ロザムンドの死の迷宮 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488222055

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーとしての面白さのみならず人物のキャラクター造形も秀逸。映画「冬のライオン」を思い出す、ヘンリーとエレアノールの会話。

  • 12世紀のイングランドが舞台の歴史ミステリ。
    これは第2作で、独立した物語ではあるが第1作での人間関係が反映されているので、順番に読むべきだったかもしれないとちょっと後悔。
    シチリア出身の女医アデリアが主人公で、その検死の力と論理的思考で事件を解決するのだが、イングランドでは魔女と思われないように召使いに医者のふりをさせて自分はその通訳兼助手として振る舞っている。
    国王ヘンリー2世の愛妾が毒殺され、時を同じくして軟禁されていた王妃が逃亡した。内戦を防ぐために愛妾殺害の調査に出かけたアデリア一行だが…
    ミステリでもあるが半分以上冒険小説といってもいいかも。危機また危機といった綱渡りのような状態が続き、強烈なキャラクターの力もあってまったく退屈を感じさせない。何よりこれほど古い時代のイングランドが舞台のミステリは初めて読んだので、時代背景だけでも楽しめた。
    作者の急逝でシリーズが4作で終わりなのが残念。3作目と4作目は翻訳されるのだろうか。

  • 国王ヘンリーの愛妾ロザムンドが迷路に囲まれた塔の中で毒を盛られた。
    最大の容疑者は王妃。
    国全体に及ぶ戦乱を前に、女医アデリアが真相を探る。

    前作から時は流れて、アデリアは今や一時の母となっている。
    それによって人の見方が変わったり、弱さを併せ持つようになったりの変化が見て取れる。
    彼女の脇を固めるのは前作でも御馴染みの面々。召使で時にアデリアに代わって医師のふりをするマンスール、子守のギルサ、アデリアの娘の父親であるロウリー。
    この脇役たちのおかげで前作と同じ雰囲気を纏いつつ話は進む。
    現代とは違う風習やしきたり、身分制度など読んで興味深いところは多い。それが話と巧く絡み合い、独特の世界を作っている。
    ミステリ+冒険という配合は相変わらず絶妙で、最後まで面白く読んだ。
    ヘンリー王の人物造詣も、最後の王妃とのやり取りも楽しかった。

  • 長い物語だった・・・。本当はもっと早く読み終える予定だったのだが。
    この長い物語は、殺し屋がその仕事の依頼を受ける場面で幕を開ける。誰が誰の死を望んでいるのかは明らかではない。

    第一弾「エルサレムから来た悪魔」で検死官として勇敢な働きを見せたアデリアは、娘を授かり母としての喜びを感じながら、ギルサやマンスールとともに平穏な日々を過ごしていた。
    イングランド王ヘンリー二世はアデリアを故郷に帰らせることは許さなかった。彼女の優秀な頭脳を役立てたいときのためにイングランドにとどまらせていたのだ。そして、そのときはやってきた。ヘンリー二世の愛人が毒殺されたのだ。その調査をアデリアに命じた。
    幼子を抱えたアデリアは再び冒険の日々に身を置くことを好まなかったが、王の命令は絶対だ。仕方なく従うことに。
    イングランドの冬の厳しさがひしひしと伝わってくる。人も空気も音も何もかも凍らせてしまうような寒さ。それがアデリアの冒険を更に危険なものにしていく。そうして司教となったロウリーもまた命の危険に身を投じる。

    今回は「検死官」としてのアデリアは特に活躍していない。「探偵」としての活躍はほどほどにあった。前回同様に冒険ミステリの色がかなり濃い。12世紀イングランドの歴史に詳しければ、もっと楽しむことができるのだろうな・・・。登場人物のキャラクターに魅力があるので、こういう冒険ものもたまにはいいかと思うが、やはり私は冒険より推理がメインのミステリが好きだと改めて感じる。アデリアと同じように次々と襲ってくる危機に疲れてしまうのだ。一難去ってまた一難。その連続。

    冒頭に登場した殺し屋は意外なところから再登場する。そのときにもう一度最初から読み返したいという欲求にかられたということは、この物語もやはり「謎解きミステリ」だったのか。これは再読して伏線がどんな風に張られているかを確認してみないとわからない。

    この作品を読むために第一弾「エルサレムから来た悪魔」を読んだのだけれど、この作品から読んでも特に困りはしない。第一弾から読むにこしたことはないが。
    なんだかんだいって、私はこのシリーズが気に入ってしまっている。第一作目前半の医師としてのプライドを持ったアデリアが好きだ。愛する人と出逢い、母となったアデリアも嫌いではないのだが。

    著者アリアナ・フランクリンは今年の一月に亡くなられた。このシリーズも第四弾で終わっているとのこと。アデリアとその娘アリーのこれからを楽しみにしていたのだけれど・・・。残念でならない。
    あと2作。邦訳はまだだろうか。

  • アデリアがママになっていてびっくりした。気になる子の父親との関係は…。
    脇を固めるギルサやマンスールもあいかわらずでうれしい。
    作者はよほど、ヘンリー2世が好きらしい。
    次の作品にも期待。

  • アデリアシリーズ2作目です。
    前作から1年。
    娘が生まれて、アデリアは母親として幸せに暮らしていましたが、
    またもやヘンリー王(ロウリーか?)に引きずり込まれて、
    恐ろしげな事件の渦中にどっぷり。
    医者として女性として際どい立場の自分自身だけでなく、
    今回は娘の安全にも心を砕かねばならず、発狂寸前です。
    なにしろセクハラのオンパレードで、
    現代人の感覚で読んでるとかなりストレスが溜まります。


    息子をそそのかして謀反を企てている王妃エレアノールが容疑者のため、
    あわや再び戦乱の世になるのかという危機感から、
    ロウリーは勿論、アデリアまで駆り出される訳ですが。
    なんだろなぁ〜。
    結局、国民を巻き込んだ国王と王妃の夫婦喧嘩の様な・・・。
    ロザムンドの他、兵士や無実の人たちも沢山殺されたのに。
    王妃は謀反の罪で幽閉されていたので、
    お互い憎み合っているのかと思いきや。
    8人も子を生した夫婦間の馴れ合いのような空気が漂っていました。
    前述の人たちが殺される際の残酷さと比べると異様です。
    政治的判断だの王族・貴族にとって下々の生き死には瑣末事だとか。
    いろいろ理由付けはあるんでしょうが、なんだか釈然としませんでしたよ。


    ミステリーとしては、
    前作同様、アデリアが限られた機会の中で検死(らしきもの)をしながら、
    状況証拠を積み重ねて推理していくのですが、
    本当にハラハラしました。
    どんでん返しもあってよかったです。


    そして、ロザムンドの家政婦デイカーズの執念が怖いっ!
    あと、腐乱した遺体の上にダイブ・・・、脳が想像するのを拒否しました。

  • 12世紀シチリアの女医アデリアがイングランドで活躍するミステリの2作目。

    冒頭に犯人がちらつくのは1作目と同じ。しかし全く予想がつかない展開で、ついつい一気読み。

    前作で恋仲となったのに別の道を進んだアデリアとロウリーの関係も気になる。
    また、お守り(1作目で活躍した犬)亡き後も、また臭い犬が出てきます。あまり役に立たないけど、つねにアデリアについて回るその健気な姿は、酷い事件の中では癒しです。

    とにかく登場人物の個性が前作よりもさらに際立っていて、王妃や王の愛妾ロザムンド、さらにはそれぞれの臣下達、どいつもこいつも興味深い。

    生き生きとして、なんとも賑やかなミステリです。

  • 前作よりも冒険色が濃くなった。
    一番強烈な印象を残してくれたのが、終盤で対面するエレアノールとヘンリー2世の複雑な愛憎。
    謀叛と鎮圧を繰り返す2人のやりとりは心底憎みあってる敵同士というより、互いの首をかけたゲームに慣れきったただの倦怠期の腐れ縁夫婦だった。

    気まぐれに家出した妻の帰りを受け入れるような気軽さで幽閉をほのめかすヘンリーと、夫が決めてある幽閉場所に平然とケチをつけてくるエレアノールに心持っていかれました(*´д`*)

  • 面白かった!最近フィデルマにこってたけど、また違った面白さが..。
    作者が他界してたのでガッカリ。あと二冊はあるみたい。

  • 中世イギリス・ミステリ2冊目。
    アデリアは、女ながらシチリアの大学を出た医者。
    事件の調査のために、シチリア王からイギリスに派遣された。
    当時のイギリスでは女医など考えられず、魔女扱いされる危険が大きいため、サラセン人の召使いの男性を医者として、自分は通訳兼看護師としてふるまっている。

    シチリア帰国をイギリス国王ヘンリーに許されず、一作目に出来た恋人との間の愛娘アリーを一人で育てている。
    頼りになる乳母はいるけどね。
    アリーの父はロウリー司教。結婚はアデリアが断ったのだが、それを受け入れて去っていったことを怒っている女心。
    今回の事件は、国王ヘンリー2世の愛妾ロザムンドの毒殺事件。
    王妃エレアノールは王に幽閉されていたが、脱走。疑われるが、雲隠れしたまま。
    ヘンリーとエレアノールは何人も子をなした仲だが、しだいに険悪に。王妃幽閉の理由は下々にははっきりしていなかった。
    度重なる浮気のうえに麗しのロザムンドと歌われた愛妾のせい?
    ロザムンドの暮らす塔の庭を迷宮にしたというのは…
    ヘンリーは何を考えていたのやら。
    しかし、ロザムンドが太っていたというのは事実??

    子供達は皆、けっきょく母親の味方というのは、ヘンリーに問題もありそうだが、父である前に王だったのか?
    このとき王が激昂すれば、国を二分する戦乱が起きそうな事態に。
    ロウリーからの呼び出しに、複雑な心境のアデリア。

    傑物の王妃エレアノールが登場。華やかで楽しめます。
    質素な暮らしをするアデリアからすれば、他国の王妃には違和感もあるのだが、次第に特異さも認めていく。
    作者はヘンリーの大ファンのよう。
    急逝が惜しまれます。
    まだ続きが2冊あるのは、翻訳して貰えそう?!

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