ホワイトコテージの殺人 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488210076

作品紹介・あらすじ

秋の夕方、小さな村をドライブしていたジェリーは、一人の若い娘に出会った。彼女が住む〈ホワイトコテージ〉まで送って立ち去ろうとしたとき、血相を変えたメイドがコテージから駆けてくる。「殺人よ! 」銃殺された被害者は隣家の主。ジェリーは、ロンドン警視庁の敏腕刑事にして父親のW・Tと捜査を進める……。巨匠の初長編ミステリは、ユーモア・推理・結末の意外性すべてが一級!  本邦初訳作。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリ。
    キャンピオン氏は登場しない非シリーズ作品。
    一応、W・T・チャロナー警部がキャンピオン・シリーズの作品にチラッと登場するらしい。
    『窓辺の老人』の作品リストによると、著者が初めて発表したミステリ作品らしい。1928年刊行。
    文章が読みやすいのは良い点。
    ミステリ的には、結末の意外性はなかなか、謎の解明はアッサリ。
    唐突に終わった印象もあるが、多くの登場人物にとって最善の結末だったように思う。

    これで著者の作品を3冊読み、どの作品もなかなかに好み。
    他の作品も読みたいが入手が難しそうな作品が多いので、なんとか再版をお願いします。

  • うーん...なんか惜しいなぁ。
    光る部分はあるのだが、全体的に見ると中途半端。
    フーダニットとしてはアンフェアだし、サスペンスというわけでもない。
    犯人の意外性に懸けているのかもしれないが、この時代に読むとあまり驚けない。
    机の上に置いて銃を撃った、ということを知った時点で疑ってしまっていた。
    ただ、この作品はクイーンの某作よりも4年前に書かれているものであり、当時はかなり驚かれただろう。

    導入、犯人の明かし方などは王道とは少し違った切り口になっており、何となくお洒落。
    探偵役、ワトソン役のキャラクターも良い。

    作品自体の出来とは関係ないが、この人の訳もとても読みやすい。

  • 1928年発表の英国ミステリと聞いて、人はなにを想像するだろうか?

    紳士は紳士らしく、淑女は淑女らしく、探偵は探偵らしくある世界。
    被害者は被害者として殺されているのであり、
    やたらバラバラにされていたり、
    芸術的に組み合わされ彩られたりしていない世界。

    おっしゃるとおり。

    想像どおり、望みどおりのミステリが、ここにある。

    とにかく、探偵役のW.T.チャロナーがいい。
    〈猟犬グレイハウンド〉とあだ名される、スコットランドヤード屈指の敏腕警部である。

    彼は人の話を聞く名人である。
    『父親めいたやさしさ』『虎視眈々と目を光らせる油断ない男』(61頁)や、『慈愛に満ちた態度』(63頁)などを、相手により瞬時に使いわけ、関係者の心を摑んでしまう。
    それがたとえ敵意たっぷりの頑なな老女であっても、
    『あなたが気に入ったんですよ――正直言って、最初にこの部屋に来たときは、こんな詮索がましい出しゃばり屋にはおめにかかったことがないと思ったものですけどね。・・・・・・」』(55頁)
    しまいにはそう言わしめ、『知ってることをそっくり』話させてしまうのだ。

    進んでその職に就いているわけでもない。
    『「そもそも、わたしは一度もこの仕事を好きだと思ったことはない。他人の私事をほじくり返して一生をすごすとは――はっ!」』( 84頁)
    『「わたしは常々、どこかに種苗場でも持ちたいと思っとるんだよ。」』(85頁)

    とかいいつつやっている。

    しかし、事件解決への執念は人一倍だ。
    『「いいか、ジェリー。われわれの仕事では、決して真実を知ることを恐れてはならんのだ。おまえがいくらこの事件を放り出させたがっても、わたしはプロとしての誇りにかけて、それだけはぜったいにできんぞ。」』(149頁)

    そして、よき父。
    『「あのバカ息子めが!」通りへ続く階段を駆けおりながら、彼は毒づいた。「まったくしょうもないやつだ――ただでさえ、ややこしい状況なに。・・・・・・」』(210頁)

    いい探偵なのに、惜しむらくは、シリーズキャラクターではないということだ。
    なんともったいない!!

    巻末解説によれば、これは作者のミステリ第一作なのだそうだ。
    その時、アリンガム、23才。

    23才!!

    私としては舌を巻くしかないのだが、当人としては課題難点だらけだったのかもしれない。
    それがW.Tがシリーズになり得なかった理由かもしれない。

    くりかえすがもったいない。
    シリーズになっていれば、今頃ドラマシリーズになって、新たなファンもたくさん出来ただろうに。

    作品にまつわるエピソードも懸かれた巻末解説『知られざるアリンガム』も読みごたえがあった。
    そうそうたる顔ぶれのデティクション・クラブについて、また、アリンガムの私生活について。
    読みながら何度「へー!」と声をもらしたかしれない。

    今時の、やたらサイコパスな殺戮に疲れた人に、特におすすめする。

  • マージェリー・アリンガムによる初ミステリ長編である本作を2019年2月に読み終えたのですが、まず思ったことは「タイムリーな時期に読んだものだ」でした。
    (何がタイムリーかというと、某作家の某作を読んだ方ならピンとくるかと。)

    本書の解説を記した森英俊さんによる「世界ミステリ作家事典[本格派篇]」(国書刊行会)の、アリンガムの項でも本作のことが触れられていますが、ある作者の名前を記して(上で挙げた某作家ではない)、その作者の「ある作品」と共通性があると記されています。「ある作品」が何かは記されていませんが、作者名から作品が予想できるので、アリンガムの本作をこれから読まれる方は、この事典であらかじめ調べるのはやめておきましょう。
    (もちろん、「世界ミステリ作家事典」は20年前の出版ですから、この時点ではアリンガムの本作が翻訳出版されるとは、森さんもそれほど思ってはいなかったでしょう。うれしい誤算です。)

    前置きが長くなりましたが、本作は全体的に初々しいながらもトリッキーな一作です。その後のアリンガムが執筆することになる、キャンピオン氏が活躍するミステリ長編に比べれば、作品に強く惹きつけられるようなことはなかったのですが、登場人物も魅力的でした。

    アリンガムの作品を初めて読まれるなら、今なら同じ創元推理文庫から出ている短編集「キャンピオン氏の事件簿 Ⅰ〜Ⅲ」がお薦めですが、本書も手に取りやすいかもしれません。それらを読んで満足したら、アリンガムの他の長編もぜひ読んでみて下さい。

  • イギリスの作家「マージェリー・アリンガム」の長篇ミステリ作品『ホワイトコテージの殺人(原題:The White Cottage Mystery)』を読みました。
    「ジェフリー・アーチャー」に続き、イギリスの作家の作品です。

    -----story-------------
    1920年代初頭の秋の夕方。
    ケント州の小さな村をドライブしていた「ジェリー」は、美しい娘に出会った。
    彼女を住居の〈白亜荘(ホワイトコテージ)〉まで送ったとき、メイドが駆け寄ってくる。
    「殺人よ!」 「ジェリー」は、スコットランドヤードの敏腕警部である父親の「W・T」と捜査をするが……。
    英国本格の巨匠の初長編ミステリにして、本邦初訳作。
    ユーモア・推理・結末の意外性──そのすべてが第一級! 
    解説=「森英俊」
    -----------------------

    1928年(昭和3年)に発表された作品、、、

    「マージェリー・アリンガム」の作品は初めて… 「アガサ・クリスティ」等と並びイギリスの四大女性推理作家のひとりと称されているとのことで期待して読みました。


    スコットランドヤードの犯罪捜査部主任警部「W・T・チャロナー」を父に持つ青年「ジェリー・チャロナー」が、踵にまめをこしらえてしまった娘「ノーラ・フィリス・ベイリス」とケント州の小村ブランデスドンで偶然出会い、娘を車に乗せ、愛らしい白塗りの邸〈白亜荘(ホワイトコテージ)〉へと送っていったあと、突如、散弾銃の銃声が響き、ほどなくして、メイドらしき服装の少女が真っ青な怯え切った表情で、声をかぎりにヒステリックに悲鳴をあげながら駆け寄ってきた、、、

    「ジェリー」からの電話に応えて<猟犬(グレイハウンド)>こと「W・T・チャロナー主任警部」が現地に到着し、息子の「ジェリー」をアシスタントに、事件の捜査に着手する… 〈白亜荘(ホワイトコテージ)〉で殺されていたのは、悪魔のような男と嫌われていた隣家〈砂丘邸〉の主「エリック・クラウザー」で、〈白亜荘(ホワイトコテージ)〉の住人や使用人、〈砂丘邸〉の同居人等に動機や機会があり、だれが犯人であってもおかしくない状況だが、誰一人として真犯人たる証拠が見つからない。

    そして、物語の舞台はケント州の小さな村から、フランスの首都パリ、南フランスのリゾート地マントンへと移り、各地での関係者への事情聴取から徐々に事実が明らかになっていく……。


    280ページ程度で長篇にしては短めで、翻訳も良かったのか読みやすかったので、一気に読めちゃいました… 面白かった、、、

    迷宮入りかと思われた真相も、最後の最後に明らかになり、とても意外なもので愉しめましたね… 機会があれば「マージェリー・アリンガム」の他の作品も読んでみたいですね。


    以下、主な登場人物です。

    「W・T・チャロナー」
     スコットランドヤードの犯罪捜査部主任警部

    「ジェリー・チャロナー」
     W・Tの息子

    「ロジャー・ウィリアム・クリステンセン」
     〈白亜荘(ホワイトコテージ)〉の主

    「エヴァ・グレース・クリステンセン」
     ロジャーの妻

    「ジョーン・アリス・クリステンセン」
     ロジャーとグレースの娘

    「ノーラ・フィリス・ベイリス」
     グレースの妹

    「エスター・フィリップス」
     ジョーンの子守

    「キャスリーン・グッディ」
     部屋付きのメイド

    「イヴリン・ケイヴ」
     スコットランドヤードの検死医

    「O・H・デッドウッド」
     スコットランドヤードの警部

    「エリック・クラウザー」
     <砂丘邸>の主

    「クラリー・ゲイル(ウィリアム・ド・レイシー)」
     クラウザーの近侍

    「ラッテ・チェリーニ」
     <砂丘邸>の滞在者

    「ルネ・ルグリ」
     仏警察の情報部員

    「モーリス・バルテ」
     ルグリの秘書

    「ジャック・グレイ」
     クラウザーの被後見人

  • 2022/4/16購入

  • なかなか良かった。普通のミステリなのかと思ったけど、今までの感じとちょっと雰囲気が違う。なんだろう、この、設定なんかはよくある感じなのに、さっぱりしてるというのか、はたまたふんわりしてるというのか、ごりごり、事件、謎解き、ヒント、警察、みたいな、決まっている要素を並べるだけでない、独特の雰囲気。汗臭くないのよ。だからといって人間臭い訳でもなく、ちゃんと憎悪はしっかりあるんだけど。独特だった。結構自分は好きだな。

  • ふむふむ、なーるほどねぇ。

  • 古典の評価は難しい。
    ただ話の筋はわかりやすく、ずっと刑事視点なので読者として捜査をしている気分にはなれた。その点を評価して星3つ。

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著者プロフィール

本名マージェリー・ルイーズ・ヤングマン・カーター。1904年、英国ロンドン生まれ。別名マックスウェル・マーチ。文筆家の家系に育ち、16歳で長編小説を書き上げる早熟の天才ぶりを見せ、1923年に冒険小説"Blackerchief Dick"を発表、27年には犯人当ての長編ミステリ「ホワイトコテージの殺人」を新聞連載している。"The Crime at Black Dudley"(29)に端役で登場したアルバート・キャンピオンは"Look to the Lady" (30)以降の作品でシリーズ探偵となる。映画化された「霧の中の虎」(52)や英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞の次点長編「殺人者の街角」(58)など、数多くの長短編が書かれた。66年、シリーズ19作目の長編"Cargo of Eagles"を執筆中に死去。同作は夫フィリップ・ヤングマン・カーターによって補筆・完成された。

「2023年 『ファラデー家の殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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