秘密〈下〉 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488202088

作品紹介・あらすじ

第二次大戦中ローレルの母はロンドンのある屋敷のメイドで、向かいに住む美しい作家夫人に憧れていた。空襲で家族を失っていたが、婚約者もいてひとりでぼっちではなかった。しかし、彼女の運命は急転回する。ロンドン大空襲、そして……。70年後、ローレルは弟とともに母の過去を探り始める。メイドだった母、写真の女性、高名な作家……浮かび上がったのは思いも寄らぬ母の姿だった。翻訳ミステリー大賞・読者賞ダブル受賞の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 正当防衛で不審者の男を殺してしまった母

    でも娘は、男が母に対して
    知り合いのように話しかけるのが
    聴こえていて……

    下巻読了

    現在と過去を行き来しながら話が進んでいくが、各部にはそれぞれメインの女性が挙げられている。

    第一部:ローレル(現代:娘)
    第二部:ドリー(過去:ローレルの母)
    第三部:ヴィヴィアン(ドリーの友)
    第四部:ドロシー(再び)

    物語の運び方が巧すぎて
    各場面の切り替わりで、軽く溜息や小さめの唸り声をあげてました。

    母であるドロシーが、高齢で死が迫っていることもあり、ローレルは
    上記の事件が起きた真相を、当時まだ幼いながらも巻き込まれてしまった弟にも協力してもらい追うことに…

    三部にて謎の女性「ヴィヴィアン」の視点が加わることで物語が加速します。

    …まぁ、まぁこう言うことになるよなぁ…そう言うことだったんだろうなぁ…
    と、思いきや驚かされました。

    『秘密』と言う直球なタイトルにしたわけを訳者さんが解説してくれていたのもなんか嬉しかった。
    (味気なく感じて、気になっていたから)

    上巻の感想にも書いたのですが、例のウィルスのことで
    読書をする通勤時間も、なんだか落ち着かず読むペースが落ちていた…
    なかなか暗い話題ばかりで気が滅入ってしまうのにネットで最新ニュースを得ようとするのに疲れていた。

    下巻に入りようやくのめり込んで読むことができた。
    そして、たどり着いた結末の鮮やかさと暖かさが心地よく
    このタイミングで読む本に選んで正解だった。

  •  読み終わってまず、ジミー(母の婚約者、恋人)はとても良い人だと思った。こんなに人間ができている人と出会えて、母は本当に良かったなあ。上巻で感じた違和感は、少しだけ当たっていたが、秘密が全て明かされた今となっては、些細な事のように感じる。
     また、最後が衝撃だっので、読後にネタバレ有りの感想をいくつも見たが、最初から勘づいている人もおり、自分の読む力が未熟だと思った。しかし、作者が求めている読者は私のような、純粋にミスリードに引っかかってくれる人だと思うので、まあ良しとしよう。

  • 最高 素晴らしい
    心地よい秘密の物語

  • 母親が見知らぬ男を刺殺する場面を目撃した少女が大人になり、余命わずかとなった母親の過去をたどりながら事件の真相を探る。母親の青春期であった第二次世界大戦中のロンドンを舞台とした「秘密」が、少しずつ解き明かされていく。

    過去と現在を往き来しながらゆったりと紡がれる物語には、毎度のことながら魅了された。早く真相を知りたいと急く思いと、古めいたロンドンで繰り広げられる独特な空気にいつまでも浸っていたい気持ちとが交錯する。
    時代の流れに翻弄されながらも、空想癖のある少女たちの弾けるような瑞々しさ、哀しい運命と切ない余韻。秘密の内容は想像できたし、そんなに都合よく進むのかと思う場面もあるものの、古い時代とからめた作品全体のトーンがじつに魅力的。
    『湖畔荘』で出会い『忘れられた花園』、本作品と出版順を無視した読書となってしまったが、このあと他の作品も読んでいきたい。

  • 娘がある出来事をきっかけに母親の秘密を探っていく。
    物語は何人かの登場人物を軸に現代から過去と交互に展開していく。
    次々と母親の過去が暴かれていくのだが、最後の最後に大きな秘密が暴かれる。途中何となく展開が読めた部分もあったが、それでも最後まで夢中にさせられる。
    前半は、自分にとって素晴らしい母親がもし過去にとんでもない過ちを犯していたのを知った時主人公はどう思うだろうか?などともやもやしながら読み進めていたが、そんな考えは杞憂に終わり、心地よい感動を味わえるラストだった。

  • 何となく面白そうだと思って買った本だったので、最初は「過去や現在、視点さえも行ったり来たりするので、読みにくにかも、、、」と思っていたが、そんなことはなかった!

    出だしから刺すのかい!と思ったけど、ドロシーの過去を考えたとしたら、そうなるよね、と

    読んでいるうちに、段々とドロシーがえげつない感じになってきて、ローレルの幼少期の母であるドロシー像とはかけ離れていたのも、そもそもが違うからとも考えられるような、、、

    最後の章のジミーに、何とも言えない気持ちになった

    結婚してからのヴィヴィアンは、初期は少しでも楽しかったのだろうか、やっぱりそんなことはなかったのだろうか。
    そんな中でドロシーの計画通りジミーと出会い、いけないと思いつつも恋に落ち、別れ際にキスをしたときの気持ちを考えると、、、そして二人の女友達が最後に会った時のこと、その時のヴィヴィアンの気持ちを考えると、、、

    あれやらこれやら考えるとキリがないし、読み終わったから結末はもう分かっているんだけど、分かった上でもう一度読みたいなと思った。

  • いやあー。
    過去と現在が切り替わりながら、スピード感がどんどん増してくる感じが、やっぱりイイわー。

    母ドロシーの謎めいた過去。
    幼き日、娘ローレルは、ドロシーに会いに来た見知らぬ男を、目にするや否やお気に入りのナイフで刺殺してしまうシーンを目撃する。
    なぜ母は男を殺したのか?わだかまりを抱きながら、ローレルは有名女優になるのだけど、年月が経過し、ドロシーの最期が近くなったその時、母の謎を解き明かそうと動きはじめる。

    死を前にしてという、パターン的には『忘れられた花園』を彷彿とさせるけど、やっぱりワクワク。
    上巻では、ミセス・グウェンドリンとドロシーの掛け合いが楽しい。
    このまま、偏屈婆さんと気の合うメイドのほのぼの生活が続くのかと思いきや、割とドロシーの考えることが腹黒くなってくる。

    ここからの著者のドロシーの扱いには、なるほど、と思わされつつ、残りページが少なくなってきた段階で「ま、まさかっ!?」と、閃いた自分。
    というか、声に出ていた。
    隣の人に怪訝な目で見られた。

    これ、実はジミーとヴィヴィアンがくっつくパターンじゃないのか!と。

    違った。
    全然違った。
    あ。そのパターンねー。
    ……ケイト・モートンには勝てる気がしない。

    ラストの、あれもこれもと真相が明かされまくるのは、賛否あるかもしれないけど、私は好き。
    やっぱり物語の細部まで見られるのは、楽しい。

    そんなわけで『湖畔荘』文庫化まで、待ちきれないだろうな、と予感するのでした。。。

  • 2度目の読了。
    ケイト・モートンの情景描写は丁寧で緩やかで好みです。また彼女の作品は読み終えるとしばらく余韻が続き、また読み返してしまったり。
    些細な出来事や、タイミングのずれで人生が大きく変わり、なんともいえない淋しさ虚しさも感じずにはいられません。その複雑な余韻がまた味わいです。

  • 母と娘ってモティーフも、やっぱり永遠のテーマだなあ…

  • 良くあるストーリーだと思って油断してるとラストまでに仕組まれた色んな仕掛けに驚く作品。第二次大戦のロンドン空襲の酷さは、コニーウィリスの作品から予備知識もあったので入り込みやすかった。単なる謎解きミステリに留まらず、家族のドラマわ70年前と現代が交差しながら描いたことも素晴らしい効果が出ている。やや冗長な所もあるが、それも魅力の一つで、ラストまで読み進めたならば、素敵な読後感が待っている。

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著者プロフィール

1976年、南オーストラリア州ベリに三人姉妹の長女として生まれる。クイーンズランド大学で舞台芸術と英文学を修めた。現在は夫と三人の息子とともにロンドン在住。2006年に『リヴァトン館』で作家デビュー
『湖畔荘 下 創元推理文庫』より

ケイト・モートンの作品

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