母の日に死んだ (創元推理文庫 M ノ 4-9)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (699ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488276133

作品紹介・あらすじ

かつて孤児院から子どもを引き取り、里子として育てていたライフェンラート家の邸から、死後数日経過した遺体が発見された。死んでいたのは邸の主人だったが、ピアが現場付近を捜索したところ、事件は一変する。飼い犬のケージ付近の床下から、ラップフィルムにくるまれ死蝋化した三人の遺体が出てきたのだ。30人もの里子の世話に心血を注いでいた男は、恐るべき連続殺人犯だったのか? 〈刑事オリヴァー&ピア・シリーズ〉最新作!

感想・レビュー・書評

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  • 刑事オリヴァー&ピアのシリーズ、9作目。
    ドイツの警察小説です。

    前作でオリヴァーの子供時代からの人間関係に絡む事件が起き、疲れ果てたオリヴァーは制度にある長期休暇を取りました。
    オリヴァーは警察ではリーダーで人柄も見た目もなかなかいい男だが、やや女運が悪く振り回されがち。
    とはいえ、ここへ来て落ち着いたよう(笑)
    ピアは(何年も前になりますが)元夫と別居してこの地で農場を買い、警察の仕事に復帰、今では資格も先輩のオリヴァーと同等の主席警部に。お似合いの相手クリストフと再婚もしています。

    さて、オリヴァーが復帰しての新たな事件。
    とある邸宅の主人が亡くなっているのが見つかった。
    さらに、犬舎の下に死体が埋められていたことが発覚。思わぬ大事件に発展します。
    かって主人夫妻は多くの孤児を預かっており、虐待の噂もあったが真相はわかっていなかった。捜査していくと、関係者に複数の行方不明者がいることが判明します。
    それは5月、母の日の頃に起きていた…

    ピアの妹のキムもまだ登場していて、意外に不安定な面も見せたりして、当初の予想より役割が重要になっていきます。
    ピアの家族というのが長い間よくわからなかったのだが、旧弊な両親は娘たちの職業を今も快く思わっていないことなど、ドイツもそんなに開明的ではないのだねえ。
    疎遠な妹へ抱くピアのコンプレックスや、上手く行かなかった理由とは。

    生き生きと描かれる登場人物たち、数多い人たちが社会をなしている様子、現代の様々な問題を取り上げつつ、この特別な悲劇を解き明かしていく筆力はさすがです。
    そして、真相に近づくにつれ、思わぬ出会いも…
    今回も、胸に迫る読みごたえがありました。

  •  オリヴァー&ピアのシリーズ第9作目。 前作『森の中に埋めた』でオリヴァーの過去が事件と深い関係があり、疲れ果てて長期休暇サバティカル休暇に入っていた。今回オリヴァーは復帰後初の事件。
     
    あらすじ
     屋敷の主人が死体で発見される。事故死かと思われた。庭にあった飼い犬のケージ下から3人の遺体が出てきた。それらはラップフィルムに包まれていた。屋敷では、かつて里子を何十人も育てていた。夫婦の妻は行方不明になっている。施設では幼児虐待の疑いもあったが公にはならなかった。元里子のうち、今も屋敷とつながりのある人物は何人かいる。また主人夫妻の孫は当時同居していて、今は企業の有力者だ。女性たちが乗っていた車が後日発見されていることから、似たような行方不明の事件を調べると、被害者と思われる女性が何人も出てきた。いずれも5月に行方不明になっている。母の日付近。事件の期間は26年間にも及ぶ可能性がある。オリバー達はプロファイリングの権威、アメリカのハーディングに協力を依頼する。ピアの妹のキムは署長と別れたらしい。ピアとも折り合いが悪い。
     挟まれたエピソード・・・ スイスの女子フィオーナは、母親が亡くなった後、遺品をたどり、離婚した父はゲイで偽装結婚、さらに自分は両親の子供でなく、養子だったと知る。自分のルーツを探るため、違法に闇で自分を斡旋してくれた産婦人科医の元を訪れる。産婦人科医は、自分の友達が望まれない妊娠をしたために養子を斡旋したことを認めた。
     事件の話に戻る。行方不明になった女性たちの共通点、それは幼い子供を捨てたという過去だった。屋敷の井戸から見つかった女主人は、祖父が殺した。孫のフリチョフ・里子の ヨアヒムが後に片付けた。ヨアヒムはフリチョフの友人、現在は空港の it 部門の責任者。キムは若い頃、フリチョフと知り合いだったことがわかる。ダンス教室?か何かで。
     キムが行方不明になった。きっかけは精神科病棟に送られた男だったが、その男はキムのマンションで殺害されていた。なんとキムは若い頃に娘を出産していたのだった。家族の誰も知らないことだった。そしてキムが突然性格が変わったようになった理由もわかる。 捜査の途中、署長はピアに、キムと別れた理由を話す。またキムがピア夫婦と距離を置いた理由も。夫クリストフがピアに言ったことがきっかけ。クリストフは「空騒ぎを止めて自分に自信を持て。そうすれば本当の友人を見つけ、いい関係が築ける。レズビアンのふりをする必要もなくなると。」言った。それはピアも知っていた。
     スイスの女子フィオーナがキムの娘だったのだ。フィオーナは、ドイツ滞在最後に産婦人科医の元を訪れたが、産婦人科医は出張中。夫が対応したがその夫が犯人だった。その夫こそ空港責任者のヨアヒムだった。ヨアヒムの母は 彼を捨て貴族?大金持ち?と結婚。しばらくの間はヨアヒムと連絡を取っていたが、それも途絶えた。ヨアヒムはそのことと、少年時代に地元の女子を湖に沈めたことがきっかけとなり、シリアルキラーになる。産婦人科医と結婚したのも、知り合いだったキムを好きだったため?。キムとフィオーナは監禁されている。勤務先の空港のどこかにいるが、ヨアヒムは逃亡の際、空港のすべてのシステムをハッキングし空港を大混乱に陥らせていた。オリヴァーの知り合いのハッカーの助けもあり空港は何とか落ち着き、ピアたちは犯人を逮捕、二人を助け出せた。

    感想
     最高の面白さ。どんどんテンポよく進むストーリー。登場人物の数も多く、メインの捜査場面の他、スイスのフィオナの場面、犯人の叙述部分、事件関係者の日常場面、などが色々詰め込まれているが、最終的に全て回収されている。フィオナが監禁されて、同じ部屋に女性がいて、それがキムで、母親だとわかった時、「やられたー、ここで点と点がつながるのかー」と思った。ラストでは、犯人が空港を大混乱に陥れ、突然パニック映画みたいに変ったのもおもしろかった。10年以上前からハッキングも計画してたのか、ヨアヒム。用意周到すぎるだろ。これまでのストーリーと全然関係ない、上空を飛んでいる飛行機にまでヒヤヒヤしたよ。前作はオリヴァー、今回はピアの家族にスポットライトが当たった。これまで8作の間でピアとキムが、あまり性格の合わない姉妹だということが書かれていたが、ここに来てやっと理由がわかった。キムの辛い過去が影を落としていたのだ。それにしてもピアは苦労してきた分、今はクリストフがいてよかったなあと思った。クリストフが義理の妹キムに言った言葉は、厳しいけれども親身になったものだったので印象に残った。まだこのシリーズは続くけれども、キムとクリストフはずっと幸せでいて欲しいなと思う。なんにしてもドイツでは2021年に新作が出版されるらしいので、こちらも是非日本で発表されて欲しい。

  • シリーズ中でも群を抜いて面白い。役者も揃った感。

  • 始めの翻訳シリーズからの大ファン。読み続けていてオリヴァーもピアも家族の様に感じるし、今回は特に年齢を重ねた二人を思うと、大切な友達と共にここに至ったと感慨深い。今回はピアがびっくりひっくり返るのが主題。

  • ここ最近のノイハウスの作品は、読み通すのに根性がいりますね。なかなか、全貌が見通せない。いったい何が起こってるんだかよく分からない。最後はそれが全部つながるのが凄い。
    全然作風は違うんだけど、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』とか『絡新婦の理』を思い出した。複雑に入り組んだ人間関係の網の目に絡み取られる感覚。何が起こっているのか分からず眩暈がする感覚。
    そして何より、どんどん分厚くなる。

  • 今回も特濃、大満足の一気読み。
    思いがけず発覚した連続殺人のミッシング・リンク探しが主題だが、過去の未解決事件も含まれるそれだけなら、あるいは興味(読者、登場人物双方の)も薄れるかもしれない。だがそこへ、とびきりの「今」がぶっ込まれる。
    これがかなりの凄技で、もはや読者も登場人物たちも、首までどっぷり事件にはまり込んで逃れることなど敵わない。

    前作「森の中に埋めた」と双璧を成す、シリーズ中期(と予想)の堂々たる二本柱。
    新展開もあり、ここでまた一段ギアチェンジした感がある。今後に大いに期待が持てて、早くも次作が楽しみだ。

    2021/11/9読了

  • 読み応えがあった。登場人物が多くて、把握するのが大変。

    最後の場面は、ドキドキでした。

  •  シリーズ9作目。どんどん厚くなるな。毎年の母の日にひとりずつ女性が惨殺されるというシリアルキラーもの。被害者の共通性を探るうちに浮かび上がる悲しい個人事情。望まぬ妊娠と育児放棄、孤児養育といった社会的問題が根底のテーマになっている。いかなる事情があろうとも、生まれてくる子どもに責任はない。もちろん犯罪は許されることではないが、明かされる結末は悲しく、哀れだ。前作はオリヴァーの子ども時代からの因縁話だったが、本作ではピアの家族の思わぬ過去が大きくからんでいて振り回される。捜査陣の家庭事情などをエピソード的にからめて人間的なふくらみをもたせ、読者の共感を呼ぶつくりのミステリは多いが、あまりにうまくできすぎた状況だと逆に興ざめしてしまう。本作ではキムのからめ方があまりにご都合的で感心しなかった。

  • 7月13日読了。図書館。

  • 読ませるなあ

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