- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488489120
作品紹介・あらすじ
世界情勢の変化と電子書籍の普及により、紙の本が貴重な文化財となった近未来。そんな時代に、本を利用者に無料で貸し出す私設図書館があった。“特別保護司書官”のワルツさんが代表を務める、さえずり町のサエズリ図書館。今日もまた、本に特別な想いを抱く人々が、サエズリ図書館を訪れる―― 。本と無縁の生活を送っていた会社員、娘との距離を感じる図書館常連の小学校教師、本を愛していた祖父との思い出に縛られる青年など、彼らがワルツさんと交流し、本を手にした時に訪れる奇跡とは。書籍初収録短編を含む、傑作連作短編集。
感想・レビュー・書評
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もうだいぶ前になるが東京創元社からのメルマガの『本と人の奇跡を描いた伝説のシリーズ第1弾、待望の文庫化』という惹句を見てずっと「読みたい」に入れていた。手にした本は、表紙のイラストも感じ良く。
世界情勢の変化と電子書籍の普及により、紙の本が貴重な文化財となった近未来。そんな時代に本を利用者に無料で貸し出すサエズリ図書館。その代表を務めるワルツさんと図書館を訪れる人たちのお話。
第三話まではややつかみどころかない話が続く。わざわざこういった設定だし、紀元前の昔に貴重な文書とともに焼け落ちたとされているアレクサンドリア図書館への言及など、きっと紙の本推しの話なのだろうと思う(単行本版あとがきにも『電書ですか?本ですか?』という問いかけがあった)が、あまりそういうことを感じることもなく、どちらかと言えば、本と無縁の生活を送っていた会社員カミオさんや娘との距離を感じる小学校教師コトウさんのキャラが目立つ「サエズリ図書館のおかしな常連さんたち」といった体。
まあ、それはそれで楽しく読めるのだが、ちょっとした引っ掛かりが説明されているようないないような、しっかり読んでいたら分かるでしょうということか、ちょっと微妙な違和感もあり。
第四話になってようやくこの近未来の世界が描かれ、物語の背景やワルツさんの出自が知れてくると、『わたしが死んでも、本は残る』というワルツさんの養父の言葉に、本という『古い過去から。つながる命から。贈り物がある』というテーマがしっかり腑に落ちてくる。
そこから、ネットワークから遮断された図書館の中で子どもたちが本の質量を感じていく番外編へのつながりがなかなか良く出来た話になった。
最初から出来あがっていた話ではなく、書いている内にどんどんと肉付けされていったという印象。そう思うと、続巻が楽しみ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
☆4
紙の本が貴重な文化財となった近未来を描いた物語。
そんな世界を舞台に「サエズリ図書館」の特別保護司書官を務めるワルツさんと、図書館を訪れる利用者の人達の奇跡を描いた連作短編集。
電子書籍は便利だと思うのですが…やっぱり紙の本が大好きなので、本作を読んで紙の本に更に愛着が湧きました。
そして何の不自由もなく、好きなだけ本が読める現代がとっても幸せなことなんだと改めて気付かされました。
近々、シリーズの2巻が発売されるとのことなので、今から楽しみにしていたいと思います❁⃘*.゚ -
正直に言って近未来の世界の設定がピンとこない。失われた『先進時代』というのも意味がわからなかった。データ化(電子書籍化)が進み紙の本に取って代わった世界。紙の本は過去の文化財となり、そもそも本を読んだことすらない人々が多い世界。それにもかかわらず、世界的なインターネットワークは破壊され自治体単位で辛うじて存在している世界。よくわからない。
そんな世界の小さな町に存在する私設図書館、管理責任者・代表であり特別保護司書官であるワルツさん。そもそも〝特別保護司書官〟ってなんなんだ!? 作品中に〝特別保護司書官〟についての説明がでてはくるがピンとこない。
図書館の名称や登場人物がカタカナで表記されている意図(漢字表記も出てくるのだが)が気になるもののわからない。気になって仕方がない。
その図書館を訪れた人々が本に触れ、ワルツさんと交流する中で訪れる奇跡。図書館を舞台とした利用者と図書館司書や図書館職員などとの触れ合いや本との出会いをとおして綴られる物語という設定は他にも何冊か読んだことがあるが、それらの作品とは微妙に異なっている。妙に違和感を感じながら読み進めることになってしまった。
ネタバレとなるので詳しくは書かないが第四話まで読みすすめてきて、それらの違和感に対する答えが少しずつ見えてきた。
『アレクサンドリアを忘れるな。』それが、ワルツさんの父親(養父)であるワルツ博士の口癖だった。アレクサンドリア図書館とは古代エジプトに存在した、遥か昔に焼け落ちたという世界最古の図書館のことだ。ワルツ博士は「本はデータのように永遠でないのだと、だからこそ素晴らしく、大切に扱っていかなければならないのだと、そして愛する価値があるのだと」「この時代に、これからの時代に。本が博物館ではなく、図書館で貸し出されることに意味があるのだと」語っていたという。
第四話はこのように締めくくられている。「世界がどれほど変わっても。人がどれほど変わっても。たとえ文明が大きく折り返したとしても。 本は死なない。 愛する人が、いる限り。」
読み終えて正直な感想を述べると、面白い作品だと思った。特に本好きな読書家には堪えられないシリーズだと。
「単行本版あとがき」「文庫版あとがき」まで読むと、作者がこの作品に込めた思いが改めてわかった。作者もやはり『本』が好きなんだなと。
私も本が好きです。と言っても最近は電子書籍ばかり読んでいますが。書架にはこれまで読んだ本達が隙間なく並んでいて静かに眠っています。整理しろと家族に言われてもほとんど捨てていません。一方で利便性やスペースを取らない点では電子書籍に勝るものはないと思います。どちらも私にとっては大切な本です。 -
本好きにはたまらない!
「そうそう!」と縦に振る首が止まらない。
短い間隔で刻まれる句読点が、サエズリ図書館の静かで穏やかな空気を表現している。
図書館司書のワルツさんの名前のように、ワルツのゆったりとしたテンポで読ませる文章。
そして、電子書籍が一般的になり、紙の本が希少で高価なものになった世界においても、紙の本を好きでいつづける人たちの存在。
こんなに勇気のもらえるお話が、復刊された事実にも、また勇気づけられる。
これからこの本を読まれる皆さまへ。
どうぞ、よい読書を。 -
この本はこれからの時代、電子機器が増え、紙が貴重になっている設定のお話。
この本にあるとおり、いずれそゆ時代が来て、電子機器が当たり前になると思う。それについて、この本を読む前と後で変わったものは、その時代に''怖さ''を感じたこと。今の時代はまだ紙に触れること、紙で本を読むことは当たり前だからこそ、日常生活に紙がないというのは不安だと。
ただ、それと同時に、ちゃんと未来に進まなければとも思った。紙のない時代が来るのはもうわかっていること。であれば、私たちが今ある時代に、紙の本の大切さ、紙の感触、匂い、それがどう大切であるのか、それを伝え、何かを残すことをし、進むことも大事だと思った。 -
紙の本が貴重になった時代に、無料で閲覧可能な私立図書館が舞台のお話。
私は漫画は電子書籍でもいけるのですが、小説はやっぱどうしても疲れてしまって紙の本の方が好きです。なのでこの時代だと辛いなぁと思いながら読んでました。
でも本の値段も上がってて中々高級になってきましたよね…。今後こういった未来がもしかしたら来るのかも…。本は癒しなのになぁ。