月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 2-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488414016

感想・レビュー・書評

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  • 自分の好みにピタリと合っている、クイーンのような見事なパズラー。

    つるつるの紙、血がついていないマッチなどの手がかりの隠し方がとても巧く、それに気づけると推理はあまり難しくはないかもしれない。(自分は気付けてませんけど)

    噴火の危険が迫るクローズドサークルということで緊迫感はあるのだが、サスペンス感はなく、作品全体にどことなく品を感じさせる。

    シリーズ2作目、3作目も挑戦状つきということで、華麗な論理の本格ミステリーを期待したい。

  • 学生アリスシリーズ第1弾。
    キャンプ先の山が噴火してクローズドサークルになるという珍しいミステリでした。
    恋愛要素もあって、青春感になんだかドキドキしてしまいましたが、有栖川さんのデビュー作ということで初々しい雰囲気があって良かったです。
    月のことを話しているシーンは丁寧に描かれていて、幻想的でした。

  • 読みたかった学生アリスシリーズ、おもしろかった〜!
    火山の噴火によるクローズドサークル、そして起きる連続殺人。
    読者への挑戦、そしてなんと、現場にはダイイングメッセージが…!!
    ダイイングメッセージってそんな、名探偵コナンみたいな…!
    わーすごい、めっちゃいい〜!
    犯人は、いつものごとく全然当たらなかったけど、こういうの大好き。

    そしてこちらは、本格ミステリだけじゃない、切ない青春も味わえる。
    学生時代を思い出してしまうよね…
    うまく描かれていて、素晴らしかった〜!

  • 夜更かしして読み切った。先日初めて火村シリーズを読んだので、次は学生アリスシリーズを初めて読んだ。そんな学生の頃から事件に居合わせたのねと思いなが読み始め、
    青春時代の学生だからか有栖川さんだからなのか、疑いながらも互いに協力的な様子が新鮮だった。誰か意固地に一人で篭り切る!みたい登場人物はいない。これで3作目だけど、今のところ登場人物はみな協力的な印象。
    そして最後も情があって、爽やか?というか品がいいというか。
    動機が突発的でイマイチに感じたけど、それも青春から来るものなのかもと思い直す。
    綾辻さんの感じのミステリーも好きだけど、有栖川さんの作風もハマった。

  • 江上部長がかっこいい。推理もたんたんとして、個人的に大好き!

  • 犯人探しのミステリーひさしぶり。ダイイングメッセージは無理があるんじゃない?

  • 月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)

    夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々―江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく…。いったい犯人は誰なのか。そして、現場に遺されたyの意味するものは何。

    ・レビュー


    面白い。
    苦労したが(数時間悩んだ)、7割ほど推理は正解だったかな。
    フーダニット (Whodunit = Who (had) done it)
    誰が犯人なのか
    ハウダニット (Howdunit = How (had) done it)
    どのように犯罪を成し遂げたのか
    ホワイダニット (Whydunit = Why (had) done it)
    なぜ犯行に至ったのか
    といった三要素で考えるならば、フーダニットとハウダニットに関してはかなり苦戦しつつ当てることができた。ホワイダニットはまるっきり外してしまった。当てられる人がいるかどうかは微妙なところかもしれない(笑)

    新本格は綾辻行人の『十角館の殺人』以来で、その前になると近い形だと坂口安吾の『不連続殺人事件』とか筒井康隆の『ロートレック荘事件』とかがフェアな勝負ができる小説だったんだけれど、『十角館の殺人』はほぼ完勝(かなり苦労した)、『不連続殺人事件』は犯人は判ったけどそれ以外が判らなかった。『ロートレック荘事件』はトリックは見破ったけど考えてる間に読み終わってしまった(笑)という感じ。今回は多分今までで一番キツかったなぁ。

    十角館やロートレックはかなりトリックが大掛かりで、逆に言えば突飛な発想さえできる人なら後の理詰めはなんとかなる。この有栖川有栖の『月光ゲーム』はいろんな人の感想を聞くと「地味」と返ってくることが多い作品だ。だがそれは逆に考えるべきだと思う。全く欠点ではない。もちろん好み云々は抜きとして。
    というのもトリックが大掛かりであるほど、それは本来誰も行わないようなものだ。実現性と虚構線のバランスが大いに崩れているからこそ面白い。一方この『月光ゲーム』は実現性は非常に高い。純粋にタイムテーブルに登場人物の行動を書き込んでいけば犯人を導くことができ、その他の謎も発想力で突き止めることができる。
    これを前述の実現性と虚構線のバランスが大いに崩れている面白さと比べて劣っていると考えるのはどうだろうか。僕はどちらかと言えば地味ながらも大いに事件が身近になり得るこういった推理小説こそ、本来の本格ミステリじゃないかなと思う。

    さて僕が今回謎解きがキツかったと感じたのはそこに由来するだろう。
    普段から突飛な発想で物事を考えたりしているからかなんとなく大掛かりなトリックは見破りやすいのだけれど、純粋に犯罪の実行が可能な特定の一人を論理で導くのは当然難しい。それができたら探偵になれる理屈になるので(笑)
    派手な事件はやはり面白いが、そういう小説が増えてきた中でこういう理詰めの作品を読んで挑戦するのは楽しい。

    ストーリーに関しては、先日読んだ『闇の喇叭』とはまた別の形で「青春」が織り込まれた内容だ。主人公である有栖川有栖と探偵役の江神二郎は英都大学推理研究会のメンバーで群馬の眠りついた火山へキャンプにやってきた。そこでたまたま居合わせた他の大学のキャンプ客と意気投合し楽しいキャンプ生活を送る。そこで起きた殺人や失踪、そして現場に残された「y」の文字。更に眠っていたはずの火山が噴火し、山に閉じ込められてしまう。
    僕は群馬出身なのでだいたいどのあたりの山がモデルなのかわかって面白かった。
    まさにクローズドサークルの典型とも言えるこの状況で、若い学生たちの恋と殺人事件とが見事に交差していく。登場人物が非常に多く、そこが多くの不評を買っていたりもするのだが、アダ名で登場人物たちが名前を呼び合ったりするのでそこまで混乱はしないのではないだろうか。それにそれも便宜以上の意味がある。
    動機がやや不評だが僕はそこまで気にならなかったかな。クローズドサークルではしょうがない一面もある。

    そして、青春小説的な部分も面白いが、何と言っても作中の「マーダーゲーム」というゲームや、推理小説談義、月の話など、登場人物同士のやりとりもなかなかおもしろい。
    まさにタイトル通り「月光」が見事に作品をまとめあげていたりする。そういう意味で非常に美しい構成の物語といえるだろう。
    もちろん推理の部分も本格らしい面白さがある。

    これはネタバレするような話も少ないのでこのへんにしておこう。ミステリファンじゃなくとも難しいパズルを解くような感覚で楽しめる小説になっているんじゃないだろうか(ちなみに英語圏ではこの手のミステリを「パズラー」という)。

    次回は予定が変わらなければ、学生有栖川有栖が主役の同シリーズ2作目『孤島パズル』のレビューを書こうと思います。実はもう半分くらい読んでいるのでいまもまさに謎解きの最中だったり……

  • 有名作家トライアル有栖川有栖編
    有名作家とは知りながら、手にとって来なかった作品をトライした。
    双頭の悪魔が代表作とのことだったのだが、ならばシリーズの一作目からと思い本作を選んだ
    学生、ミス研、クローズドサークルの雛形みたいに感じました。
    登場人物をなかなか覚えられない私は、サッサと推理を諦めて結論に
    有栖川先生の長編第一作にしてデビュー作でもあることから、伏線の美しさなどは近年のモノより荒削り感がありましたが、元々学生時代に書いた作品と言うのが凄いですね。

  • キャンプで訪れた山が噴火するという状況で生まれたクローズド・サークルで起きた殺人事件と残されたメッセージ。読み終えた後の感想は「あー、手がかりを見落として読んでいたなぁ」のひとこと。
    昨年から犯人当てミステリーをたくさん読んでいたが、もっと早く出会いたかったなぁとも思う。
    本作は学生アリスシリーズの第1作とのことだが、自分自身の学生時代のことを少し思い出して、正月早々ナイーブになってしまった。
    彼氏持ちの女の子を好きになってしまう辛さを思い出して心臓が握りつぶされそうになった。

  • 古さを全く感じさせない作品でワクワクして読むことが出来た。

    主人公が推理研のサークルに所属していて、推理小説について云々している場面があったので色々な作品の名前や作者が出てきて他作品にも興味を持った。
    エラリー・クイーンだったり古典作品をあまり読んでいないので、これを機会に読んでみたくなった。

    ストーリーの舞台は登山にきた大学のサークルメンバーと、そこで偶然出会った他大学のサークルメンバー達が火山噴火で下山できずにいる中で殺人事件が起きるというもの。

    読み始める前は火山噴火でクローズドサークルってどういう事よ、と思ったけどしっかり作られていてどんどん引き込まれていった。
    主人公目線の描写が軽妙なのもちょっとツボった。

    あとこういう作品ではベタだけど、解決編に入る前に挿入される読者への挑戦も燃えた!
    けど犯人が全然分からず推理も出来ないので江神さんにお任せ状態になってしまった。

    ダイイングメッセージの謎だったり伏線もちゃんと回収されてスッキリした読後感。

    個人的には途中で犯行終了宣言が出たのは少し残念に感じたかなぁ。
    そして誰もいなくなった的な展開が好みなのもあるのかも。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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