修道女フィデルマの探求 (修道女フィデルマ短編集) (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488218171

感想・レビュー・書評

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  • 修道女フィデルマ・シリーズ短編集第3弾です。解説によるとイギリスで出版された15編の短編集を日本で5編づつに分けて短編集にしたとのことですが、本書の場合でいくと、4編目から「法廷弁護士」の肩書に加えて「王妹」という肩書が突如加えられたので、執筆時期は少し離れているように思われます。
    相変わらずどの作品も古代アイルランドの風俗が細かく再現されていて、その世界観に大いに魅せられます。
    陰惨な殺人現場に修道院の男女交際を絡める『ゲルトルーディンスの聖なる血』、権力者への諂いが上手く周囲から嫌われていた被害者を殺した真犯人探しと女の欲望の深さを描いた『汚れた光輪』、迫る嵐を前に孤島の中の僧院で発生した殺人事件と消えた修道士たちという謎が謎を呼ぶミステリー舞台のお約束を取り上げた『不吉なる僧院』、宝物窃盗と修道士の自殺という筋書きに不審を抱いたフィデルマのアリバイ崩しを描いた『道に惑いて』、大学の側面を持つ大修道院でサクソン人王国との抗争を背景に発生した密室殺人事件の謎に迫る『ウルフスタンへの頌歌』と、様々なミステリーのパターンを短編ならではのテンポのよい展開で楽しめる短編集でした。
    ただ短編ゆえか、都合の良すぎる展開はまあ許せるとしても(笑)、『汚れた光輪』のそもそもフィデルマを招聘する気になった理由や、『不吉なる僧院』の事件背景がわからないわけがないという話の逆転など、ちょっと辻褄の合わない論理展開がところどころ散見されるのが気になるところですが、そのあたりはご愛嬌でスルーしてあげましょう。(笑)
    ミステリーと古代アイルランド風俗の融合の中で、魅力的な女弁護士が謎を解くという、ぞくぞくした舞台設定が素晴らしいシリーズですので、今後も次々と続編が出ることを期待します。

  • シリーズも8冊目になりました。
    美女フィデルマがつぎつぎに事件を解決します。
    いつも水準を行く作品なので、今回も楽しめました。

    フィデルマは7世紀アイルランドの修道女で、まだ20代半ばの快活な赤毛の美女。
    ドーリィーという法廷弁護士でもあり、しかも上位のアンルーという資格も持つ。
    若い尼さんと軽く見る相手も、これを知ると渋々礼儀正しくなり、さらにバリバリ謎解きされて、ははーっとおそれいることになるのです(笑)
    修道院で事件があると捜査のために派遣されたり、たまたま訪れていた先で一人で事件を解決しちゃうことも。

    修道院内部の事件が一番多いため、続けて読むと、修道院は悪と危険の巣窟みたいな気になってくるのが、ちょっとナンですけど~(苦笑)
    この短編集は、最初は出先での事件いくつか。
    最後に旧知の間柄で良き理解者の修道士が出てくる中篇で、あたたかみのある展開になります。

    フィデルマはモアン王国の王家の出で、先王の姪であり、さらに途中からは兄が王位についているというバックがあります。
    これは作品によっては、自分から言う必要もないことだから?出てこないのですが。
    アイルランドは五王国の時代。
    古代アイルランドでは、女性に男性とほぼ同等の教育の機会があり、弁護士として活躍することもできたというのが作者は誇らしそうです。

    うら若い王家の美女がなぜ修道女なのか?というのが最初は疑問でしたが、頭のいい女性が勉学を極める道として不思議ではないよう。
    当時の修道女は、男女がともに住む修道院で結婚生活を送ることも出来た!というのもポイントですね。
    今回はエイダルフ修道士が出てこないので、フィデルマの恋愛方面は進展ありませんけど。

    フィデルマのシリーズは、最初の2冊が最近になって翻訳されました。
    原作の発表順から行くと~        ↓()内は翻訳発行
    「死をもちて赦されん」  1994年9月  (2011年3月)
    「サクソンの司教冠」   1995年1月  (2012年3月)

    「幼き子らよ、我がもとへ」1995年10月 (2007年9月)
    「蛇、もっとも禍し」    1996年7月   (2009年11月)
    「蜘蛛の巣」        1997年4月   (2006年10月)
    日本ではこの「蜘蛛の巣」が最初に翻訳されました。
    この後、3作出てますが翻訳はこれから。

    2000年3月発行の短編集を、日本では3冊に分けて発行してあります。
    「修道女フィデルマの叡智」        (2009年6月)
    「修道女フィデルマの洞察」        (2010年6月)
    「修道女フィデルマの探求」        (2012年12月)つまりこの本です。
    作品はWikiでみると21冊もあり~順調に出ているようなので、続きも楽しみです☆

  • 短編集第三弾。
    あまり馴染みのなかった古代アイルランドの文化にも慣れてきた。

    「汚れた光輪」
    ブラザー・モナハという好青年が何者かによって殺害される。
    彼が所属していた修道院の院長は高く評価していたが、どうも周囲の人間たちとはその評価に乖離があるようだ。
    彼に恨みを持つものは多くいるようだが、一体誰が?
    スタンダードな謎解きが楽しめる。

    「不吉なる僧院」
    修道士だけが暮らす孤島での殺人事件。
    凄惨な遺体がそこかしこに…。
    いわゆる密室殺人の類型。
    修道士たちが抱えていた秘密がこの事件の発端のようだ。
    私は完全に犯人を読み違えた。
    清らかな思いはそれを種として悪に乗っ取られることもある。

  • 今回は相棒のエイダルフ修道士は出ていなくてフィデルマだけです。短編集です。中世アイルランドの話です。アイルランドの人々の生活や街の様子などがあまり分からないはずなのに、本を読んでいて不自由はしません。いつ読んでも、世の中の人は住んでいる場所や時代や立場が変わっても同じような事をしているんだ、と思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      八木美穂子の表紙イラストに惹かれていたので、ブクログのレヴューを読み、読もうと決心して何冊か買い積読中(原著の発行順にしようか、それとも邦訳...
      八木美穂子の表紙イラストに惹かれていたので、ブクログのレヴューを読み、読もうと決心して何冊か買い積読中(原著の発行順にしようか、それとも邦訳の発行順にしようか迷っています)。。。
      2013/02/25
  • ミステリ。短編集。
    シリーズ短編の3冊目。
    どの作品も面白いが、特に「不吉なる僧院」が好み。
    この短編を読んで連想したのは、梓崎優『叫びと祈り』。
    全く馴染みのない舞台を活かした動機が楽しめた。
    全ての作品が動機に重きを置いている訳ではないが(むしろありきたりな動機が多い)、7世紀のアイルランドという特殊な舞台設定がシリーズの面白さの根幹になっているように思う。

  • 修道女で古代アイルランドの法廷弁護士でもある、フィデルマの活躍を描く短編集、三冊目。
    当時のアイルランド風習や、近隣諸国の情勢も垣間見られ、ストーリーとともに学べるシリーズですね。
    既に本国は新たな短編集を刊行されており、日本でも翻訳出版が予定されているそうです。
    我らがフィデルマの活躍、まだまだ楽しめそうですね。

  • 今回も女性蔑視する頭まで筋肉な傲慢男性たちを相手に、大活躍のフィデルマでございました。
    2004年に刊行の短編集も5話ずつ三分冊で翻訳されるようです。楽しみ!

  • 王女にして上級弁護士のツンデレ(!)赤毛美女フィデルマの活躍を描く最新短編集。
    短編だけあって話に深みがなく、いささか強引すぎる推理だとか、あっという間に解決しすぎだ、とかの小さな(笑)不満はあるものの、明快にして合理的な彼女の推理は健在です。

  • 法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ修道女フィデルマが難事件を解決するシリーズ短編集第3弾。
    7世紀アイルランドが舞台というのがこのシリーズの大きな魅力だが、今回は修道院の学問所でサクソンの王子が殺害されたという事件もあり、当時のアイルランド以外の国々の習俗、考え方の違いも描かれていて面白かった。
    ベストは孤島の修道院を訪ねたら死者と重傷者の他は消え失せていたという「不吉なる僧院」。

  • 〈修道女フィデルマシリーズ〉の短編集3作目。


    自分以外の男と駆け落ちしようとする片想いの女を機に縛りつけてメッタ刺しにするストーカーじみた殺人犯や、絶海の孤島で少年たちに苦行のサドマゾヒズムを教えこんで洗脳する修道士など、前二作よりエグめの事件が多いけど、フィデルマはあくまでもさらりと推理。
    「汚れた光輪」はてっきり院長と被害者がデキてるものかと。一番面白かったのは、ブリトン人・サクソン人・ケルト人が入り乱れ、それぞれがローマ派・ケルト派に分かれるなかで、サクソンの王子を殺した犯人を突き詰めていく「ウルフスタンへの頌歌」。これから長篇に向かうにあたって、ケルト派のフィデルマとローマ派でサクソン人のエイダルフの立場の違いをこの短篇で確認できたのは良かった。

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