五匹の赤い鰊 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488183073

作品紹介・あらすじ

スコットランドの長閑な田舎町で嫌われ者の画家の死体が発見された。 画業に夢中になって崖から転落したとおぼしき状況だったが、ピーター卿はこれが巧妙な偽装殺人であることを看破する。 怪しげな六人の容疑者から貴族探偵が名指すのは誰? 大家の風格を帯び始めたミステリの女王が縦横無尽に紡ぎ出す本格探偵小説の醍醐味。 後期の劈頭をなす、英国黄金時代の薫り豊かな第六弾!

感想・レビュー・書評

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  • 地理と時刻表とスコットランド訛りとに阻まれ今までで一番読みずらかった。画家達と田舎町で語り合うピーター卿に違和感。やっと出てきた忠実な執事バンターとの会話、個性的な警官達のいい味にやっと気がついた頃に大団円。後味は良い。

  • 挑戦的なタイトルから、わくわくして読みましたが、なるほど、これぞフーダニットと言いたくなるようなストレートなフーダニット。お見事です。

  • ピーター卿の久しぶりの良作!面白かった。赤い鰊(red herring)は人の注意をそらすもの。情報。という意味らしいねー。

  • 赤い鰊 とは偽の手がかりのこと。全員が怪しくて、次々に湧く疑問をひとつひとつ潰していく推理パズル。読むのが面倒くさくてとても好き。

  • ピーター卿のシリーズ6作目です。
    題名が素晴らしい本書はスコットランドの片田舎、釣り人と画家が集う町が舞台です。
    そんな町で嫌われ者の画家キャンベルの死体が発見されます。
    絵を描いている最中に崖から川に転落したと思しき状況なのですが、ちょうど当地に滞在中のピーター卿は偽装された殺人事件である事を見抜きます。
    現場に残された描きかけの絵が犯人による偽装だとすれば、犯人はそれを描く事が出来る人物、すなわち画家に違いないとピーター卿は推理します。
    特にキャンベルとの対立が深かった6人の画家が捜査線上に浮かび上がりますが、困った事に6人全員が事件当時に怪しい行動を取っていて、皆が皆怪しく見えるのです。
    そのうちの誰が真犯人なのかという、いわゆるフーダニットです。
    ピーター卿の推理は鮮やかです。

  • ピーター卿もの。不愉快な人物のキャンベルが崖から落ちて死んだ。しかし、その死が擬装だと指摘したピーター卿によって殺人として捜査され、六人の容疑者が決まるが、それらの容疑者のほとんどはその町から消えてしまっていた。アリバイをメインにフーダニットが展開される作品。展開としてはいなくなった六人の容疑者をそれぞれ調べていくスタイルで地道です。なので、展開が遅くさまざまな証言がでるのでちょっとわかりにくかったです。ただ、そういう作品なので重厚。犯人は容疑者が決まってる関係で意外性はありませんが、これまでの証言がひとつのトリックになったのはなかなか爽快でした。

  •  複数の人物から複数の解決が乱れ打たれるシーンから毒チョコの影響が語られることが多い作。次作『死体をどうぞ』ともあわせてバークリーからの影響は法月綸太郎によるその次作の解説にくわしい。(「セイヤーズを解剖する」として『謎解きが終わったら』にも収録されている)

    >おそらくバークリーの変則的な構成を、通常のフーダニットがたどる起承転結の時系列に組み替えて、「読者への挑戦」方式の長編として再提出することだった

     『毒入りチョコレート事件』は多重解決というよりも前の推理を後の推理が乗り越えた…みたいな言い方をしてたのが誰かは忘れてしまったのだが、あれは素直に読んでいけば各人の推理が順繰りに否定されていく作品ではある。それがセイヤーズが行った組み替えよって真相前に各人が各様に指摘する推理はどれも明確に否定されることなく流れていくのだが。結果、その工夫は殊能将之の言うところのノイズとなってしまっているように思える。

    >ブランドの作品では全登場人物が一度ならず犯人と目されることがある。これは確かに複雑化の極限だ。しかし、その一方で「だったら誰が犯人でもいいじゃねえか」とも思わせる。ここでは「意外な犯人」の楽しみが、ノイズに埋没してしまっている。
    http://www001.upp.so-net.ne.jp/mercysnow/Reading/read0306.html

     さらに言えば「だったら誰が犯人でもいい」だけでなく、こっちはピーター卿がどうせ最後に真相明かすと思ってるので「どうせどれも正解じゃない」との二重苦になってしまい折角の多重解決趣向に緊張感がないのである(ロジャー・シェリンガムの信用のなさを見習って欲しい)。法月が他に比較に挙げる『ギリシア棺』にしてもコリン・デクスターにしても、一つの推理が否定され壁に当たって、そこからエラリイもモース警部も苦悶煩悶していくのがポイントであって、並列状態の脇役推理というのもなかなか難しい。

     まあバークリーとの比較はこのくらいにして。で、作中において『マギル卿最後の旅』の名前を持ち出すあたり、アリバイモノの先駆としてクロフツへの意識もセイヤーズにはあったのかもしれない(らしい)。 
     被害者が絵を描いていた途中で事故にあったと見せかけるトリックは早々に割れてしまい、「画家」という条件で絞りこまれた6人の容疑者たちの前夜の犯行と偽装工作が可能であったかどうかが検討されていく。アリバイ崩しとフーダニットの両立といえば聞こえはいいのだが、実際はやたら煩雑なアリバイの検討が6人絡み合って続けられるのでうっとおしいことこのうえない。
     このあたり、クロフツの同種の作品がアリバイ崩し自体は単線で進んでいって(複数人の捜査するにしても1つ1つ潰していき)最後犯人が絞りきれなかったり、サプライズが仕掛けられてたりするのとは対照的である。試みとしては分かるけど、あまり成功しているようには思えない。
     延々と続くアリバイ検討に幅を取られるせいか、これだけの分量がありながら事件が起こるのは早々30ページ。そのせいもあるのか被害者のキャンベルにしても周囲から嫌われまくってるクソヤロー感がイマイチ薄い。それこそクロフツ流に彼のクソヤローぶりと殺されるまでを前半でジックリ書いて(クロフツなんか裸足で逃出すセイヤーズの筆力で)、本作の美点である「犯行現場になかったモノ」からのネタをメインに仕上げてもらえればなどと考えてしまった。
     
     それにしても本作の翌々年にバークリーが『ジャンピング・ジェニイ』で周囲から嫌われまくってるクソヤローが殺される話をクソヤロー感たっぷりに書いたのは彼流の返礼ではないのかと。

  • ピーター卿はカークブリーを訪れていた。ここは画家と漁師の村。そこで一番の嫌われ者であらゆる人間と悶着を起こしていた男が川で死体で発見された。死体を見たピーター卿は殺人であることを指摘する。捜査で浮かんだ容疑者の画家は六名。ところが揃いも揃って怪しく、揃いも揃ってアリバイがある。犯人は誰?

    どう考えても怪しい人間が揃いも揃って犯行時に村にいないとか、アリバイが完全にあるというのはうさんくさい。ここはパズルと割り切らなければならないが、そう思って読むとアリバイ崩しはなかなか面白い。 (2002-01-27)

  • セイヤーズでは読むのに苦労した1冊。日本語訳が読みにくいなどという理由ではなく、今回、私が苦手な時刻表アリバイトリックものだったためだと思われる。
    土地勘のないイギリスの地名とマイルという距離の単位、そして容疑者が全員画家という普段海外翻訳モノを読むときに頼りにしている職業との名前のセットでキャラクターの判別を行っていたのができない、という諸々の要因により、読書スピードが落ちてしまった。

    ストーリー自体はとても考えられているのは判るので、再読する時は、メモを片手に各キャラクターの特徴を整理しながら読み進めたい。

  • 同事件が転んでいくかは
    事件背景を考えれば
    推測が聞くかもしれませんね。
    頭の言いあなた、そう、あなたならばね。

    タイトルは偽の手がかりを
    示しているものです。
    6人の容疑者と目されている人の中の
    5人までは偽者。
    共犯説も出るけれども結局は…

    しかし犯人が出てきても
    被害者は同情もしたくないような
    愚か者の塊でしたので
    大変でしたよなぁ、とおもいました。

    さいごに再現をする
    ピーター卿がほほえましいです。

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著者プロフィール

ドロシー・レイ・セイヤーズ。1893年、英国オックスフォード生まれ。コピーライターの傍ら執筆活動を行い、1923年に 「誰の死体?」を発表。ミステリ作家親睦団体〈ディテクション・クラブ〉の会長も務めた。1957年死去。

「2021年 『ピーター卿の遺体検分記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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