九度目の十八歳を迎えた君と (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 946
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488435219

作品紹介・あらすじ

印刷会社で営業職をつとめる僕は、通勤途中のホームで、同級生の姿を目撃する。僕が恋した高校時代の姿のままで。周囲は何ら不思議とは思わないようだが、未だ十八歳として高校に通っているという。何故か僕だけが違和感を拭えない。何が彼女をその姿に止めているのだろう? 最初の高校三年生の日々の中にその原因があるはず、そう推理した僕はあの頃を思い出しながら同級生たちや恩師のもとを訪ねる……。いま注目の著者による、追憶と青春のミステリ、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • うーん。不思議な物語だった。
    あまり現実的なことを考えてしまうと多分読めなくなるので、世界観を受け入れてあまり深く考えずに読み進めるべき。
    誰しもみんな、いろんなことを乗り越え受け入れて、歳を重ねていくんだよね。

  • 単行本うらすじよりー
    いつもの時間より遅めの九月の朝。
    通勤途中の駅のホームで僕は高校の同級生・二和美咲の姿を目撃する。十八歳のままの姿の彼女をー。二和は僕が卒業してからもずっと十八歳の高校三年生として通学しているという。周囲も不思議とは感じないらしいが、彼女に恋をしていた僕だけが違和感を拭えない。何が彼女をその姿に留めているのだろう?最初の高校三年生の日々にその原因があるはずだと考え、僕はかつての友人たちや恩師のもとを訪ね、二和について調べ始めた。ファンタスティックで切ない追憶のミステリ。

    この作品では二和美咲が何度も高校三年生を繰り返しているのに主人公の僕こと間瀬以外は誰もおかしいと思っていません。当たり前のこととして受け止めています。その辺がミステリアスではありますが、私にはよく理解できませんでした。

    最後のメッセージがすごくよかったと思いました。

    「みんな年を取るにつれて、現実に直面する。夢ばかり見ていられなくなっていくのは仕方ないことだ。誰も望んで希望や夢を放棄しているわけじゃない。もがく子供には存分にもがいてもらった方がいい。もがく環境を整えてやるのが大人の仕事なのだーでもきっと君はもがきながらも前に進まなくてはならない。子供とは、そんなにも長く続けるような身分ではないのだ。年齢がなんだ。そんなものを言いわけにしているうちは永遠に子供だ。俺はもう二度と自ら年齢を間違えない。誰も死んでなんかいない。人は生きてるかぎり、間違っても死んでなんかいないのだ」

  •  不思議な物語。通勤途中の駅のプラットホームで、9年ぶりに見かけた彼女は高校生のままだった。Why? 主人公は、この謎を追って、昔の同級生や彼女の現在の同級生達に話を聞く。この辺は読んでいて違和感ありありなのだが(おそらく作者の狙い)、次第に明らかになる主人公と彼女の過去。そして現在。これもやはり青春ミステリーなのか。

     そして、最後はそんなこともあるのかなと妙に納得(?)させられた不思議な物語だった。昔の彼女が歳を取らないなんて、ちょっと雨月物語を想像させられたのだが、どちらも作者の名前は同じ「秋成」だ

  • 高校の頃の同級生が19歳になることを拒絶している理由を探るという、ちょっと特殊状況なミステリー。特殊設定ではあるものの、その設定に基づく展開の描き方が巧みです。気を抜いてると作者が描く特殊状況に自然と取り込まれてます。

  • 題名からも年齢をテーマにした、現実では起こり得ないミステリー。歳をとらない同級生との恋愛話と思いきや、いやいや我々中年にもガッツリ勇気をくれるものでした。
    そんな世代には投げかけているのではないのかもしれませんが、教頭先生の言葉、「大事なのは現状からの跳躍力」。
    その後間瀬さんから二和さんにも伝えていましたが、何かとくたびれてしまっている自分にも響きました。まだまだだと。

    展開も二和さんの問題が一段落し、異色ながら爽やかに恋愛物として終わるのかと思ったら……
    重ねてチカラをもらえた終わり方でした。

  • 終盤のの間瀬と二和が対峙するシーンは二和の言葉にドキッとした。
    私は今大学生で子供でも大人でもない曖昧なところにいると思う。この先の人生はどんなことがあるかわからない。今いるところでの最善の跳躍を決めていくしかない。とても心に沁みた。

  • 2019年6月東京創元社刊。2020年11月創元推理文庫化。タイトル通りのストーリーが展開し、18歳を繰り返す謎らしき提示はあるものの明確な説明は無い。本質はそこでは無く別のところにあると言わんばかりの展開は、最初から梯子を外されたかのよう。せめてラストでは、ヒロインかヒーローに「説明は何もないのよ」と言って欲しかった。もしかすると遠回しに言ってたのかも。

  • おそろしく真っ向から「失われた青い春」に対峙した作品。

    ヒロイン・二和が自分の年齢を止めた理由、夢を諦めそれがオトナになることだと嗤う大人への嫌悪感をまくし立てる場面は、ある程度オトナなら、むず痒さと羞恥となんらかの反発を覚えずにいられないと思う。
    主人公・間瀬の口を通して、「人はそんなに長く子どもでいることを許されない」と書かれているけれど、作者自身は、「青春」を美化することも懐かしむことも捨て去ることも、同じレベルで見つめ、公平に扱っている。
    この透徹した視点こそ、浅倉秋成の魅力。
    二和の年齢の謎解きと見せかけて、この作品は青春の群像劇だ。
    間瀬はマサに「魂の救済者」で、二和は青春の純粋な結晶体。真の主役は「失われた青春」であり、間瀬も二和も作者が遣う人形感が強い。
    物語のテーマは胸に残るが、キャラクターへの愛着や魅力をもてなきったところが少し残念だった。

  • タイトルで興味でたけど、18才のままの彼女に周囲が違和感を持たなかったり、モヤモヤしたまま読み進めるのがだるくなって…特殊設定は嫌いじゃないけど、これはなんかしっくりこなかった。
    途中でやめました。

  • 「六人の嘘つきな大学生」と「俺ではない炎上」がすごく面白かったので、著者の他の作品も読んでみようと思ってこちらが3冊目。

    一気読みしてしまったけれど、SF設定と青春小説が個人的に苦手分野だったのか、最後まで読んであまり響かなかった…。

    夢は変わってもいい。いくつになっても、その時の夢に向かって前進しろ、というメッセージ性があるのは、良かったなと思った。 

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著者プロフィール

1989年生まれ、小説家。関東在住。第十三回講談社BOX新人賞Powersを『ノワール・レヴナント』で受賞しデビュー。『教室が、ひとりになるまで』で推理作家協会賞の長編部門と本格ミステリ大賞の候補作に選出。その他の著書に『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』『六人の嘘つきな大学生』など。

「2023年 『六人の嘘つきな大学生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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