定価のない本 (創元推理文庫 Mか 8-3)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 555
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488433130

作品紹介・あらすじ

神田神保町――江戸時代に旗本の屋敷地としてその歴史は始まり、明治期は多くの学校がひしめく文化的な学生街に、そして大正十二年の関東大震災を契機に古書の街として発展してきたこの地は、終戦から一年を経て復興を遂げつつあった。その街の一隅で、ひとりの古書店主が人知れずこの世を去る。男は崩落した古書の山に圧し潰され、あたかも商売道具に殺されたかのような皮肉な最期を迎えた。古くから付き合いがあった男を悼み、同じく古書店主である琴岡庄治は事後処理を引き受けるが――直木賞作家である著者の真骨頂とも言うべき長編ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 古典籍を巡るサスペンスミステリーですね。
    戦後一年たった昭和二十一年終戦記念日に、神保町の古本屋で、古本に押し潰されて、一人の古書店主が死んだ。
    そこから、事件は始まる。
    古書店主の先輩で、古典籍のみを扱う琴岡庄治は、事故ではなく、事件ではないかとみて、真相究明に乗り出す。
    話が、ここまでなら、単なる推理ミステリーなのですが、さすがに門井さんは歴史ミステリーの強者。
    話が、GHQにも及んで、戦後の日本の古典籍の危機をサスペンスがらみで物語ります。
    徳富蘇峰、太宰治、九条家、神田の古書店総出演で、物語を膨らませます。
    門井さんの取材力と物語の構想力には畏れ入るばかりです。 
    参考文献は、古典籍販売の反町茂雄さんの本が有るばかり、凄い知識力で古典籍を語ります。
    対談 門井慶喜✖️岡崎武志 も興味深いものでした。

    古書好きには、面白味満載のミステリーですね。

  •  終戦から1年。神田神保町の古書店の主人が、本に押しつぶされて死んだ。彼は殺されのか。直木賞作家が描くミステリ。

     こういう題材にはどうしても惹きつけられてしまう。ミステリなのだが、後半では、日本の「歴史と文化」を守るための戦いとなる。何やら右寄りの思想が来るのかと身構えたが、日本人の「心の原点」を守ると解した。
     
     この本で、古書"Old Book"と古典籍”Antique Book”違いを知ることができた。また、太宰治がちょっとだけ登場するが、あまり意味がないような気がする。

  • 途中から壮大な話になって、思想のぶつかり合いが強くなる部分を読み「あら?」と、ちょっと心配してしまった。

    だけども読みやすく、謎に引かれてスラスラ読んでしまった。謎もあっさりと解決かと思いきや最後まで気が抜けなかった…

    終戦から一年後の神保町
    あるの書店主の死を、友人であり同業者の琴岡が追う。
    古本ではなく「古典籍」と言うジャンルがあるんですね。日本の古典には詳しくなく有名な作品の名前を知っているくらいでしたが、話が壮大になり困惑しつつも古書店主達の矜持の熱さが沁みました。

    こういう本を扱った話に弱い。

  • 祝文庫化!

    「定価のない本」門井慶喜著|日刊ゲンダイDIGITAL(2019/10/22)
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/263597

    門井慶喜さん「定価のない本」インタビュー 古書の街・神保町、古典守った|好書好日(2019.11.10)
    https://book.asahi.com/article/12843564

    定価のない本 - 門井慶喜|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488433130

  • 戦後まもなくの混乱期、神田神保町で古典籍専門の古書店・琴岡玄武堂を営む庄治は、店を構えず通販のみのユニーク商法が災いして商売あがったりだった。そんな中、同業者で弟分の芳松が本に埋もれて圧死した。何故かGHQから真相究明を命じられた庄治は、徐々にGHQの「ダスト・クリーナー計画」に巻き込まれていく。タイトルの「定価のない本」は古本のこと。

    う~ん。真相究明を命じておいて、真相が分かりそうになったところで仲間に引き入れて…。GHQの妙に手の込んだやり口がしっくり来ない。GHQなら、しようと思えば強制的に接収出来るはず。それに、平気で殺人を犯し、家族を人質にしておきながら、駆け引きが妙に律儀だよな。

    「日本から歴史を奪う」「国家同士の文化戦争」とのことだが、終わってみれば、米軍を合法的に儲けさせただけ?
    それにラストの謎解きもしっくりこなかった。

    著者の歴史小説、奇を衒わないオーソドックスな作風で好きなんどけどな。ミステリーはいまいちだな。

  • 終戦から1年後の神田神保町。古書の町は復興の息吹を感じつつあった。その中で古書店主、芳松は本に押しつぶされて死ぬ。芳松を弟分として可愛がっていた琴岡庄司は芳松の死に疑問を感じる。そんな中、芳松の妻、タカが失踪。庄司は些細なきっかけで知り合ったGHQの少佐から、ある依頼を受けることになる。

    面白かった。古書業界のお話、ということで「ビブリア古書堂の事件手帖」を思い出した。途中で読むのをやめちゃったんだよなあ。
    庄司の実直な人柄が好ましい。子孫がいるから、命に別状はなく、大丈夫だったのは分かっているのだが、暮らし向きは平気か?と心配になってしまう。
    徳富蘇峰はもちろん青森 五所川原で津島=太宰治が出てきている、伏線があるのでは…と読み進めた。
    やっぱり太宰、出てくる。かなり重要なところで。少佐に売って売って売りまくっているように見えたから、これでどう古典を守るのだろう?流出じゃないか、と思ったが、庄司の相場師のような感覚が生きてきたのか。
    日本は文化を蹂躙された経験はあまりないが、してきた経験はある。それを考えれば少佐のやり方はかなりソフトなやり方だ。日本の日本らしい文化が海外で評価されることをうれしく思うが、日本人である自分がそれをしっかり語れるか、と言われると、自信を持って「はい」とは言えないのが辛い。勉強せねば。

  • いやぁ、良かった。
    なんだか後半は胸が熱くなってしまった。
    望月不欠とは?芳松を殺したのは?貴重な古典籍をそんなにGHQに売ってどうなっちゃうの?
    と謎が謎を呼ぶし、ドキドキわくわくした。
    あの人が太宰治って!って驚きもあり、ラストまで本当に面白かった。

  • 久しぶりにミステリーを読んだ。神田古本まつりの前に読めてよかった。内容はやや右寄りな記述があったが、ストーリー自体は面白かった。

  • 3.5
    2023.09.18

  • 古書に関するミステリーということで興味をもって読んでみた。神田神保町エリアをもっと知りたくなった。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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