木星の骨 上 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488282172

感想・レビュー・書評

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  • リナ&デッカーのシリーズも11作目。
    お気に入りだったシリーズ、久しぶりに読んでみました☆

    ピーター・デッカーは、ロサンゼルス市警の警部補。
    妻のリナの連れ子2人と幼い娘の3人の子がいる良き父親でもあります。
    相変わらず美しいリナとは仲睦まじいけれど、大きくなってきた義理の息子とは微妙な問題が生じてきます。

    そんなところへ、カルト教団の教祖が殺されたという報が入ります。
    急行するデッカーらは、勝手に行動する教団メンバーに振り回されることに。
    かっての例から、教団の集団自殺、とくに子供達が巻き込まれることを心配します。
    要塞のような建物の中で、世間を知らされずに育っている子供達‥

    リナの最初の夫は正統派のユダヤ教徒で、デッカーとは生活習慣がまったく違いました。
    デッカーも実はユダヤ系だったため、自分のルーツを確かめたい思いと共に、リナとの結婚に合わせて、今はユダヤ教徒として生きています。
    実父に良く似た長男のサミーは、イスラエルへ留学することになっているのですが‥

    男の子達は感じよく育っていて、何年も一緒に暮らしてきた二人を思うデッカーも感じがいい。
    教団の不自然さとは対照的ですが、問題がないというわけではないんですね。
    宗教、信念、教育とは何か?
    生きていくうえでの問題もじわりと浮かび上がります。
    後半はぐっとテンポアップして、怒涛の展開へ。

  • ピーター・デッカー&リナ・ラザラス・シリーズ第11作。

    閉鎖的なカルト教団の教祖の死をめぐり、警察と信者が対立する。教団内の複雑な人間関係も影響して捜査が難航するうちに、次々と事件が起こる。

    今回のテーマのひとつは親子。仕事に忙殺されるピーターが直面する義理の息子たちの悩み、教祖とその娘との確執、教団内で養育されている信者の子どもたち、そしてマージの意外な決断……。親とはどうあるべきか、考えさせられる。

  • 「木星の骨(上下)」
    死亡したのはカルト教団の教祖で元大学教授兼天体物理学者ガンツ、通称ジュピター。事件の知らせにロサンゼルス市警警部補のデッカーが現場へ急行するが、信者達はガンツの死因も分からないうちに遺体を動かし、さらに教団の医者ノヴァは勝手にガンツの死亡診断書を作成する。謎の教団とその信者達の非協力的な態度を相手に捜査は難航し・・・(「上」のあらすじ)


    静と動が見事に融合した「木星の骨」は豊かで清新な読後感を与えてくれました(カッコつけて言うとw)。恐らくこの「木星の骨」の肝はガンツの死です。そのガンツの事件は上巻で起こります、・・・が実際は教団の弟子達(プルート、この男がまあ良い具合に私のイラつきを誘ってくれます、ボブ、ヴィーナス、ノヴァ)の非協力的な態度と警察を侵入者とみなす宗教性で、デッカー達はさほどガンツの死の謎には挑めません。なのでガンツ事件はこの上巻では静です。


    しかし、デッカーは警部補であると同時に妻のリナの連れ子を含む三人の子の父親でもあります。そんなデッカーはガンツ事件と同時進行で家庭内での悩みと向かい合うことになります。実は個人的にはこの家庭内でのデッカーとリナ、デッカーとジェイク、デッカーとサミーの対話とぶつかり合いがこの上巻の最大の良い所で読み応えがある所だと思います。この部分が上巻では動です。このデッカーの父親(義父であることへの思い)と刑事の2つの像が非常に印象的です。


    上巻では比較的に静であった動き出すのが下巻です。下巻はガンツ事件から新たに起こる事件が発生するという展開で非常に動的です。ヴェガという子供の存在、いなくなったと思われたアンドロメダの登場、そしてカリスマを失った教団の衝撃の動きが密接に絡み合い、非常に読み応えがあります。またデッカー達、特にマージとアンドロメダの特攻は丁寧に描写されていて、読みながら非常にはらはらしました。


    下巻で印象的なことは教団内の子供達の存在。彼らは教団内で数学と科学を非常に勉強しており、また教団外の世界を間違った世界だと認識しています。この姿勢は新たな事件が起こり、死が迫っているという状況でも変わりませんでした。ここで強烈に宗教性を感じました。特にヴェガはキー。彼女は勇敢で心の純粋な人間でありながらまだ教団の全てを信じています。そんな彼女をマージが守ろうとし、そして見守ろうとすることには私はとても共感できました。


    総括して、この「木星の骨」の私が思う凄いと感じる点は宗教を上手く取り入れていることです。リナはユダヤ教徒で会話の節々にユダヤの思想が出てきますし、サミーはイスラエルに1年間行く意思をデッカーに伝えます。そしてジュピターの教えも宗教性と科学が入り混じっているものです。これらはほっとくと宗教寄りになってしまうと思うのですが、この作品では事件の本質とデッカーの家庭へと繋がっている要素となっていたので、凄いなと感じました。


    長くなりましたが、感想は面白かった!!ということです。カルト教団での謎の事件を追う刑事デッカーと家庭内で理想の父親を目指し、家族と真摯に向き合おうとするデッカー。この「木星と骨」は家庭物語であり刑事物語であると感じました。この2つが綺麗に影響しあっているからこそ、読んだ後「読んで良かった」と思わせると思います。最後の息子とデッカーの触れ合いは良かったです。


    また、マージとヴェガの交流にも非常に感銘を受けました。刑事としてのマージ、そしてひとりの女性としてのマージがヴェガという世界に心を閉ざしている純粋な少女と向き合うシーンにもぐっときます。

  •  新興宗教の教祖が死亡する。
     他殺か自殺か、混乱する捜査と、混乱する教団。
     デッカー家でも、ティーンエイジャーになった子供たちがそれぞれに悩みを抱えていた。

     教祖が死んだ=教団の暴走、ってなってるので、ちょっとそんなに極端なものなのかと感じたんだが、閉鎖的な教団って強調されてるから、アメリカではそういう図式になってるのかもしれない。
     にしても、物理学者から教祖になった男の論理とか、教義とか、難しかったですよ。
     まぁ。数学が行き着く先は、究極の抽象論で宗教っていうベクトルは、すごくよくかわったけどね。

     リナの息子たちも、それぞれ悩みを抱えてるんだけど…。
     友達で、父親が突然ユダヤの教えに目覚めて、娘を宗教学校に転校させて、っていうのがあって、宗教についてフラットになりきれない、でもそれをきちんと受け止めて行こうとしているケラーマンを感じたりしたのである。

     教えをきっちり守ろうとしているリナも、戒律で縛ろうとしている教団と、方向性は同じなのかもしれない。
     というのを、いや、リナは違うんですよ、というのではなく、それは誰にでも起こりえることであると、デッカーの主観で描きながら客観的にのべようとしている、まぁ、矛盾しているといえばそうなんだけど、それは誠実さであるといえると思う。

     そう。
     ここにあるのは、デッカーたちの誠実さなのだと思う。
     
     にしても、マージの決断には頭が下がりました。
     いやあ、最高に格好いいよ、マージ。

  • 確かに面白いけれど、その幾つかの部分は、読み続けていたからだよなぁ。子供たちとのやりとりも、いつのまにか自分自身同じ立場になってる。まだ現場おさえたことないけれど。それはともかく、第一作を再読したくなる設定でもあるのは確か。

  • デッカー警部補の第十一弾。

    集団生活をしているカルト教団の教祖の死を発端に、
    捜査の手が入るが、
    信者の行方不明、殺人と発展していく。

    閉鎖的ではあるものの、
    平穏に暮らしているように見えた教団が、
    後半で邪悪な集団と一転していくのが唐突すぎた。

    確かにアメリカのように土地がいくらでもあって、
    外の世界から隔絶できる環境があれば、
    陰惨な内情を隠しおおせることは可能だとは思うが、
    読み物としてはつまらない。

    (下巻へ)

  • 久しぶり?のデッカー。初めから読み続けているから読むけれど、これが初の人はとっつきにくいかもしれない。
    上巻は今ひとつ盛り上がり?がないが下巻は・・・?

  • G 2011.11.27-2011.12.9

  • 「BOOK」データベースより
     死亡したのは、カルト教団の教祖にしてかつての大学教授で天体物理学者ジュピター。事件の知らせにデッカーは現場へ急行するが、信者たちは死因もわからないうちに遺体を動かし、教団内の医者は勝手に死亡診断書を作成している。警察を侵害者とみなし、あくまで非協力的な態度をとる信者たち相手に、捜査は難航する。閉鎖的な教団内でなにが起こっているのか?

  • シリーズ11作目。和訳が出てくるのは数年ぶりのような気が。

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