ベローナ・クラブの不愉快な事件 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M セ 1-5)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488183059

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第四弾。

    晩餐会に出席する為、ベローナ・クラブを訪れたピーター卿は、クラブ古参会員である、フェンティマン将軍が椅子に座ったまま死んでいる場に出くわしてしまいます。
    しかも、ほぼ同じ頃に将軍の妹で資産家のレディ・ドーマーも亡くなっていることが判明。
    フェンティマン将軍(兄)とレディ・ドーマー(妹)のどちらが先に死んだのかによって、レディ・ドーマーの遺産の配分が変わってくるということで、将軍の死亡時刻を特定してほしいとの依頼がピーター卿に入ってきて・・。

    最初は将軍が“いつ死んだのか?”を調査していたはずが、死体の不自然な状態から死亡時期の操作がされたらしいことを突き止めたピーター卿。
    そして、さらに探っていくと“他殺”の形跡まで・・と、どんどん思わぬ展開になっていく流れに引き込まれて、楽しませて頂きました。
    勿論、いつもの“ピーター卿節”も相変わらずで、ベローナ・クラブの従業員にウザがられようが、“オリヴァー”なる謎の人物の存在に翻弄されようが、あちこち“寄り道”しながらも軽快に謎を解いていくのが“これぞ”という感じでございます。
    ただ、今回はバンターの出番が少なかったのが残念なところでしたね。
    因みに、このシリーズは毎回女性キャラが魅力なのですが、今回も、メンヘラ夫のジョージ(将軍の孫)を支える妻・シーラや、チャーミングな彫塑家のマージョリィが花を添えています。
    そして、今回の相続騒動のキーとなるドーランド嬢(レディ・ドーマーの被後見人)ですが、最初はやたら喧嘩腰な態度が印象良くなかったのですが、実は“自分、不器用ですから(?)”みたいな、某健さんばりの繊細さを持ち合わせた女性で、加えてかなりお気の毒な目に遭っていることもあり、是非ドーランド嬢に幸せになってほしい!と思いました。
    話の終盤で、ある人物がドーランド嬢に好意を持ったのはよいのですが、“そいつも大概やぞ・・”と素直に祝福できなかった私です(ま、彼自身の“やらかし”については反省しているようだからからええか・・)。
    ちょっと思ったのが、このシリーズでは“医師がダメんず”というのが定石なんですかね?何だかその傾向があるなと感じた次第です。

    余談ですが、解説で、ピーター卿の経歴として「ある宝石店の盗難事件にからんで検察側の証人になったことから、素人探偵をはじめたのが社会復帰のきっかけとなった」と書かれていたのですが、それを読んで“えっ?ピーター卿の最初の事件て、お風呂の死体(『誰の死体?』)の話じゃなかったの?”と困惑しました。
    しかも追い打ちのように「・・この経歴は、つとに知られているところでありましょう」とまであって、初耳だった私は心乱された次第です~。

    • 111108さん
      あやごぜさん!

      うらやましい〜この本図書館になくて‥この本意外にもどうもピーター卿シリーズがちゃんと揃ってないみたいなんです泣。もうちょっ...
      あやごぜさん!

      うらやましい〜この本図書館になくて‥この本意外にもどうもピーター卿シリーズがちゃんと揃ってないみたいなんです泣。もうちょっと場所を広げて探してみます。

      それにしてもまたピーター卿節炸裂なんですね!バンターの活躍少ないのは残念ですが、さすがあやごぜさん、ダメんずといいキャラの女性見つけたんですね♪

      それと探偵業のきっかけが「ある宝石店の盗難事件にからんで〜」という文章、今まで読んだののどこかにも出てきたような‥。ホームズにもあるように、本当の小説にはなってないけど逸話としていつも出てくるエピソードなのかな?と思いました。まぁ「あの風呂場の裸の死体を〜」とはレディの前では説明し難いですし(๑˃̵ᴗ˂̵)
      2024/04/07
    • あやごぜさん
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      なんと・・この本が蔵書にないのですね・・。
      他のピーター卿シリーズも揃ってなさそう...
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      なんと・・この本が蔵書にないのですね・・。
      他のピーター卿シリーズも揃ってなさそうとの事で、それは悲しいですよね・・。
      こうなったら「無いなら買っておくれ」的なノリで、図書館のリクエスト(予約)カードにシレっと書いて出しちゃうとか・・・。
      「もうちょっと場所を広げて探してみます。」←是非~。見つかるとよいですね!

      あ、ピーター卿の経歴の件、どこかに出ていたのですね~。
      すっかり抜け落ちておりました~テヘ(´▽`;)ゞ
      「逸話としていつも出てくるエピソード・・」←なるほど!納得です。ありがとうございます♪
      2024/04/08
    • 111108さん
      あやごぜさん♪

      買うしかないか〜と思ってましたが、その手がありましたね!リクエストしてみます‼︎
      ピーター卿の経歴の件、私もうろ覚えなので...
      あやごぜさん♪

      買うしかないか〜と思ってましたが、その手がありましたね!リクエストしてみます‼︎
      ピーター卿の経歴の件、私もうろ覚えなのでもしかして妄想でしたらごめんなさい。
      2024/04/08
  • 今回のセイヤーズは小粒で、事件も(終わってみれば?)呆気ないほど、単純。
    ただ、ピーター卿がこの上なく女性に優しいのを今まで以上に実感し、読後感は非常に快い。
    登場人物としては何をさしおいてもアン・ドーランドが一番だろう。物語の終盤でようやくピーター卿と邂逅するこの女性は、それまで気立てが悪く、不細工かつ地味で更に学問に固執する女性として描写されていたが、終盤の真相解明の段では、何とも不器用で誠実な犠牲者に転じ、終いには敵対していたロバートと良い仲になりそうな雰囲気で退場する。なんともまあ、爽やかな幕切れである。
    また原題の「Unpleasantness」に込められた意味も非常に多種多様で、広告のコピーライターをしていたセイヤーズならではの題名である。翻訳の都合で「不愉快な事件」と名付けざるを得なかったのが非常に残念である。

  • ドロシー・L・セイヤーズが生み出した貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿シリーズの長編第4弾です。
    相変わらずウィットに富んだ会話や文学をはじめとする教養溢れる引用が魅力的で楽しかったです。
    ゴージャスなフラットに有能な従僕パンターと2人きりで住み、趣味は稀覯本をはじめとする読書、美食家、ワイン通、音楽はバッハに、いくつもの高級クラブ会員でひと時を過ごし、中でも一番の趣味が犯罪捜査という絵に描いたような素敵な人生(!)を送る一方で、第一次世界大戦での後遺症で戦争神経症に苦しんだ暗い過去も持つという完璧な人物設計です。(笑)大体、夕食にヴィンテージ違いのロマネ・コンティを2本開けるとは!

    さて今回のお題はそのクラブでのひと時に、椅子に座ったまま亡くなっている老将軍が発見され、ほぼ同時刻に莫大な資産を持つ老将軍の妹も自宅で亡くなっていて、その妹の遺産を巡る争いから話が始まります。果たして亡くなったのはどちらが先で、遺産配分はどうなるのか?
    割と泥臭いところからの始まりではありましたが、これが謎解きとして面白く糸が絡まっている上に、さらに二転三転の展開があって、まあ読者を飽きさせないストーリー進行になっていたと思います。
    ちょっと偶然性が高いところと最終的に登場人物の関連性が近過ぎるきらいはありましたが、ピーター卿がキーとなる女性登場人物となかなか会えないことや、遺産配分の話からお約束ともいえるその後の展開があるなど工夫を凝らした構成になっていてこれだけでも充分に楽しめました。
    あと登場人物としては解説にもある通り、女性陣がなかなかたくましかったのも魅力の一つでした。
    波乱万丈な老将軍の妹や、その遠縁にあたり不美人だが積極性のある娘、老将軍の孫の奥さんでこれまた戦争神経症に苦しむ夫を支え喫茶店を経営する美人妻、ピーター卿の友人の女性芸術家など、セイヤーズならではの活発な女性登場人物がこの物語を盛り上げていたように思います。
    動機とその後の行動心理の考察場面では、遺産相続とその後の展開の組み合わせが考えられて、ん!?それで合っているのか?という気分に何度もさせられたのですが(笑)、本当に合っていますよね?(笑)
    だんだん辻褄を考えるのが面倒になってきて・・・。(笑)
    何よりあの人が犯人なら最初からもっと直截的に立ちまわれば良いのに、と思わないでもありませんでしたが(笑)、一応整合性は取れていたように思います。(笑)
    ラストはたぶん丸く収まってのハッピーエンドで、読後感もなかなか良かったです。
    ピーター卿、なかなかいいぞ!(笑)

  • 軽妙で面白いシリーズ。
    二転三転する物語の展開。

  • セイヤーズ作品のいいところは、ワトソン役がまともなところだと思う。

  •  退役軍人の老人の死亡時刻により、その妹の遺言がどのように執行されるかが決まる。妹より先か、後か。普通なら、先か後かなど物理的に問題となることは無い。だが、ベローナ・クラブで見つかった退役軍人とその妹はほぼ同時刻に天国へと逝ったように見えた。どちらが先なのか、五里霧中の状況を打破するように依頼されるウィムジィ。

     ミステリとしては凡々。だが、そもそも話自体が面白いので引き込まれる。
     中盤で明かされる、まさかの殺人という事実。

  • もうとにかく会話を楽しむ小説。
    最後の登場人物たちのその後なんて、全部会話のみw
    これがまた気が利いてていいですね。

    そして男の子的にグッと来るのは、「飲みませんか、大佐?」からのバーのみんなの能天気な会話への流れ。で、最後の…ですね。

    しかし、最後の最後まで「不愉快な」という表現にするあたりがさすがというかなんというか。

  • ピーター卿もの。ご老体のフェンティマン将軍がなくなった。それと同時期に将軍の妹のレディ・ドーマーもなくなった。将軍の死は早々に片付けられたが、レディ・ドーマーの遺言に、将軍が生きていれば将軍に、生きてなければ世話嬢に多額の遺産を遺していた。しかし、同時期になくなった将軍の正確な死亡時刻がわからないため、ピーター卿にそれを突き止めてほしいという依頼が入る。題材が、殺人という問題でなく死亡時刻の特定からというのが非常に興味深い内容で楽しかったです。現代じゃ後からでもある程度特定できますし、当時だからこそですよね。しかも、それだけじゃ飽き足らない後半戦もあり、久しぶりに読んだピーター卿ものでもあり面白かったです。ただ、山場が一カ所あっただけで、起伏があんまりなかった印象があるかなあ……。

  • 心臓が弱っていた老人が、毎日決まって訪れるベローナ・クラブで、座ったまま眠るように亡くなっているのが発見された。一見、何の不思議もないその死に、たまたま居合わせたピーター卿は疑惑を抱く。その後、ほぼ同時刻に死亡したと見られる妹の遺言状が公開され、驚くべき事実が明らかになる。どちらが先に死亡したかで、莫大な遺産の分配が大きく左右されるのだ。
    老人の死亡時刻をはっきりさせて欲しいという依頼を受けたピーター卿は、はじめからそれだけですまないということを匂わせている。果たして次々と現れる新しい要素に謎は新しい謎を呼ぶ。 (2002-01-19)

  • いろんな人が怪しい行動をし、ピーター卿の推理もそれに応じて二転三転して最後まで飽きずに楽しめる。
    バンターはあまり目立たず。

    最後は不幸だった各キャラが幸せな明日に向かって進んでいくので、読後感は悪くない。

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