一角獣の殺人 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M カ 1-34)

  • 東京創元社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488118297

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物の立ち位置と視点が生み出した不可能殺人、という魅力的な謎がテーマではありますが、今作で最も読者の胸をときめかせるのは、【誰が怪盗で、誰が警部なのか?】という謎に尽きるでしょう。

    …だって、殺人トリックの方は、場当たり的というか運命の女神に色々委ねすぎというか…HMが真相解明してる時も、「嘘だ!嘘だと言ってくれ!ドンデン返しがあるんだろ?!」ってなって、左手親指の押さえるページの少なさに絶望したもん…(悲

    ともあれ本編感想いきまっす( ^ω^ )←

    H・M卿含む登場人物全員が、自身の身元証明ができず、誰もが怪盗あるいはそれを追う警部でありうる、という混沌とした舞台設定の中で起こる、不可解な殺人!

    重要な要素が省略された見取り図!(何故に…

    変な行動取りすぎて、案の定、窮地に追い込まれるワトソン役・ケン・ブレイク!(自業自得…

    そして今作のハイライトの一つ、謎解き開始間際まで、まあ冴えなさ過ぎて逆に怪しいH・M卿!!!(爆笑

    既読のカー作品と比較すると、彼の持ち味であるホラー色が格段に物足りない印象ですが、目まぐるしく変化する状況判断に眩暈される感じが、すごく好きでした。
    犯人指摘についてはアウトじゃないかい、とも思ったのですが(だってあの最後の登場の仕方は…)、ノックス御大の十戒に照らし合わせると、厳密にはセーフなんですよねえ。ニクいわあ←


    ひょんなことから、国家の極秘任務に関わることになったケン・ブレイク。追っ手の追走を辛くも逃れて辿り着いた「島の城」で発生した殺人事件で、彼は最重要容疑者となってしまう。果たして、城の人間の中に紛れ込んでいる探偵と怪盗は誰なのか? 沈黙を守り続けたHM卿の真意とは?

  • 初めましての作家さん。
    密室の話かと思ったら、ヘンリー・メリヴェール卿ものの
    長編4作目で、密室は出てきません。

    本作の語り手であるケンと英国情報部員イヴリンが
    島の城へ行くことになるのだが、偶然?集まった客の中に、
    怪盗フラマンドと主任警部ガスケが紛れ込んでいるらしい。
    しかし、ガスケと思われる男性が階段から転落死。
    ある意味、衆人環視の下での殺人なのに被害者に近づいた者も
    凶器さえも見つからない、正に不可能犯罪。

    現場の再現から何度も何度も同じ場面の話。
    そこから矛盾点を探そうとしてるはずなのに
    話が進めば進むほどわけわからん。
    種明かしされても、o(゚◇゚o)ホエ?って感じでした。
    苦手なタイプの話で辛かったぁ

  • ブログから感想を引用。

    やっと読了した「一角獣の殺人」。読了までかなりかかってしまった。

    本作は、ジョン・ディクスン・カーがカーター・ディクスン名義で出した作品。

    カーというと、密室ものやオカルトものが多いイメージだが、本作はマザーグース・ミステリである。マザーグース・ミステリというと見立て殺人を連想するかも知れないが、例えばヴァン・ダインの『僧正殺人事件』ほど殺人方法に童謡を関連付けようとはしていないと感じた。

    それと舞台が素晴らしい。嵐の中の島の古城という誰も逃げられない状況、つまりクローズド・サークル。更に古城の中には変装した怪盗まで潜り込んでいる。なかなか怪盗が出てくる作品は読んだことが無かったので新鮮だった。

    殺人は目撃者のいる前で起きる訳だが、真相はなかなか予想外。犯行時刻が夜中という設定だが、昼間ならこの殺人は不可能だった。これ以上はネタバレになってこれくらいで。

  • 久々にカーター・ディクスン(ディクスン・カー)を読んだ。カーはお気に入りの作家の一人で、怪奇趣味、密室殺人、探偵役のフェル博士とH・メリヴェル卿、と魅力たっぷり。文庫化されているものはほとんど読んでいる。そんななかで、これは名前はつとに知られていながら昨年末に初めて文庫化された幻の作品。
    定期便の飛行機が不時着したり、嵐の中で川中の孤島の古城が孤立したりとか、まあシチュエーションは時代を考慮しても荒唐無稽だけれど、カーらしさは十分堪能できる。「島の城」に閉じ込められたいずれもいわくありげな面々。その中に変装して紛れ込んでいる怪盗フラマンドとガスケ警部。いったい誰が本物の怪盗と警部なのか、それがわからない状況で起こる不可解殺人。そして一角獣とは何か、そんなものが本当にいるのか。いやあ、道具立てがそろい過ぎてわくわくしてしまう。
    犯人とメイントリックはここで書くわけにはいかないけれど、意外性も十分。カーファンならずとも時代がかった設定が苦にならない古き良き時代のミステリファンなら楽しめると思う。
    考えてみると「皇帝のかぎ煙草入れ」とか「帽子収集狂事件」とか、代表作読んだのって中学時代。クイーンの悲劇シリーズとかヴァン・ダインのグリーン家とかも然り。いま読み直したら感じ方もずいぶん違うんだろうな。そう考えると早く読んで得したのか損したのか...。

  • H・M卿シリーズです。
    本書では正体不明の怪盗フラマンドとパリ警視庁のガスケとご存じH・M卿が三つ巴の知恵比べを繰り広げます。
    語り手であるケンは美女イヴリンと共に一角獣を巡る極秘任務に巻き込まれます。
    嵐の中、辿り着いた島の城では怪死事件が発生します。
    ガスケだと名乗る人物が額に鋭い角のようなもので突かれた痕を残して殺されます。
    マザーグースの獅子と一角獣の童謡を巧みに物語に取り入れていて、カーのストーリーテラーぶりに感心させられます。
    さらに希代の怪盗と覆面探偵の正体が分からないだけでなく、登場人物全員が自己証明不可能といった混沌した状況は物語を大変に面白くさせています。
    カーは混沌の極みといった状況を書くのが上手いですね。

  • H・M卿もの。成り行きで情報部員として偽ることになったケンと本物の情報部員イヴリンはとある飛行機の不時着現場に遭遇する。周囲の天候が悪く近くにあった城に退避した飛行機の乗客とケンらだったが、彼らの前に不可解な殺害現場と額に穴があいた死体に出くわしてしまった――。なかなか内容にのめり込むことができて面白かったです。ある種なクローズドな環境だったし、その殺害方法がやはり不可能に近いものだったから印象は強いですね。ただ、その解答がいまいち釈然としないきがしてなりません。偶然に頼りすぎなんじゃないかという感じがして、ちょっとその点はうーんだったかな。話としては面白いんだけれどね。ちなみに、解説にマザーグース系の推理小説と書いてあったけど、それほどマザーグースになぞらえた事件ではなかったなあ。

  • 本作品には多くの謎が混在する。犯人、殺害方法、凶器、そして「探偵」と「怪盗」は誰かという謎。いつもの怪奇趣味は鳴りを潜め、偽者探しに徹している印象が強い。
    ひとつの人物入れ替わりに端を発し、挙句には登場人物全員が自己証明不可能というドタバタ喜劇っぽさは面白い。でも、謎がひとつ解けたら余計にこんがらがってしまう様な展開なので、その乱雑さに疲れてしまった。
    この変り種のテーマで勝負してくるあたりはさすがだと思うが、ネタ全体が小粒すぎる。途中から推理合戦のようになる流れも、整理力に欠けるのでごちゃごちゃ感が目立つ。展開も構成も悪くはないのだが、なんだろう、キレがいまいちだったかな。

  • 2010/01/06読了

  • フランス旅行中のケン・ブレイクが出会ったイヴリン。情報部の仕事としてイヴリンに同行するブレイク。飛行機事故に巻き込まれ警察に追われH・Mに出会う。「島の城」での事件。怪盗フラマンドとフランス警察ガスケとの対決。「ガスケ」と名乗る男の死。死体の眼と眼の間の角で突かれたような跡の謎。

     2009年12月19日購入

     2010年2月18日読了

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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