- Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488506018
感想・レビュー・書評
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怪奇幻想小説短篇集。ひそやかな怪異がじわじわと迫る一冊です。
やはり有名な「吸血鬼カーミラ」は素敵。恐ろしくはあるのですが、それ以上にやはり美しいです。もうタイトルから正体がばれてしまっている(笑)カーミラですが、わかってはいてもあまりに可憐なその様子には魅入られてしまいそうな気がしました。
「判事ハーボットル氏」も好き。ハーボットル氏のキャラクターが全然好きになれなくて、だからこそまったく同情する気にはなれないのですが。起こる怪異の数々は恐ろしいよなあ……こんな目には遭いたくありません。 -
ずっと読んでみたかったカーミラ。
美しく儚く物悲しい描写は期待以上でとても良かった。謎が結構残されたままなのもいい。
表題作以外の短編も全て独特の味わい深さで、これぞゴシックホラー。
例えるなら、モノクロ映画の趣き。
使用人たちの話し言葉が西郷どん的な翻訳はご愛嬌。 -
平井呈一さんは文人の系譜に属する方で、さすがに訳文も格調高い。
比較的昔の翻訳ですが、特に古臭さを感じさせません。
ネットを検索すると平井呈一訳版が古臭いという意見が目立ちます。私は特に違和感なく読んでいたので、頭の中がかなり年寄り化しているのかもしれません。私は平井版の文体は好きです。特に、流しの芸人に関するくだりは今では読めない文体だと思います。私はこんな文体で文章を書きたいので何度も読んでマスターしたく思います。
例えば、主人公ローラの父親やスピエルドルフ将軍といったお年寄りのセリフや流しの芸人に関する描写の節回しに古き良き味わいがあって良い。
「とにかく、お母さまから指示がなくてもだ、ここを去るなんちゅうことを考えちゃならんことだけは、たしかじゃ。わしのほうだって、あなたと別れるについてはいろいろこれで心配もあるんじゃから、そうやすやすと承知はできんよ」
「こりゃまあ、名前もろくすっぽ知らんで若い女をあずかるなんて、とんだヘマなことをしたわいと、改めて自分のドジさかげんを思い知らされたわけだが」
……なんて、微妙に古さを感じるお爺ちゃん言葉に味わいがあります。
また、ローラの語る地の文にも
「スピエルズベルヒ先生は、そこから馬にのって暇を告げると、そのまま森のなかを東のほうへと、パカパカ行ってしまいました」
なんて表現が出てきます。
創元推理文庫版は字が細かくて読みにくいことは読みにくいのですが、本書は他にも短編が6編も収録されているのでお得ではあります。
20世紀少年少女SFクラブ
12年前の悪夢に出てきたお姉様と運命の再会!【吸血鬼カーミラ】
https://sfklubo.net/carmilla/
https://sfkid.seesaa.net/article/487799744.html -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/765260 -
ガラスの仮面から。
カーミラが蠱惑的でファムファタールっぽくあり、とても素敵。
でも結局母と黒ずくめの紳士はなんやったんやという感じである。 -
女性の同性愛表現含め、耽美的な文章が良かった。
恐ろしくも儚い世界観は、まさに吸血鬼モノの元祖といえる。面白かった。 -
レ・ファニュの短編小説集。本書は「吸血鬼カーミラ」となっていますが、「In a Glass Darkly」に収録された短編です。この「カーミラ」がブラム・ストーカーの「ドラキュラ(1897年)」を始め、多くの吸血鬼作品に影響を与えたことが知られてます。詳細な描写や謎解きがあるわけはなく、なにか得体のしれない分からないものへの恐怖が全体に漂います。平井訳も古典的で雰囲気が良いので好きですが、新訳が立て続けに発売され読みやすくなり、敷居が低くなりました。この流れは百合小説の流行とも関係するのかな。
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私の血を飲んだ者は永遠の命が与えられる、最後の日にその者は復活するというキリストの言葉のネガたるアンチキリストの王、吸血鬼伝説。英国怪奇小説の祖レファニュの短編の中で言うまでもなく語られるべき名作のひとつはこの「カーミラ」だ。非常に悪魔的でレズビアンの匂い漂う吸血鬼ホラーの傑作である。貴族の娘、私と父が暮らす古城に偶然やって来た高貴な母娘。縁あって娘カーミラを城で預かることになったが、村には若い娘が急逝する奇病が流行っていた。カーミラの奇妙な態度を訝る私も奇病にかかってしまう。カーミラの蠱惑的な態度やその正体が暴かれていく過程の面白さは、いや木杭を打ち込んで滅ぼすラストまでカーミラの正体を知らずに読んだら心打ち震えたはずだ。カーミラは…吸血鬼だったのか!これまた英国怪奇小説翻訳の祖平井呈一がタイトルを「吸血鬼カーミラ」にしてしまったのだ。原題「カーミラ」だけではホラーファンが購入しないのは確かだ、しかし読む前に正体を明かしてしまった平井翁の罪は大きい。
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短編集であることを知らずに購入し、読みたかった表題作が一番最後に収録されていたので読了までに時間がかかってしまった。なので最初のほうの作品は記憶がほとんどないが、表題作の「吸血鬼カーミラ」は素晴らしかった。美しい吸血鬼の少女カーミラが、これまた美しい主人公の少女に熱い視線を送り、激しく抱擁し、首筋に接吻するといった描写はまさに百合小説の原点といったところ。読んで良かった。