四人の女【新版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
3.74
  • (6)
  • (17)
  • (14)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 155
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488164065

作品紹介・あらすじ

前妻、現夫人、愛人、そしてフィアンセ――人気絶頂のコラムニスト、ラリーを取り巻く四人の女性。彼はひそかに自宅バルコニーの手摺(てすり)に細工をし、四人をディナー・パーティに招いた。ラリーには、そのなかの一人を殺さねばならない切実な理由があったのだ……。一作ごとに趣向を凝らす才人マガーが、犯人ならぬ「被害者捜し」の新手に挑んだ、いつまでも色あせない傑作ミステリ。訳者あとがき=吉野美恵子/解説=深緑野分

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 冒頭、「まずはご挨拶から」さながらの自然さで一人の人間がフェンスから落下しお亡くなりになります。事故じゃないよ、これは明確な殺人事件なのです。うふふ、名推理です。
    ....という訳ではなく、「これは我が計画した殺人なのだ。」と意気揚々に本人が語ってくれました。
    その語り手の名は、野心家ラリー・ロック。
    彼の順風満帆な生活にとって「ある女」は破壊に値する存在だった模様。さて、この鬼畜な男ラリー・ロックの残忍な殺人計画のターゲットとなった悲劇のレディは一体誰なのでしょう。
    ーーー被害者候補4名。
    【現妻 元妻 不倫相手 未来の妻(フィアンセ)】
    あらまぁ、なんと悲劇の匂いがプンプンとすることでしょう。さぁ、被害者探しの幕開けですーー。

    ラリーに対する不愉快さを表すのにココを使おうとしたら、文字数爆発の未来予知が発動したので割愛。ここで各キャラクター達の特性と、ラリーとの関係性を語ると感の良い方は存分にこの作品を楽しめなくなってしまいそうなのでこちらも割愛。
    ....んむ、何も語れないではないか。

    ラリーに対する率直な憎悪を感じる反面、それだけではなくなるこの真逆の感情や、四人四色な女達と彼の繋がりを見て産まれた考察を書いては消しての繰り返しだ。

    彼のパーティに呼ばれた女達の静かな戦いと、女とラリーの関係を語る場面では強く激しい感情を感じました。まるで暗闇で徐々にエネルギーを集結させ火花を散らす線香花火の様。
    シャノン(前妻)の神経逆撫でしてくる正論、
    クレア(現妻)の自己愛と傲慢な言動、
    マギー(愛人)の高性能嫌味マシンガントーク、
    ディー(フィアンセ)の最年少クイーンの見下し、
    そして自分の人生が全ての男ラリー・ロック。
    確実にドロ沼な五角関係なのに、彼 彼女らの放つ言霊に醜さを感じないのは、線香花火の美しく儚い末路を知ってしまったからなのでしょうか。

    因みに、被害者探しの難易度は高くありません。読めば分かります。なんて、未来が見えた事に調子に乗っていた私でしたが、この作品が1985年の物と知った時には開いた口が塞がりませんでした。人生の先輩でした。すげぇです...

    最後に、これは私の妄想故に楽しめた事なのだが、読了後は是非カバーのお洒落なカクテル達に4人の女性像を当て嵌めてみて欲しい。
    四人四色なレディ達を色形が違う素敵なカクテルで表すなんて、うふふ ろまんてぃっく感じちゃいました。

  • ひとかどの人物になることを夢に見、権力者にすり寄り、取り入る。
    ひとたびコラムニストとしての立場を得れば、その立場を利用して特権をむさぼり、また貪欲にさらに階段を登るための策略を巡らすラリー・ロック。

    今やそこそこの知名度、資産、権力を有したラリーは、思い出のペントハウスを購入するに当たり、そこで発見した欠陥を利用した殺人計画を思いつく。
    その計画(=引っ越しパーティー)に招かれたのはラリーが今に至るまでに関わり合ってきた四人の女(元妻、現妻、愛人、婚約者)。
    殺人計画の結末や如何に。

    冒頭、ペントハウスからの転落死を扱う場面からの倒叙物。
    明けて、現在進行形のパーティーでいがみ合う四人の女達と如才なくエゴを貫き権力者然を振る舞っているかのようなラリー。
    そこに挟まれるような形で四人の女達との馴れ初めと、決して完全肯定できていない自己へのラリーの思いが過去から現在に追いつくように語られていく。

    最初は胸くそ悪いとしか感じられないラリーの道程なのだが、次第に空っぽの虚像としての自分に気付いたり、思いとは裏腹にもつれる人生に憐憫の感が強くなってくる。

    登場人物の少ない物語なので”誰が”の部分に意外性は少ないのだが、過程で紡がれていく背景と、交錯する心理のサスペンスが秀逸。
    これが50年以上も前の作品かと思うとすごい。

    深緑野分氏の解説にある「宗教画を彷彿とさせる」という評が読後感にまさにぴったりで感服。
    こんな表現をする方の作品が読んでみたい。
    『ベルリンは晴れているか』の作者だったよね、確か。

  • 人気コラムニストのラリーが主人公。彼は密かに自宅のバルコニーに細工をし、前妻・現夫人・愛人・婚約者をパーティーに招く。ラリーにはそのなかの一人を殺さなければならない切実な理由がある...というストーリー。

    冒頭のシーンで、ラリーが細工を行ったバルコニーの手摺から一人が転落する。
    誰がラリーのターゲットになってしまったのかを推理する『被害者探し』の話なのだが、読み進めていくうちに、四人の女とのエピソードやラリーの葛藤がメインで描かれる。
    結末で真相が分かると、切ない気持ちになってしまった。

  • 人気コラムニストのラリーが殺そうとしているのは、四人の女のうち誰なのか。1950年発表の少し古い作品だけど、面白い。
    別れた妻、離婚寸前の現在の妻、愛人、現在の婚約者という四人の女が一同に集められるということ自体、どんな修羅場なんだという感じだが、ラリーと彼女たちとの関係が回想されて、徐々に事件の背景が明らかになってくると、ミステリーというよりは人間ドラマとして面白くなってくる。冒頭で死んだのはこの人だろうな、という予想はついたけど、それでも没頭して読めた。

  • 人間模様が面白い。野心家の男と、当時のアメリカを彷彿させる4人のステレオタイプの女の一夜のパーティを会話と過去の回想を通じて物語る。男が殺意を抱く女はその中の一人。それは…。

    心理描写から、あの女かなという目星はつく。冒頭の書きぶりから、死んだのは…と思わせてあの人だろうなというのもわかる。が、やりとりが面白い。とはいうものの、登場人物のアクが強くて、シャノン推しなのは間違いない。

  • ただの被害者当てのサスペンスかと思ってたら全然違った。人気のコラムニストのラリーが前妻、現妻、愛人、フィアンセの四人を招いて内輪のパーティーを開く。その席でラリーは四人のうちの誰かを殺すつもりだった。初めにその点は読者に示されるから、自然と誰が殺されるのかと考えながら読んでしまう。なりふり構わない出世主義でクズとしか思えないラリーが、所々で見せる良心のうずきの描写から、誰を殺したいのか自ずと分かってくる。そして最終的に誰が死ぬのかまでは読めたけど、もう少しブラックな結末かと思ってたら違った。四人の女性もただ役割を演じるだけでない多面性のある人として描かれていて、ついハラハラしてしまう。面白かった。

  • ラストは二人揃って手摺から落下?
    女だけ?男も道連れなのか男だけなのか、読解力がないためか何回読んでも分からず。。。

    前妻、現妻、愛人、婚約者、4人の女を一斉に集めるって驚き。設定が面白いなと思った。
    名声を気にして見栄を張りまくる主人公の虚感じがちょっと切なかった。

  • アメリカの作家「パット・マガー」の長篇ミステリ作品『四人の女【新版】(原題:....Follow, As the Night....、英題:Your Loving Victim)』を読みました。
    ここのところ、アメリカの作家の作品が続いています。

    -----story-------------
    前妻、現夫人、愛人、そしてフィアンセ――人気絶頂のコラムニスト、「ラリー」を取り巻く四人の女性。
    彼はひそかに自宅バルコニーの手摺(てすり)に細工をし、四人をディナー・パーティに招いた。
    「ラリー」には、そのなかの一人を殺さねばならない切実な理由があったのだ……。
    一作ごとに趣向を凝らす才人「マガー」が、犯人ならぬ「被害者捜し」の新手に挑んだ、いつまでも色あせない傑作ミステリ。
    訳者あとがき=「吉野美恵子」/解説=「深緑野分」
    -----------------------

    「犯人」を捜すのではなく、「被害者」、「探偵」、「目撃者」等を探す…… 斬新な設定で一世を風靡した作家「パット・マガー」の傑作ミステリ、、、

    1950年(昭和25年)に発表された「パット・マガー」長篇第5作にあたる作品です。


    人気絶頂のコラムニスト「ラリー・ロック」は、平凡な女で前妻「シャノン・ムーア」、美貌の女優で現在の妻「クレア・フォレスト」、毒舌家の画家で仕事仲間兼愛人「マギー・ラング」、19歳ながらフィアンセとなった「ディー・イングルズビー」を、新居披露のパーティーに招いた… 新居は贅沢なペントハウスで、「ラリー」にとって成功の証である、、、

    そのテラスの手すりがぐらついていることを知った「ラリー」は、「彼女」をそこから突き落として殺そうと決意したのだ… それは招いた四人のうちの誰なのか……。


    物語は深夜のニューヨークで墜落死体が発見されるところから始まり、すぐさま時間が巻き戻ります… 読者は、誰かが墜落して亡くなったことを認識して読み進める感じ、、、

    犯人を捜すのではなく、被害者を探す、被害者が誰だったのかを探るというユニークな設定… 「ラリー」と女たちのパーティの模様、かつて彼が彼女たちと過ごした日々の回想を通じ、動機を探っていくことになります。

    途中から、もしかしたら亡くなったのはこの人物じゃないかなー と思っていたのですが… その予感が当たりましたね、、、

    終盤、最も殺されそうにない人物に危機が訪れるので、違ったかなー と思いましたが、最後に意外な結末が… 思いも寄らない方向から心を揺さぶられることになりましたね。

    野心や虚栄心が強い人物が多く、感情移入が難しかったのが残念でしたね… 共感できるのは前妻の「クレア」だけでしたからね。

  • そうかなと思ったら、そういうラストだった。

  • 古い話だけど楽しめた

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

"パット・マガー
本名パトリシア・マガー。
アメリカ、ネブラスカ州フォールズ・シティー生まれ。
ネブラスカ大学を卒業後、コロンビア大学でジャーナリズムを専攻。
アメリカ道路施設協会の広報室長、建築雑誌の副編集長を務める。
1946年「被害者を捜せ!」で、推理作家としてデビュー。
1950年、カソリック・プレス・アソシエーション賞受賞。52年には、エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン賞を受賞している。
"

「2018年 『死の実況放送をお茶の間へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

パット・マガーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×