- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488287047
作品紹介・あらすじ
「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」そう宣言しているミステリ作家のシャンクス。しかし実際は、彼はいくつもの謎や事件に遭遇して、推理を披露し見事解決に導いているのだ。取材を受けているときに犯罪の発生を見抜いたり、逮捕された作家仲間のため真相を探ったり、犯人当てイベントで起きた『マルタの鷹』初版本盗難事件に挑んだり、講演を頼まれた大学で殺人事件に巻き込まれたり……。図書館司書の著者が贈る連作短編集!
感想・レビュー・書評
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ミステリー作家が探偵役になるちょっと洒落た感じの連作短編集。主人公の身の回りにあれやこれやの事件が起こるのだが、うーんたくさん起こりすぎだと思いつつ、アメリカだったらこんなものかなとも思ってしまう。作家もパーティーやチャリティーだとか、作家仲間やエージェントとの関りやゴーストライターの問題やら、いろいろ大変そうだなあと他人事ながら心配してしまう。主人公のシャンクスはロマンス作家の奥さんにもいろいろ気を使っていて大変そう。「幸せな結婚生活がこんなに長くつづいている理由のおよそ半分はシャンクスにあったので、『だからいっただろう』などという言葉が口をついて出ることはなかった」という文章があって見につまされる。続編が出ているらしいので楽しみだ。
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さて。これ、大好きなんですが、いわゆる衝撃のどんでん返しとかトリックとか伏線とかテーマとか、そういった一点突破の特長を持つタイプの作品ではないため、固有の面白さを説明するとなると、ややもごもごしてしまうところ。でも個人的にはやはり生涯ベスト級くらいに好きな一冊なので、以下、頑張って言葉にしてみようと思います。
50代のミステリ作家であるレオポルド・ロングシャンクス。通称シャンクス。自己紹介でも自分から「シャンクスと呼んでくれ」と言い、ロマンス作家で結婚20余年の妻であるコーラからもそう呼ばれている。そんなシャンクスは、日常の仕事がらみや交友関係などで訪れる先々で、なぜだかたびたび事件や謎に遭遇し、ぶつくさぼやいたりしつつもウィットに富んだやりとりで切り返しながら、何だかんだとそれらを解決に導いていく。妻のインタビューに同行した店で、ふと窓の外に見えた男たちのやりとりに軽犯罪の匂いを嗅ぎつけ(「シャンクス、昼食につきあう」)、殺人容疑で捕まった友人の罪を晴らしてほしいという頼みを断れず、しぶしぶ警察署に赴き(「シャンクス、ハリウッドに行く)、知人の主催するミステリー・ウィークエンドで死体役を務めた翌日、犯人当ての景品である稀覯本が消えてしまうという事態に巻き込まれて……(「シャンクス、殺される」)。
などなど、人が亡くなる話もありますが、全体としては“日常の謎“テイストのエピソードが多く、またシンプルな謎解きとはやや趣向を異にした展開のもの、ショートショートに近い枚数のものなど、ユーモラスにしてバラエティ豊かなミステリ連作短編集となっています。
――「ぼくは話をつくるだけです。本物の事件を解決する方法など何ひとつ知りませんよ」
偏屈なところもあるが基本的には常識人で、妻から詰め寄られて言い訳を考えたり誤魔化したりしながらも、冷静な洞察と機転、そして時には「これは作品に使えるかも」というような下心を発揮して、皮肉を交えたりしながら立ち回って事態を落着させる、そんなミステリ作家シャンクスという探偵役の造形がまず、絶妙なバランスで好感が持てます。また夫婦ふたりとも作家ということもあって、そういった業界の社交の場の描写では、作家を名乗るただの自費出版のアマチュアにからまれたり、的はずれなインタビューを繰り返す記者に脱線しないようそれとなく水を向けたりと、お仕事小説としても読んでいてついニヤニヤしてしまう「あるあるなんだろうなぁ」という描写が散りばめられてもいます。
短編ミステリとしてもしっかりロジカルで巧み、またどのエピソードも洒脱な読み味でとても小気味良いです。そのうえ現代の話なので、翻訳だといわゆる古典に名作が多い印象の「コージー・ミステリ」の系譜で、ふつうにパソコンやスマホといった昨今のアイテムが登場するという雰囲気も何だか新鮮。ひたすら「あぁ、楽しい~」とクスクスしながらページをめくりながら、気の利いたセリフとともに締まる軽味に毎回嘆息し、読了後から「この調子でシャンクスものをあと100作くらい読みたい!」と本気で思うほどに、個人的には続編熱望。
ちなみに本書、訳者(高山真由美)さんが海外のミステリ雑誌を購読していて発掘し、翻訳の企画を日本の出版社に持ち込んだところから刊行にこぎつけたという、実に貴重な収穫たる一冊でもあります。高山氏の「疲れた日の寝る前に読めるような、軽やかな読み物があってもいいのに」という表現がまさにしっくりくる、ゆったり構えず楽しんでほしい連作短編集です。 -
そこそこ名の売れた?推理小説家、レオポルド・ロングシャンクス。
妻のインタビューに付き添った喫茶店の窓から、とある立食パーティーの会話から、タクシー運転手の相談で、シャンクスは謎や事件に巻き込まれて、解決してゆく。14話が詰まった短編集。
殺人事件、ポニー誘拐、特殊詐欺、強盗、それぞれがコンパクトに語られて、最後にニヤリとして終わる。
「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」なんて言いつつ、警察に助言したり。
50代の余裕を見せつつ、作家仲間へは皮肉な視線をむけて、妻の顔色を伺うシャンクスがリアルで、アメリカの作家の私生活が垣間見えるのも面白かった。
一話一話の最後にある作者のあとがきとか、シャンクスが時々みせる偏屈ぶりにヘゲーとなりつつ
「あなたってときどきいけ好かないわね。だけどその話をぜひ聞かせて」という気持ちに。
もう少しカルフォルニアへはお手柔らかにお願いします。 -
“小粋でしゃれた味わいのミステリ”(by解説者)、連作短編14話が収録されています。
ミステリ作家のシャンクスが、遭遇する様々な謎を解決していく話で、事件性があるものというより(無くは無いですが)、基本的には“日常系”の謎解きがほとんどです。
シニカルで始終ぼやいているシャンクスですが、妻のコーラに頭が上がらなかったり、クセのある作家仲間たちやエージェント、面倒な一般人に“やれやれ”と憂鬱になりつつも、何だかんだで“謎を解く羽目”になった際は、鋭い視点を発揮してくれます。
個人的には、シャンクスVS詐欺電話の「シャンクスは電話を切らない」が、めっちゃ短い話でしたが小気味よくて好きでした。
あと、「シャンクス、タクシーに乗る」も、結果“ええ話”になっているのと、オチも効いていて良かったです。
各話に「著者よりひとこと」という独り言のようなコメントがついているのも面白いですね。
タイトル通り、ティー・ブレイク(お茶だけに)に読むのにぴったりな一冊かと思います。 -
訳者あとがきや解説でもあるように、ジャック・リッチーや『黒後家蜘蛛の会』のテイストに満ちた、軽やかな現代の読み物。作家あるある、夫婦あるあるも面白かった。
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本書の主人公・シャンクスはミステリ作家。
ロマンス小説家の妻に持ち,結婚して二十余年という中年の作家夫婦である。
そんなシャンクスのモットーは次の通り。
「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」
シャンクスはミステリ作家であって,探偵ではない。
それなのに事件の話を少し聞いては,たちまち謎を解き明かしてしまう。
ユーモアと知性のあふれる作家夫婦のやりとりも読んでいて心地いい。
そんな軽妙な味わいの物語が詰まった短編集です。 -
本当に短めの短編
つまらなくはない
いつでも読むのをやめられる長さなので、待ち合わせや鞄に入れておくのに入れいかも -
翻訳者の持ち込みによって出版された短編集。ミステリ作家の主人公は少しばかり皮肉屋で、読んでて「作家ってみんなこんな感じなの?」と苦笑してしまいました。どの短編も後味良く、楽しく読むことが出来ました。
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まさにコージーミステリーど真ん中と言いたくなるようなお話が詰め込まれた短編集。
各話のページ数が少ないうえに重々しい事件も起きないので、コーヒーを片手に寛ぎながら読むのにピッタリだなと。
何だかんだで謎を解いてしまうシャンクスと妻コーラのやりとりも非常に微笑ましい。