚人を放免する令状を運ぶ男が死んだので釈放された、いつでも追放できるのにそうしない、背が高すぎて見えなかったetc……珍妙な逆説の数々から三者三様食い違う証言、環視された荷物を奪う方法、某古典ミステリのパロディまで内容に富んで遊び心にも溢れています。粋な逆説で結ぶ「恐ろしき色男」のオチが素敵です。