- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488138097
作品紹介・あらすじ
英国が誇る秘密情報部で、ある常識外れの計画が持ち上がった。ソ連の重要なスパイで、フランス共産党系労組の大物であるル・シッフルを打倒せよ。彼は党の資金を使い込み、ギャンブルで会計の穴を埋めようとしていた。それを阻止し破滅させるために送り込まれたのは、冷酷な殺人をも厭わない007のコードを持つ男――ジェームズ・ボンド。巨額の賭け金が動く緊迫の勝負の裏でめぐらされる陰謀。007初登場作を新訳でリニューアル!
感想・レビュー・書評
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タイトルを見ただけで、クリス・コーネル"You Know My Name"(映画『007カジノロワイヤル』の主題歌)が頭の中で再生される。筋立て自体は、原作の方が圧倒的にシンプルだけどね。
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映画シリーズの原作だが、映画のような、ド派手さは、ないかな。
国の金で、最高レートのギャンブル、男には耐えられない拷問。お前にはスパイは無理だと言うことを教えてくれる小説。 -
第82回アワヒニビブリオバトル「【復路】お正月だよ!ビブリオバトル2022」第21ゲームで紹介された本です。オンライン開催。
2022.01.03 -
有名な007シリーズ原作
この作品でかの有名なジェームズ・ボンドが世に出たのである。
映画や音楽は見聞きしたことがあっても、原作を読んだことは無い人は多いのではないだろうか。
読みやすく、映画とはまた違った味わいがある。
是非読んでほしい -
3.4
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007って原作小説があったのだね。
そして、ダニエル版本作での「あの」拷問シーンは、原作どおりであったのでした。
訳は新しいけれど、さすがに古い時代の小説ということもあり、ヴェスパーさんがあまりにも古典的な「女」であり過ぎました。
全体としては、ダニエル版映画作品のほうがヴェスパーさんも魅力的で面白かったです。
でも、中編小説としては十分楽しめる内容でした。 -
サクッと解決するかとおもいきやのこの展開。びっくりはしたけど、これはこれで、心地がよい。フレミングに触れたことがこれまでなかった友人に紹介しようかな。
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拷問者がマッツ・ミケルセン様→拷問されかけくらいまでならあり? ル・シッフルの小者感が何故か却ってお素敵(だからそれは、絵がマッツ・ミケルセンだからだろ)。
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ダニエル・クレイグの007を、つい、立て続けに見てしまった。
以前、別の007を見た時――誰が主演だったかは忘れた――は、なんじゃこりゃだったのだが・・・・・・
面白かった!
車も、戦闘機も、ヘリコプターも、007はなんでも操縦できる。
敵に襲われようとも、戦おうとも、敵は落ちても自分は落ちない。
スーツを汚しもせず、ぴしりと着こなして生還する。
敵陣は、うまい具合に着火して、きれいに全部爆発炎上し、そこに向かうのに使った車も燃えてしまって、さあ、どう帰る?! 悩む間もなく、なぜか無事に動くヘリコプターがそこにある。
そんな馬鹿な?!
いや、それでいいのだ!
007を見て面白く感じるのは、大人になってからかもしれない。
では、大人の嗜みとして、原作を読んでみようか、
ということで手にとってみた。
第1作となる、
『カジノ・ロワイヤル』
これまた、面白かった。
とはいえ、英国での発表は1953年。
世界情勢がまったく異なるので、描き様も異なってくる。
悪役のル・シッフルは、映画では、テロリスト相手の資金運用屋だが、原作ではソビエトのスパイで会計係だ。
ただ、どちらも"やらかして"すってしまったので、大金を必要としている。
得意のギャンブルで、その穴埋めをしようとしているのは同じだ。
その妨害をするべく、カジノにやってきたのが、007である。
ル・シッフルと勝負をして、彼をすってんてんにせよというのが、英国情報部MI6からの指令だ。
007という男の人物像が、映画のイメージとはちょっと違う。
お酒ばかり飲んでいるイメージだったが、実は食べることも好きだ。
しかもいちいち一家言ある。
『トーストをたっぷりもってきてくれ。いつだって面倒なのは・・・・・・充分な量のキャビアをもってこさせることじゃなく、充分なトーストを店に用意させることなんだよ。』(87頁)
女性に対しては、紳士的な態度ではあるが、あくまでも欲望の対象だ。
『自分なら男の仕事もできると思いこんでいる愚かな女どものやることといったら。女たちは家庭におさまって鍋やフライパンでの料理に専念し、着る服の心配と噂話だけをして、男の仕事は男にまかせておけばいいのに、なぜそうできないのか?』(155頁)
かっかきている時の独白なので、あまりな言いようだが、それにしても、彼の本音ではある。
女性を、大事にしていると言えない。
007の女性といえば、毎回話題になるボンド・ガールだが、この『カジノ・ロワイヤル』のボンド・ガールといえば、ヴェスパー・リンドだろう。
映画では、007の愛した女性だと、何度もくりかえされていたが、だが、私はこのヴェスパー・リンドがどうも好きになれない。
映画でも原作でも、結末を知っても知らなくても、なんだか好きになれない。
嫌いかと問われると、さほどでもない・・・・・・いや、どうだろう。
ジェームス・ボンドは、彼女のミステリアスな部分に惹かれたようだ。
『ヴェスパーには説明できない謎めいたところがあり、それが常に刺戟になった。・・・・・・』(245頁)、
以下、長々と説いてくれるのだが、私にはピンと来ない。
つまりは、作者イアン・フレミングが、ミステリアスな女性が好みだったらしい。
いや、女性のタイプだけではない。
作者のスタイルや好みは、作中に色濃く反映されている。
煙草が好きで、日に50本やら70本やら吸っていたというが、ジェームス・ボンドも日に70本吸うらしい。
さらには美食家で、酒が好き。
ボンド流のドライ・マティーニ、のちに"ヴェスパー"と名付けられるそれはさっそく73ページに出てくる。
『ゴードンのジンを三オンス、ウォッカを一オンス、キナリレを半オンス。凍りそうなほど冷たくなるまでシェイクし、大きめの薄いレモンピールは香りづけのあとでそのままグラスに入れてくれ。わかったか?』
イアン・フレミング自身、スパイ活動に従事していた。
007のように現場ではなく、デスクワークだったが。
「これまでのスパイ小説の息の根を止めてやる」と決意して書いたこのスパイ小説は、イアン・フレミング自身の理想中の理想を形にしたものだ。
だから面白い、今でも数多の人々を――特に男性を、夢中にさせることができるのだろう。