- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488409210
作品紹介・あらすじ
団地に住む小学生が失踪しては数日で戻ってくる事件が立て続けに発生している。ついては解明に力を借りたい――そんな匿名の情報提供を受けたゴシップ誌の若手編集者・猿渡は、フリー記者の佐々木とともに城野原団地で取材を開始した。状況から子供たちの意図的な計画であることは明らかだったが、猿渡らがその真意をつかめぬうちに、別の子供が授業中の視聴覚室から姿を消してしまう。子供たちはなぜ順番に失踪しているのか? 俊英による傑作長編、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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団地に住む小学生が失踪しては数日で戻ってくる出来事が立て続けに発生している。
その事件解明に動き出すゴシップ誌『月刊ウラガワ』の新人編集者・猿渡とフリー記者の佐々木。
プロローグは、子供たちの会話が全く小学生に思えず、ハズレかなぁと思ったけれど、本編に入ってからはこの城野原団地のある町の雰囲気、空気が段々と感じられて引き込まれた。
子どもたちのいたずらかと思われた事件の裏に隠されたもの、次第に見えてくるもの、苦しさも感じながら物語にどっぷりとつかって楽しめました。 -
良い意味で裏切られた。小学生の冒険ストーリーのような始まりから二転三転、しかしそれらは全て結びつき、思いもよらない伏線回収。エピローグがまた素晴らしく読後感がとても良い。
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「珈琲店タレーランの事件簿」が出版された当時、書店には「喫茶店」や「居酒屋」を舞台にした日常の謎ミステリがたくさん並んでた印象があって、この作者も失礼ながら二匹目のドジョウ狙いかと思い読んでなかったのですが、本作は新しい地平を目指してかなり気合を入れて書かれたものだと感じました。あ、タレーランが手抜きと言ってるわけではないですよ。逆にタレーランも読んでみたくなってます。
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小学生たちが自分の意思で失踪して数日後戻ってくる。戻ってきた時は身ぎれいで食事もしているようだった。衆人環視の元で失踪する子供たちはどんなトリックを使ったのか。
ミステリー要素と青春要素は相性がいいと思っていますが、これはトリックを考えたのが小学生という設定なのであまり難しい内容だとイマイチですが、言われるとなるほどと感じるトリックが多いので読む事の集中力を削がれる事なく読めます(難しいトリックだと興ざめになるのは私個人の資質ですが)。
時間の流れを感じさせる素敵なエピローグまで楽しめるミステリーです。 -
「夏を取り戻す」の「夏」とは……。
子供のころ、夏休みが始まるときは「自由で可能性に満ちて、冒険や新たな体験が待っている」と、わくわくしていた。
秋になったとき味わう「やりきれなかった悔しさ、夏の名残の愛おしさ」は、これから何度も味わう、厳しい現実と挫折の始まり。
でも、また夏は来るという希望があれば、まだ少年時代は残っている。
1996年8月、高度成長期は終焉を迎えバブルが崩壊し始める。
世界を揺るがす大事件(オウム事件)や大災害(阪神淡路震災)が身近で起き、本当に「恐怖の大王」が空からやってくることにおびえた時代。
右肩上がりの象徴である高層アパート群(団地)に入ってくるのは、初期の希望に満ち溢れた若い家族ではなく、仕事も家族も破綻が見え始めた家族。
そして、時代に取り残されたような周辺の住民。
登場する小学四年生の児童たちに違和感を感じるとしたら、どこか大人びた思考と行動。
でも、こういった物語に期待する「子供らしさ」に対する違和感であって、本当の子供たちは世間の「忍び寄る暗い影」を感じ取ってしまう、この物語のように……。
二十年後の今のさまざまな家庭と社会の問題が、すでに垣間見える。
社会が健全であるためには子供が子供であることがいかに大切か、それはすべての大人たちの義務だと思う。
単なる「ジュブナイル」ではなく、そんなことも考えてしまった。 -
なんとなく題名に引かれ
この本を手に取ったのは夏 真っ盛りの頃でした
その後、あらすじを読んで『あー 子供のはなしかぁ…』『分厚いなぁ…』なんて思いでなかなか読む気になれず
そのまま放置
そろそろ手持ちの本もなくなり あまり気乗りせず読み始めたのですが……
気づいたら夢中になって読んでました 笑
こどもたちが みんな賢くて良い子で愛おしい…
こどもたちのトリックに翻弄される大人たちの話かと思いきや、ちゃんとテーマがあり感動するストーリー。
まさに『小4 夏の大冒険!』でした。
やっと結末がみえたと思ったら メインに隠れていた人物や物語が大きく飛び出してきて
こどもながらに 色んなことと闘いながら 色んな思いを背負いながら生きているんだなぁ…と感心したりせつない気持ちになったり。
最後は気持ちのいい終わり方で「青春だなぁ」としみじみした気持ちになりました。
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小学生が失踪する。それも連続して。
3日程度で無事に帰ってくるので警察は関与しない。この謎をとく探偵は週刊紙の記者2人。
なぜ失踪するのか?突然消えてしまうので、どうやって姿を消すのか?どこに隠れているのか?
いろいろ探っていくうちにこの土地特有のルールとか小学生ならではの人間関係とかが見えてくる。
後半の校長と担任の先生の対応が素晴らしいと思った。小学生たちも自分たちなりにいろいろ考えてることがわかり微笑ましく思えた。
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全くの予備知識無しに「あ、タレーランの人だ」程度で手に取って。読み始めた最初のうちは、何というか割とスケールの小さい「地味な話」かと思っていたら... 途中から話がどんどんややこしく、きな臭くなってきて(^ ^; 作者は二重三重四重五重に多層的なストーリーを作り上げている(^ ^; 「大きな秘密の暴露」ですら、さらに大きな思惑のための伏線でしかなかった、というゴージャスな罠の張り方(^ ^;
子供たちは、子供だからと言って大人が幻想として描く素直で単純で小ずるくて分かりやすい...というイメージを見事に崩してくれて(^ ^; 大体からして「子供たち」と十把一絡げで捉えること自体が、大きな間違いであって(^ ^;
最後の「ボーナストラック」は、う〜ん...無くても成立する気はしなくもないけど...作者の「サービス精神」の表れなのかな(^ ^; いや感動はするんだけど、読後感が「よくある作品」になってしまうような気もしなくもなく...(^ ^; -
夏に夏の本を読もうとして出遅れてしまったが、作中の舞台も今頃の季節だったので丁度良かった。
取り戻すのだから今なんだよね。
小学生が夏を取り戻す作戦に出て、当然問題になり、ゴシップ誌のライターが謎解明に乗り出す流れ。
小学生視点とライター視点で進行する。
読み始めた時は、なんとなく某名探偵シリーズの一作目を彷彿させて期待していたのだが…。
あまりにご都合が良すぎる構造と、小学生達の発想が大人の作家が捻りだしたモノにしか見えなかったり、雑さと安易さが残念に思えた。
全部が全部とってつけた印象。