翳深き谷 下 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
3.93
  • (4)
  • (19)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 108
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488218195

作品紹介・あらすじ

砦に滞在していたローマ派の修道士が殺され、第一発見者のフィデルマは容疑者として拘束されてしまう。頼れるのはエイダルフと自らの機知のみ。この窮地を如何に脱するのか?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 修道女フィデルマのシリーズ、長編6作目、後半。
    7世紀アイルランドでは、独特な法律があり、女性がかなり活躍していたという。
    そういう史実を踏まえて、もともと学者の作家がヒロインを誇らしげに活躍させています。

    ただの若い尼さんではなく、学問好きで修道院で深く学び、高位の資格を持つ弁護士という。
    しかも、王の妹という血筋と立場まであり、いよいよというときには水戸黄門の如く持ち出せる。
    スーパーウーマン過ぎるみたいですが、いっそそれが潔く、かつまた未開の地では必ずしも全てがプラスに働くわけではない‥!?

    今回は相棒のエイダルフがだめだめなところから逆転、智恵を働かせてフィデルマを救います。
    当時は聖職者でも結婚を禁じられてはいない、男女が共に暮らして子を育てる修道院さえあったという。
    とはいえ、司教などは独身が好ましいとも思われていた。
    そのへんの微妙さがあって、フィデルマがエイダルフに独身主義かと思っていたとチラッと言う場面もあり、ほほぉ~ツンデレの彼女としては精いっぱいの、ほのめかし?(笑)

    前半のいろいろな描写も、伏線がするすると謎解きされていくので、当時の雰囲気を出しただけじゃなかったとわかります。
    面白く読めました☆

  • 「蜘蛛の巣」から引き続き、情けないところを見せっぱなしになってしまっていたエイダルフの面目躍如。(※名誉挽回では、気の毒な気がするので。(。。;)) フィデルマの窮地に、彼女の証言への弁護も添えて、彼女を拘束から解放することに成功していました。しかし、思えば、これまでよく、死体の発見者になっても殺人の疑いをかけられずにいたものだったな、とも。フィデルマちゃん、エイダルフがいるからって無茶もほどほどにね。(^^;)
    最後の謎解きでは、いつもちゃんと事前に記述されていた情報が繋がってくるのが心地よいですね。

  • これ、シリーズの長編の中では一番おもしろい!
    フィデルマが犯人と疑われ、拘束されるピンチ。それを救うエイダルフのかっこよさ。最後のフィデルマの謎解きも明快。

  • 久しぶりにフィデルマワールドを楽しみました。
    今回のフィデルマは、兄王の命によりモアン王国の秘境グレン・ゲイシュへエイダルフと共に旅をする。その秘境の族長から、キリスト教の教会と学問所の設立のための折衝をするためである。

    舞台は7世紀のアイルランド。日本ではと言うと、大化の改新が645年ですよね。この時代にアイルランドの体系化された法律が、現在の話かと思うほどすごいものです。いつ読んでも驚かされます。

    話もフィデルマ自身が殺人事件の容疑者になったりで、盛りだくさんです。エイダルフが頼れるのか?とかなり不安もありますが・・・・

  • フィデルマをホームズとすると、パートナーの修道士エイダルフはワトソン役ですが、相変わらずのヘタレ具合がいいです(笑)

    読み物としては非常に読みやすく(馴染みの無い人物名や小難しい歴史背景説明は読み飛ばしてOK!)主人公が監禁されても、聡明な知識を武器にすぐ出てきてしまうので、まったく安心です。
    (容疑者の双子の兄弟が真犯人という、ミステリとしてはある意味禁じ手なオチだったりするのはアレですが)

  • 八木美穂子の表紙イラストも楽しみ

    東京創元社のPR
    「砦に滞在していたローマ派の修道士が殺され、第一発見者のフィデルマは容疑者として拘束されてしまう。頼れるのはエイダルフと自らの機知のみ。この窮地を如何に脱するのか?」

  • 二転三転として、面白い展開でした。
    宗教の背景をもっと理解できたら、といつも思います。

  • 666年、アイルランド・モアン王国南部にあるキリスト教の届かぬ土地〈禁忌の谷〉グレン・ゲイシュに派遣されたフィデルマとエイダルフ。二人を待ち受けていたのは三十三人の死体で作られた生け贄の円陣だった。いにしえの神々を祀るグレン・ゲイシュのドルイドが挑んできた宗教論争を罠だと感じたフィデルマの予想通り、同じく派遣されて谷へやってきたローマ派の修道士が何者かに殺害される。第一発見者のフィデルマは容疑者として捕らえられ、エイダルフが弁護人を務めることに。エイダルフはフィデルマを救えるのか、そしてこの谷に呼び出された真の目的はなんなのか。〈修道女フィデルマシリーズ〉長篇邦訳第6作目。


    時系列的には「蜘蛛の巣」の直後。アラグリンが田舎の村社会という表層イメージを崩さない秘密を積み重ねたていたのに対し、グレン・ゲイシュは〈異教のはびこる旧態の辺境〉という中央からの偏見を利用して自らの意思を達成しようとする、したたかなマイノリティの共同体として描かれる。
    フィデルマを宗教論争に引きずり込もうとするドルイドのムルガルは博識で蔵書も多く、聖パトリック伝に記された初期キリスト教の暴力性を指摘する。討論の場でローマ派のソリンに対してムルガルが放った「あなた方のその宗教は、貧しき者はいつまでもその貧しさの中に生き続け、自らは彼らの惨めさの中で、さらに豊かになり、いっそう肥え太ろうと望む暴君によって、考えだされたものに違いない」という一撃は、その後のローマ・カトリックの姿を予言しているかのようだ。
    上巻はこのグレン・ゲイシュという土地の異質さが緊張感を持って描かれる。冒頭でだされる三十三人分の死体はインパクトだけ大きくてなかなか進展がない。その代わり、「薔薇の名前」をも連想させるムルガルの長広舌が楽しませてくれる。
    下巻に入ってやっとソリンが殺され、フィデルマが容疑者として囚われると、遂にエイダルフが付け焼き刃のブレホン知識でにわか弁護士として活躍!上巻ではひよっこ修道士からロクに情報を引き出せずに飲みすぎて二日酔いで寝込む情けなさだったエイダルフに見せ場があって本当に良かった(笑)。
    ラズラとオーラの見間違いはトリックでもないし、薬師と世話係の関係も早々にわかってしまうのだが、本作はミステリーというより政治的な陰謀劇としてそのダイナミズムを楽しんだ。ドルイドとクリスチャンの立場が逆転したかのようなフィデルマ・エイダルフ・ムルガルの会話で終わるラストも力が抜けていてよい。

  • 凄惨なシーンで始まったが、幕切れはそういうことだったか、と少しあっけない?かな?
    でも物足りなさは感じられない、相変わらずの凝った筋立て。
    色々と出来すぎなフィデルマだけど、周囲のにいつもクセの強い人物が配置されるので、人間関係と事件の謎と歴史設定と、楽しめる要素が豊富なのが嬉しいシリーズ。
    司法モノが好きな人にも楽しめると思うぞ。

  • 今回は真相がさっぱり分からなくて本当にハラハラした……。フィデルマが捕らえられてしまった時のエイダルフ、大活躍だったなあ。頑張った!
    ムルガルは上巻の時はあまり好きではなかったんだけど、彼は最後まで『ブレホン』だったんだな。嫌いじゃない。

全12件中 1 - 10件を表示

ピーター・トレメインの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×