歌うダイアモンド (マクロイ傑作選) (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488168100

作品紹介・あらすじ

アメリカ随一の女流本格作家マクロイによる、趣向と技巧を凝らす短篇集が文庫化。ミステリからサスペンス、破滅SFまでバリエーション豊かな8篇を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリあり、SFありの9篇。
    戦後から1960年代に書かれた作品だそうで、その時代の社会の様子や危機感みたいなものがちらほら感じられる。

    「Q通り十番地」が良かった。
    違法な取引の匂いがする怪しげなQ通り。どんなことが行われているんだ、と思いながら読み進めて、いやこれは想像してなかった。
    初め、何の暗号なんだと思ってしまった。
    短い中に過不足なく収まっていて好きだな。

    「ところかわれば」
    火星人と地球人の交流。
    火星人の戸惑いの理由が判明するところが、えっそうなの、となる多分いちばんの読みどころだと思うけど、別の本で紹介されていたので先に知っていた。それでも面白かった。
    地球人ガーダの指摘は鋭い。確かに、火星人ロリスの考えには反論したくなる。
    でも全く違う生態ゆえの価値観による発言を、地球人の男女に置き換えて批判しているだけのようにも思えて、「平等主義とやらの風潮」だなんて皮肉だなと思う。

  • ____

     ミステリを書くということと、それをミステリで書く、ということ。
     SFを書くということと、それをSFで書くということと。

     メインテーマ、ってものをじくじくと考えている。書きたいもの? いやそういうんじゃないんだ。それが生まれてきた理由? どうした厨ニか?



     にしてもヘレン・マクロイ、名手である。想像とは違ったけれど、Q通り十番地が構成的にもモチーフ的にも、会話の面白さも含めてお気に入り。SFは未来を書くものではない、というのが良く現れていると思います。
     全体的にまとまっているので☆3.4。もしかしたら3.5。迷う…


    “すべての手がかりは論理的な総体の一部であり、すべての謎には合理的な解決が可能であるが、それでもここには想像力に富んだ読者にとってそれ以上の何かがある。どの物語の最後にも、疑問符とぞっとするような身震いがある。”

     それに、尽きる。

  • SF
    ミステリ

  • ■「東洋趣味」(ミステリー)
    時代は1900年頃、場所は北京日本公使館。ロシア公使ヴォルゴルーギが、どこでどうやって落手したのか、愛新覚羅王朝門外不出の王維の真筆を、どうだとばかり一同に見せつける。時を移さず、ヴォルゴルーギの正妻にして絶世の美女オールガが、乗った馬車ごと忽然と消失する。路傍では何かを聞き知ったと思われるひとりの盲の乞食が刺殺されている。ロシア陸軍武官のアレクセイと私(語り部)は、乾隆帝の孫、載恆貝勒が事件の背後にいるとにらみ、決死の覚悟で載恆との謁見に臨むのだが……。
    意外なところから登場した探偵のあざやかな推理に拍手。
    コーケイジアンのアメリカ人女性がこんなの書けるか⁉
    ため息がでるような佳作だ。
    …ところで映画『バトルランナー』に、”サブジロー”なる日本人が出てきて、なんちゅー名前だと思って30年間アタマから離れないのだが、また新しいのが出てきた。”キアダ”。…”キアダ”って、どんな漢字書くの!?
    p.s. 「ティファニーで朝食を」には ”ユニオシ” なる日本人が出てくる。

    ■「歌うダイアモンド」(ミステリー)
    各地で”歌うダイアモンド”と呼ばれるUFOが目撃される。加えて、その目撃者が次々と命を落としていく…。
    ほとんど2場面だけの短編だが、犯行は大胆にして大スケール。それを迎え撃つ謎解きは華麗にして完璧。これも素晴らしい佳作。

    ■「人生はいつも残酷」(ミステリー)
    彼は名前を変えて15年ぶりにかの地に帰ってきた。あの日誰が自分を殺そうとしたのか、誰が自分の代わりになって死んだのかを明らかにするために…。
    100ページほどの中編、登場人物はたった6人。だが、混みいっていてなんか読むのが難しい。…なぜ?
    主人公が15年前心を寄せていた年上の女性に、今も気があってあわよくばと思いながらその一方で、その女性の娘にも魅かれていて、結局その娘と最後はイイ感じになる。……主人公のこの芯の無さが原因ではないだろうか? 感情移入しにくいのだ。

    ■「鏡もて見るごとく」(ミステリー)
    殺害方法はどうかと思うが…。
    なんせうまい。よっく考えているのだ、ヘレン・マクロイ。つくづく思う、頭のいいひとだったんだろうなぁ。

    ■「風のない場所」(SF)
    地球最後の、ひとりの少女と一羽の小鳥と一本のヤマモモの樹が、砂丘の窪地に身を寄せあう…。

    『ザ・ロード』(マッカーシー)だと数万人だろうか人類の生き残りは。ただし人間以外の大型生物はほぼゼロ。

    『アイ アム レジェンド』(マシスン)は人類最後のひとりが出てくる。ただしゾンビみたいなのはワンサカいて相当にぎやか。

    『漂流教室』(楳図かずお)は数十人と奇怪な生物がちょっと。『猿の惑星』(ピエール・ブール)はひとりだが猿は無数。どちらも無理やり遠い未来にタイムスリップさせられたのが原因。

    『猫のゆりかご』(カート・ヴォネガット)、最後の数人のグループの描写がある。世界中探せばもっともっと残ってはいるだろう。ただし、世界はもうすぐ、確実に終わる。

    「エイン博士の最後の飛行」(ジェームズ・ティプトリー Jr.) 最後のひとりだろうか、この物語の語り部は。改造された白血病ウィルスがばらまかれ人類と少数の大型動物は死滅する。簡潔で、スピーディーで、重厚で、美しい。

    『ウィトゲンシュタインの恋人』(デイヴィッド・マークソン) ”わたし(ケイト)”以外、動物の類は皆無。”わたし”は鬱に悩まされつつも、蘊蓄を傾けながら地球上を駆け回る。

    「クレーターの男」(手塚先生)…本当に、本当に最後のひとり。さらに他の生物もいっさい無し。それでいてこの男はこれから永遠に独りきり。やっぱりこれで決まりでしょ! 天才が書いたらこうなる!! 最高に好き!!!

    「(…他にも思い出したら追記する)」

  • ※図書館

  • 短編集。ミステリ。SF。
    この人、SFも描くのか。
    表題作と「風のない場所」が好き。
    表題作のミステリアスな設定が素晴らしい。
    「ところかわれば」は、異星人とのコンタクトもの。星新一のショート・ショートにありそうなアイディア。
    どちらかというとSF作品のほうが好みかも。

  • 9篇中、8篇を作家本人が選んだ自選短編集。SF、犯罪推理、名探偵、オカルト、社会風刺、近未来など多彩な内容で、ミステリー作家らしく、SFにもしっかりとオチがある。
    戦後に活躍した人で、時代を感じる部分もあり、それはそれで味わい深い。

  • 『東洋趣味』が取っつきにくくて大苦戦した。SF物が結構多くてUFOとドッペルゲンガーのオチが意外に思えるくらい。

  • マクロイがSFを描いていたことが驚き。SFも、いつものミステリもサスペンスもそれぞれ違う味わいで楽しめた。
    『Q通り十番地』どこに転がるか分からない話。皮肉なスパイスの効いた近未来的なテーマが恐ろしくもあり、オチにも驚かされる。
    『カーテンの向こう側』予想通りの展開。でもカーテンの向こうに潜むモノの正体をはっきりと突きつけられた瞬間、主人公と共に撃沈した気分。
    『ところかわれば』大した出来事もなく、でも飽きるどころか議論に引き込まれてあっと言う間に終了。続きが読みたい。
    『鏡もて見るごとく』結末が違うという長編。カーの某代表作の類似結末らしいので何となく結末が読めるような…。果たして犯人とトリックが同じでも面白く読めるのか?
    『歌うダイアモンド』なんて壮大な計画。それを実行してしまうあたり、重度の神経症かもしれない。でも嫌いじゃないかな。
    『風のない場所』昔観たアニメ映画「風の吹くとき」を思い出した。どちらも核戦争によって人類と世界がゆっくりと滅びていくとても静かな話。おぞましい放射能が日常を容赦無く破壊していく様とそうとは知らずにそれまで通りの日常を生きる人々の対比があまりにも無情に描かれている。ただ似ているようでいて、この2つの話はタイトルが示す通り受ける印象が対照的だ。救いようのない惨さが際立つ『風が吹くとき』と人類が滅びても世界の美しさは完全に潰えず、わずかな光明をみる『風のない場所』。深く深く考えさせられた。
    『人生はいつも残酷』マクロイらしいミステリ。犯人予想つかず。『鏡もて見るごとく』のように長編にして欲しかった。多分、面白く読めただろう。

  • 2015/05/29読了

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著者プロフィール

Helen McCloy

「2006年 『死の舞踏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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