領主館の花嫁たち (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488262044

作品紹介・あらすじ

1840年の春、イングランドの外れにある領主館。当主の妻が死去し、悲しみに沈む館を訪れた女家庭教師テティも、また癒しがたい傷を負っていた。しかしテティは、愛らしい双子の姉妹に心を奪われ、徐々に生きる希望を取り戻していく。だが領主館に頻発する怪異が、彼女の運命を翻弄していく……。巨匠ブランドがもてる技巧のすべてをつぎ込んで紡ぎあげる、予測不能、美麗にして凄絶なゴシック小説。巨匠の最後の長編、遂に文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • なんと見事なゴシックホラー。いや、話はぜんぜん怖くないよ? 一族代々の花嫁が不幸に死すという呪いに、領主館の双子姉妹は抗おうとするが…というだけの筋書き。でもそれだけの話をここまで読ませるのは、田舎の忠実な召使いから不細工だがセンスがいいばばマダムまで人間味あふれるキャラ造形、少しずつ謎を明かしていくストーリーテリングの妙、そして自然・服飾・内装らを自在に豊かに描いて本編の主役たる「アバダール館」を体験させてくれる描写の腕ですなー。なんかそのへんがイマイチだと、映画『クリムゾン・ピーク』みたいにトンチンカンになるのよね。
    そして私がゴシックに求める肝心な一点が、しっかりと核にある。霊や運命のせいにするも暴き出される人間の心の醜さなー。いつだっていちばん怖いのは人間。華麗なお屋敷を舞台にそれを描くのがゴシックホラーだよな。『ねじの回転』とか「リオノーラの肖像』とか。
    いや、本物の読書家の友人に「それとあれとこれが好きならクリスチアナ・ブランドお好きですよ」と勧められて読んだわけですが、当たりだったわ、ありがとー。

  • なんとも釈然としねぇー話だよなぁー、というか、ストレスの溜まる話だなぁ…、というか。
    とにっかく留飲の下がらない話!w

    別にハッピーエンドじゃなくてもいい。悲劇なら悲劇でいいのだ。
    だって、ホラーだもん。ホラーは悲劇があるからこそ怖さが増す。
    でも、この話に出てくるのは、主要登場人物から幽霊まで全員喜劇だ(爆)
    それこそ、幽霊(レノーラ)がクリスティーンに欺かれていたこと知る場面だ。
    “しばしひたとクリスティーンを見つめ返したあと、レノーラが言った。「わたしたちを騙したの?」”って、何なんだよ?幽霊が驚いてどうするんだよ。幽霊は驚かすのが仕事だろ!と思わず噴いてしまったw

    さらに言えば、これはゴシックロマンでもない。
    ま、ロマンはロマンなのかもしれないが。ゴシックの方は、ゴシックというより、むしろポップ???
    と言っても、ゴシックの対義語って、ポップでいいのか?(明朝体では絶対ない!w)。
    ていうか、ゴシック、ゴシックと言うけど、そもそもゴシックって具体的にどういうものなんだっけ?

    そんな文句ばかり書いたからといって面白くないかというと、決してそうではないのが面白いところで。
    考えてみれば幽霊屋敷モノの話というのは、最後に屋敷が火事で焼け落ちるか、登場人物が全員死んじゃって残った屋敷に新たな人が引っ越してきて終わるわけだ。
    それ以外の結末となると、ホラーというよりファンタジーになってしまうわけで、そこを崩さず幽霊屋敷ものとして何か目新しいことは?ということで、こういう展開を思いついた……
    のかもしれない(笑)

    つまりだ。
    それが楽だからって、いつも自分に「いい人」を強いていると、いつかそれがとんでもない形で爆発しちゃうよと、まるで私たち日本人に言われているようで、そういう風に読んでも面白いんじゃないかと(解説によれば、著者は親日家だったらしい)。

    そう、双子の妹、リネスは確かに身勝手で不実で嫌ぁ~な女なのだw
    でも、だからこそ一番人間らしいとも言えるわけで(笑)
    こう言っちゃなんだが、そこそこ裕福な貴族の生まれで、おそらく挫折らしい挫折も味わっていないローレンスのような若者にとっては、誠実で安心だけが取り柄のクリスティーンなんてどんクサいだけで。リネスのような適度なストレスがある女性の方が刺激的で魅力的なのだろう。
    だから、クリスティーンからリネスに乗り換えたからって、ローレンスが特別不誠実というわけではないと思う。
    幽霊の世界ではどうか知らないが、人間の世界では、恋には失恋がつきもの、結婚には離婚はつきもの。何より、愛とは移ろいやすいものなのだ(書いていて恥ずかしくなってきたがw)。
    それらが終わってしまったら仕方ないとあきらめて、すぐその代わりを見つける。その“不実さ”こそが人間が幽霊なんて“物”より優れているところなのだ(笑)

    ていうか、そこ!
    そもそも、リチャードが「イザベーラなんていうどーしようもない不実な女w、さっさと忘れて別のもっといい相手を探そ」と切り替えていればこんな呪いなんて発生しなかったわけだ。
    レノーラだって、そうだ。先王が生きていたら閨に連れ込まれたろうという容姿なんだから、そんな中二病のバカ弟wにかまってないでいい男を捕まることに熱中していれば……w
    人間には、ポジティブな不実さこそ必要!
    それがこの話で作者が一番言いたかったことなんじゃないだろうか?(って、本当かよ!?w)

    最初に、釈然としない話、ストレスの溜まる話と書いたんだけど、なんで釈然としないのか?ストレスが溜まるのか?
    たぶん、根本にあるのは、読者の好感度No.1であろうクリスティーンがあまりに報われない結末だからだろうと思う。
    でも、じゃぁどういう展開だったら留飲が下がるのか?
    幽霊たちが身勝手なリネスをとり殺すことで(クリスティーンの場合のように)消滅してしまったらよかったのか?
    それとも、怨霊と化したクリスティーンが身勝手なリネスとその娘、さらいに自分(たち)をそう育てたテティとヒル、4人を祟り殺してしまえばよかったのか?
    もしくは、クリスティーンの幽霊にリネスが謝り、改心して。それからはローレンスと幸せに暮らしましたというハッピーエンドになればよかったのか?
    というか、クリスティーンの健気な行動を見て、幽霊たちの呪いが溶けてしまえばよかったのか?

    確かに、そういう結末なら納得できるし、留飲も下がるだろう。
    でも、それだと駄目なわけだ。だって、それじゃあまりに陳腐だもん。そんな結末の小説、今時誰も読まないと(笑)
    ま、今時といっても、1982年に出た本らしいけどさ。

    そんなわけで、「つくづく納得いかねぇ―なぁ…」なエンディングを迎えるわけだが、とはいえ最後の最後。クリスティーネと思われる娘が出てくるくだり。
    あれがこの話の唯一の救いなのか?
    いやぁ、おそらくそうじゃないようなぁ…。
    だって、娘は「わかってくれるの?この古い、忌まわしい話をそっくり受け入れてくれるの?それでも気持ちは変わらないのね?」って念押しするんだもん。
    そもそもその相手の男の言う「付き添い役の女」って何なんだよ?娘がクリスティーネなら、付き添い役の女じゃなくてお祖母ちゃんじゃん(当然、見た目からしてお婆さんになるはずだ)。
    てことは、その娘はクリスティーネじゃなく別の娘(あ、でも手の傷があるのか)で、そのテティは幽霊。つまり、リチャードとレノーラでもなく、クリスティーンでもない、新たな呪いが始まっているということ!?(ダーステティの誕生!w)
    そうだよなぁー。あんなことがあったら、リネスはともかく、テティとヒルはもはや普通に生きていけないよなぁー。
    新たな呪いを生み出しかねないよなぁー(よい人というのは、つくづく厄介だw) 。

    ……と、そこが曖昧(結末は読者にゆだねるというあれね)というこの手の話の定番のエンディングで、★4つ!
    ★を一つ減らしたのは、主人公がハッキリしないところ。読んでいてイマイチ釈然としないのはそれもあると思う。
    ただ、最後の最後に「テティ」と呼ばれる謎の女性が出てくるところを見ると、主人公はあくまでテティで。結婚した時点で館に心を乗っ取られていたという見方も出来るかと思う。

    最後に一つ。
    仮にこの話が映画化されたら、エンディングテーマはスティービィー・ワンダーの「愛の伝説」がいいと思う(笑)

  • ゴシックロマ 読みやすくて、一気読み 面白かった 

  • クリスティーンがかわいそう

  • 苦手なジャンルのはずやけど、のめり込んでしまった。絶妙。

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著者プロフィール

Christianna Brand

「2007年 『ぶち猫 コックリル警部の事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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