- Amazon.co.jp ・本 (587ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488187064
感想・レビュー・書評
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ミネット・ウォルターズまたもや★5ですよ
大好きか!
まぁ、海外ミステリ好きの方たちからしたら何を今更大騒ぎしとるんじゃこいつは!ミネット・ウォルターズなんて基礎中の基礎やん!とお思いでしょうが…知らなかったんだからしょうがないじゃないか!
しょうがないじゃないか(えなりかずき風に)
そして前回ミネット(naresc.)の作品を読んだ時にミネットの作品には「朗らかさ」があると曰いましたが、巻末の解説によると「救い」があるとのこと…なるほど…だいたい同じ意味やな
ジメジメとした暗いものが作品全体に横たわっていながらカラッとした明るさも“同時“に表現できる稀有な作家さんです
そしてそのことはまさに主人公のラニラが体現しています
後悔や復讐の念に駆られていることを正直に認めつつもどこか明るく、ユーモアをもって20年前の事件を解き明かそうとします
それにしてもミセス・M・ラニラのMって何やねん!とずっと思ってたら他の方のレビューで解説してくれてましたが、どうやらミセスって名前らしいです
ミセス・ミセス・ラニラになっちゃうので真ん中の名前のミセスをMと表記してるっぽいです
ややこしい
日本人で言ったら「なかやまきんに君さん」みたいなことか?(違う)
※注 naresc.=ナレッシェンド(意味:音楽記号で「だんだん馴れ馴れしく」)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「氷の家」と同じ作者だったので。
今まで読んできたこの作者の作品の中では一番、面白かった。
交通事故で亡くなった黒人女性の死の真実を、
警官でも探偵でもない近所の女性が20年もたってから追及する。
いや、20年間追求し続け、とうとうその地に帰ってきた。
その追及は、グレアム・ロードに住む、住んでいた人々の殺人だけでなく、
窃盗、暴行、虐待、売春、不倫、偏見と人種差別を暴いていく。
誰が彼女の家から盗みを働いたのか、
誰が彼女の家に傷ついた猫を投げ込んだのか、
誰が彼女を家から追い出そうとしたのか、
そして、誰が彼女を殺したのか。
しかし、死にかけていた女性を発見したからといって、
なぜ主人公はなぜ遠い地にあって20年も真実を追求し続けたのか。
夫との関係を壊す危険を冒してまで、
息子たちを利用してまで、
自分の受けた屈辱を明らかにしてまで、彼女の殺人を追及するのか。
その謎の方が気になっていく。
主人公の強い意志、行動力が心地よいし、
意外な犯人も主人公の動機も、良かった。 -
登場人物が多く、翻弄される。
主人公のミセス・ラニラのミセスが名前だとしばらくわからず、翻弄される。
サムがなかなかに気に入る。
一番はルークとトムだけど。
息子たちいいこ。
ラニラはなんとなく鈴木京香のイメージ。
じゅうりょくぴえろ…。
海外の思いや入りの土壌に戸惑う。
変人的な黒人排他的酔っぱらい常習者に手助けしてあげるのが
当然な土壌。
日本ならよっぽどのことがない限り、
見て見ぬふりなのかなぁ。
もしくは助けを求めない限り。
村八分…というか。 -
ヒロインのラニラはごく普通の教師でのほほんと暮らしていた若妻だった。
たまたま近所に住んでいた黒人の老女が亡くなった事に不審を抱き、まわりの無理解に妨害を受けながら、こつこつと調べ続けます。
海外赴任を経ながらも何と20年も!
いったい、何が起きたのか。彼女はなぜ調べ続けたのか…手紙などを積み重ねて、次第に解ってくる全貌もすごいが、何よりもミセス・ラニラの意志の強さに感動! -
久しぶりに彼女の作品にめぐり合う事が出来た。まずは それに感謝したい。大好きな作家の一人である。
そんなに親しくもない黒人女性の死に際に偶然立ち合ってしまった主人公ラニラ。「これは事故死ではない」直感でそう感じたラニラは独自でこつこつと捜査を始める。そして 20年後ラニラは真実を明らかにするため事件の起こった場所に戻ってくる。執拗なまで黒人女性の死に執着する主人公は異様であり 怖ささえ感じる。しかし ラニラがここまでしなければいられなかった理由が次第に明らかになっていく。人が持つ 邪悪なもの....無関心・人種差別・障害に対する偏見・DV..この作品には全てが凝縮され表現されている。ラストの哀切な手紙は ササクレだった読者の心を潤してくれることだろう。
完成度の高い作品。ゆえに 「あそび」がなく好き嫌いは分かれるかもしれない。しかし わたくしにとっては最高の作品でした。
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20年もかけて真実を求める彼女の執念に脱帽。最後の手紙に涙してしまいました。
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ウォルターズは邦訳されだした頃に何作か読んで、よくできてはいるけれど、あんまり好みじゃないと思って、以後読んでいなかった。これは何かでウォルターズの最高傑作と読んだので、どれどれ、と。
やはり感想は同じ。優れたミステリだと思うけど、好きではない。全編に漂う昏さがつらい。 -
醜悪な部分は誰にでもあるやろし、キッカケさえありゃ誰でもああなると思うし、自分がそうならんように意識せなあかんね。
主人公の女性が一番とち狂ってると思うけど。 -
グレアム・ロード-その通りに住む唯一の黒人女性、アン・バッツがトラックに轢かれ亡くなるという事故が起きた。
彼女が亡くなる直前に居合わせた主人公のミセス・ラニラはアン・バッツの表情からこれは単なる事故ではないと直感する。
そして、その後の警察の調書と故人と親しかった医師の証言の食い違いからその思いを確信へと変えていく。
これは殺人である-と。
疑念を抱きつつも、それから三か月後、彼女は海外へ移住する事となる。
そして20年後、帰国したミセス・ラニラはアン・バッツの無念の思いを晴らすため、グレアム・ロードの住人一人一人に証言をとり、事件について探っていく。
そして見えてきたものとは-彼らの抱えていた様々な事情、隠された犯罪。
不倫、売春、窃盗、レイプ・・・殺人。
事件を解くキーワードは「蛇」。
最初読んでいてどうにも違和感を感じました。
いくら隣人が殺されたかもしれないと言っても20年も経ってからその事を探るだなんて-。
そんな事に執念を燃やす主人公の女性に正義感というよりも粘着質な性質を感じ、ちょっと異常なのでは?とまで思ってしまう。
でも読み進めていく内にそういう思いが払拭されました。
20年というとどうしても時効が過ぎていると思ってしまいますが、事件を探る主人公、そしてそれに対応する登場人物の様子を見ると、ああ、そうだ、この国には時効がないのだ・・・と思い至りました。
彼らには今も事件は生きているのだな・・・と感じ、そこに時効のある国、ない国の意識の違いを感じました。
そして、読み終えた時は主人公の女性の印象はすっかり読み始めと違い、「勇気ある意志の強い人」「誠実で行動力のある人」となっていました。
その印象が強くなったのはラストの文章。
それを読んで何故彼女がここまでこの事件の真相を探る事に執念を燃やしたのか、その気持ちが理解できました。
それと同時にとても切ない思いになりました。
たった一人だけ人種が違うというのはどれだけの疎外感や孤独感を感じるだろう-。
しかも、亡くなった女性が住んでいた所は決して住みやすい所ではなかった。
作中の「無学な者がはなつ攻撃性」というのがとても印象的で心に残りましたが、彼女の家のある通りは正にそんな攻撃性に満ちた通りだったのだから・・・。
タイトルの「蛇の形」とは何を意味するものなのか、作中に出てきます。
救いようのない人の悪意、それと同時に一筋の光を感じる本でした。 -
緻密な構成と人間性への深い洞察は相変わらず見事の一言。強いて難点を探せば、あまりに完成度が高く息をつけないところか。それと動物虐待の描写は、必要な部分ではあるのだろうが辛い