ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫 (523‐4)) (創元推理文庫 523-4)
- 東京創元社 (1985年11月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488523046
感想・レビュー・書評
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①宇宙からの色
荒地を見張る老人が語った、かつてそこに住んでいた家族に起きた悲劇とは――
非知的生命体による侵略物。映画で例えると『遊星からの物体X』とか『ブロブ』とか。こういう恐怖は時代を問わず通じる。
②眠りの壁の彼方
精神病院に強制入院させられた、殺人を犯した男。二重人格を思わせる発作を起こす男にわたしは興味をひかれ、ある試みを実行すると――
ラヴクラフトが初めて宇宙的恐怖をテーマにした作品で、確かに、後に生まれる神話に連なる作品の「原型」と思わせる内容。
③故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実
突如、焼身自殺を遂げた学者、アーサー・ジャーミン。彼がそのような暴挙に走った原因とは――
遺伝をテーマにしたゴシックホラー。ラヴクラフトの当時の状況を踏まえると、こういう作品を書いたのもさもありなん、と言ったところか。
④冷気
どうしてわたしが冷気をそんなにも恐れているのか、って? あんなことを体験すれば、誰だってこうなるさ――
マッド・サイエンティストによる生きている死者の話。設定を少しいじれば、現代を舞台にしたホラーでも通用しそう。
⑤彼方より
二ヶ月半の時を経て再会した友人は、別人のように醜く痩せさらばえていた。友人が言う「彼方」より来たる存在とは――
これも「異界への干渉」という点で、後に生まれる神話に連なる作品の「原型」を思わせる内容。
⑥ピックマンのモデル
なぜわたしがピックマンと絶交したのかって? それはな――
体験者の話を直に聴かされているような会話体の体裁。虚実の境が曖昧にさせるような展開は実話系怪談にも通じる。
⑦狂気の山脈にて
次の南極探検計画を中止させたいために、前責任者が語った、南極での忌まわしい体験とは――
美しいグロテスクと言うのか、単純なホラーではない所がこの物語の面白さ。ギレルモ・デル・トロ監督が映像化を目指すのもわかる。旧支配者を、未来で冷凍睡眠から目覚めた我々に置き換えれば、その恐怖や悲哀に共感できるだろうか。
『アウトサイダー』もそうだが、知性ある怪物をただのモンスターとして描写しないのは、ラヴクラフトが最期まで抱いていた「孤独」に由来するものだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1985年以降購入して読んだが、詳細は覚えていない。
これまで聞いたことがないような擬音のカタカナ、”ほのめかす”という普段使わない訳、不気味な話には惹きつけられた。
また読みたい。(2021.9.7)
※売却済み -
宇宙からの色
宇宙から来た謎の生命体が、周囲の生命を食らい、飛び去って行く。未知の生命体との遭遇とはこういうものかもしれない。
眠りの壁の彼方
惑星霊が人間に宿っていたため、容量が小さく精神に異常をきたしたという話。人間って、心もちっぽけなんだね。
故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実
自分の祖先が猿を獣姦していたと知って絶望・自殺した人の話。忌まわしいが、自殺しなくてもよかったのに。
冷気
アパートの上の階の住人は、自分を冷蔵しつづける死人だった。忌まわしいというより、面白いけどね。
彼方より
ティリンギャーストが発明した、人間の知覚力を増大させて見えないものを見えるようにする装置。幻覚・催眠術と言われてもしょうがない。
ピックマンのモデル
食人鬼の絵を得意とする画家ピックマン。そのモデルは実在する地下の怪物たちで、地下室の壁に飾られていたものは絵ではなく写真だった。えっと…なんか、今さら感がありますね。そんな話ばかり何回書くんだ。もっと先に行ってほしいものです。
狂気の山脈にて
南極に存在する、狂気の山脈と<旧支配者>の廃墟。かつて<旧支配者>が使役していたが今となっては制御できなくなった無定形の怪物ショゴスとそれが発する音「テケリ・リ!」重厚長大で前半読むのが苦痛だったが、後半、死の都市に入ってからはsnow ballでした。でも、この警告文…読んだら絶対確かめに行きたくなると思うw。 -
"きみはこの惑星でのわたしの唯一の友だったーーこの寝椅子に横たわる忌わしいもののなかに、わたしを感じとって見つけだしてくれた唯一の魂だった。また会うことがあるだろうーーおそらくオリオン座の三つ星の輝く霧のなかか、先史時代のアジアの荒涼とした大地か、記憶にのこらない今晩の夢か、太陽系が消滅している遥かな未来の他の実体で。"[p.71_眠りの壁の彼方]
「宇宙からの色」
「眠りの壁の彼方」
「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」
「冷気」
「彼方より」
「ピックマンのモデル」
「狂気の山脈にて」
「資料:怪奇小説の執筆について」
「作品解題」大瀧啓裕 -
「故アーサー・ジャーミンとその系譜」が印象的。主人公が自分の系譜を調べていくと実は……な展開を持つラヴクラフト作品は複数あるが、これもその例の一つ。
「狂気の山脈にて」は冒険風味を味わえる作品。「ピックマンのモデル」は描写が要を得ていて面白く、「宇宙からの色」は科学的な(?)律儀さが現れていて楽しい。個人的に比較的好みが多い巻か。 -
巻頭「宇宙からの色」がよかった。
怪異が続発し、原因は多分アレだ!
と察しがつくんだけど、
気づいたときには手遅れ……ってヤツで。
あらゆるものが少しずつ汚染され、
なす術のない人の心も蝕まれてゆく、と。
「狂気の山脈にて」は、
E.A.ポオ「アーサー・ゴードン・ピム」へのオマージュ的作品。 -
18年前に購入したもの。自分自身ひさびさにこの世界にはまっているので、読み返してみる予定。
肝心の「狂気の山脈にて」が、くどくてなかなか読み進まないなぁ…