- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488274047
感想・レビュー・書評
-
事件に関係のないおしゃべりばかりする証言者達に、やる気のない検視官や陪審員達の間の抜けた会話が笑えます。
しかし、だらだらしたやりとりに油断していたら、最後にびっくりする展開が待っていました。
構成が巧く、とても楽しかったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
基本、法廷での証言だけで構成される珍しい作品。
最後の返して、返しての流れはザ・古典。クリスティーとかもこんなの多かったなぁ。
登場人物だったり、法廷で繰り広げられるどこか間の抜けたやりとりの中で事件が解きほぐされていく過程がおもしろい。 -
江戸川乱歩が絶賛したという、パーシヴァル・ワイルドの著作である。
ある女流作家の家で起きた殺人事件を、関係者の証言から解決していく、というのが大体の筋である。
法廷小説、ではあると思う。だが、俗に言う法廷小説とは趣を井に剃る部分があると感じた。陪審員が日当を気にしたり、検死官が屍体が増えれば日当も二倍、などと軽口を言う場面などは、「法廷」という場所柄にそぐわぬ喜劇性があるように考える。
そう、一種の喜劇性を持って、この小説は展開して行く。
一見、意味のない証言者の私的な話しや、しょうもない掛け合いなどが続くのを見ると、果たして解決の光明は見えるのか、と心配になってくる。
しかし、それが見当違いということに段々と気付かされてしまう。
そんなところが本書の魅力ではないだろうか。
登場人物も一癖、二癖、三癖もあるような御仁ばかりで、普通に読むだけでも十分面白いと思う。
再読してみたくなる本の一つである。私も近いうちに再読してみようと思う。 -
ミステリといえば、向こうが透けて見えそうに薄い、だけど決して透明なわけではないベールを一枚一枚取り除いていって最後にようやく現れた真相というか真実というか事実というか、まぁそんなものを取り出すものだ、と思う。この本はそうやって取り出してみたら実は二重底になってて、それを取り出したらさらに隠された底があって…という感じでした。
解説ではユーモア・ミステリの側面を取り上げてたけど、そんなにユーモアかなぁ? 構成の素晴らしさの方が目について、ユーモアとは特に思わず。
が、女流作家が、探偵小説の探偵をこきおろしたのは笑ってしまった。モルヒネ中毒者に美食に溺れる巨漢に異国訛りの珍妙な英語を操る男。ホームズとネロ・ウルフとポアロか。この女流作家もクリスティか誰かのカリカチュアみたいなもんですが。
検死官のスローカム閣下は好きです。続編も読んでみよう。 -
リー・スローカム 1950年 コネチカット州
-
構成がおもしろかった上に、結末に大満足!これだけ満足しながら読み進めた作品は久しぶりだった。他の作品もぜひ読みたい。
-
2009/04/04読了
-
通常の展開とは異なるため序盤こそは少し心配だったが、ストーリーが動き出すと、その巧みな筆運びにのせられて一気に引きずり込まれた。スタート時はカードが全部裏返しになっており、事件の詳細は全くわからない。それが、証言や手紙などから一枚また一枚と表を向くことによって、事件の輪郭が徐々に浮かび上がってくるプロセスが非常に面白かった。謎解き自体はいたってシンプル。伏線は見落としがちなので、論理的に犯人像を絞り込むのはやや困難かもしれない。だらだらと審問を続けているように見えて、最後はキリリと引き締めてくれる。程よいサプライズの効いた本格古典の秀作。
-
ユーモアと諧謔とシニカルなノリで占められているし、検死官と陪審員たちとのどこか気の抜けたやり取りが途中で挟まり、面白いけどなんとなく拍子抜けだった。
「古典的名作とはいえ、こんなもんか」みたいな。
しかし、最後の「生きている死者の証言」でこれでもかというほど今までの情報がひっくり返されて、あっけにとられていたら、さらなるどんでん返しが待っていた。
すごい、としか言いようが無い。再読必至。