英国クリスマス幽霊譚傑作集 (創元推理文庫)

制作 : 夏来 健次 
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488584061

作品紹介・あらすじ

英国ヴィクトリア朝時代、ディケンズ『クリスマス・キャロル』がベストセラーとなって以降、クリスマスの訪れに伴って、出版社は作家に怪奇小説の新作を依頼し、特別なシーズンの贈り物として大衆に届けた――幽霊をこよなく愛するイギリスの国民性に根ざすこの慣例から生まれた知られざる傑作13編を、数々の怪奇幻想小説を紹介する翻訳家が精選して贈る日本オリジナルアンソロジー。集中12編本邦初訳。

感想・レビュー・書評

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  • 懐古文庫 | diary
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    英国クリスマス幽霊譚傑作集 - チャールズ・ディケンズ 他/夏来健次 編訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488584061

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    もう寒くって炬燵の中で丸くなっているのに、これ以上冷やしてどうする?

  • ヴィクトリア朝英国、クリスマス幽霊譚のアンソロジー。
    本邦初訳の作品を中心に13篇を収録。
    クリスマス・ツリー チャールズ・ディケンズ
      ・・・クリスマス・ツリーから拡がる空想と幽霊譚の散文。
    死者の怪談 ジェイムズ・ヘイン・フリスウェル
      ・・・悪魔によって甦った男が会いにいった恋しい女の正体。
    わが兄の幽霊譚 アメリア・B・エドワーズ
      ・・・深夜、微風に乗って聴こえてきたのは、あの旋律。
    鋼の鏡、あるいは聖夜の夢 ウィリアム・ウィルシュー・フェン
      ・・・鋼の鏡に現れたのは我が妻。友との約束を違え、
        急遽帰宅した男の元に届いた知らせとは。
    海岸屋敷のクリスマス・イブ イライザ・リン・リントン
      ・・・その屋敷に越したのは必然か?過去の悲劇が暴かれた。
    胡桃邸の幽霊 J・H・リデル夫人
      ・・・現れる幽霊の少年の悲惨な過去。だが、救いが訪れる。
    メルローズ・スクエア二番地 セオ・ギフト
      ・・・この家には誰かいる。だが家政婦は頑なに否定する。
    謎の肖像画 マーク・ラザフォード
      ・・・人生の節目に現れた美女は、変わらぬ美貌を向けた。
    幽霊廃船のクリスマス・イブ フランク・クーパー
      ・・・鴨撃ちで乗り込んだ廃船で過ごした、恐怖の一夜。
    残酷な冗談 エリザベス・バーゴイン・コーベット
      ・・・叔母を怖がらせる怪談が起こした悲しい顛末。
    真鍮の十字架 H・B・マリオット・ワトスン
      ・・・邪悪な場所の幽鬼に憑りつかれた、彼女の運命。
    本物と偽物 ルイーザ・ボールドウィン
      ・・・悪意の無い悪戯であれど、幽霊を侮ってはいけない。
    青い部屋 レティス・ガルブレイス
      ・・・暴かれる真実。部屋の憑き霊は幽霊ではない。あれは・・・。
    編者あとがき―聖き夜、怖き宵

    ヴィクトリア朝の雰囲気で彩られる幽霊譚13篇。
    主にクリスマス、或いはその時期の物語で、怖い話有り、
    真相はよく分からぬ話有り、ともあれ登場する幽霊は様々。
    この時代の幽霊怪談はこういう感じなんだなぁと、
    味わうのも、また良し。ディケンズの散文は、
    当時読まれていた本についてが分かり、参考になりました。
    物語としては、終盤に救いが訪れる「胡桃邸の幽霊」と
    リアル感抜群の「幽霊廃船のクリスマス・イブ」、
    家政婦が語る謎の解明「青い部屋」が良かったです。

  • タイトル通りヴィクトリア朝期英国、それもクリスマス限定でなくちょうどこの時季を舞台にした幽霊譚13編。内12編が本邦初訳だそうだが、全体を通しての味わいは期待通りだった。

    好みの作品いくつかについて。
    ・クリスマスの日の情景を描いたエッセー的なC.ディケンズ「クリスマス・ツリー」。ツリーや種々の飾りに纏わる思い出話は次第に昏い色を帯びていき……。ツリーが造り出すクリスマス、そして冬の夜の光と影。

    ・「海岸屋敷のクリスマス・イブ」E.L.リントン
    イングランドの西端コーンウォールの家を購入し移り住んだ若い夫婦。妻は家の管理人ベンリースという男に言い知れぬ嫌悪感を抱く。その後悪夢を繰り返し見るようになり精気を失って行く妻。心配した夫は妻の母親を呼び寄せるが……。
    荒涼とした冬のコーンウォールの雰囲気も相俟って何とも陰惨な話。ただし10年以上土中に埋められていた(ネタバレ回避)の描写には少しツッコミたくなるのだが、これもコーンウォールという土地の為せること?

    ・「メルローズ・スクエア二番地」T.ギフト
    翻訳業を営む主人公が借りた一軒家で体験した怪異が綴られるが、風評被害を受けたと家主から訴えられたことに対する弁明―という体で書かれ、明確な解決もないまま新たな情報を求めている……というラストは何となく今流行りのモキュメンタリー仕立てに通じるものがあるようにも感じられる。尊大で何か秘密を知っていそうな不穏な雰囲気をまとう家政婦のキャラクターは「海岸屋敷の~」のベンリースと似たところもあるが、謎が多い分より印象に残る。

    ・「幽霊廃船のクリスマス・イブ」F.クーパー
    沼沢地での鴨猟の最中、廃船で一夜を明かす羽目になった男の体験。
    漆黒の闇の中、何か異様なことが起きている物音だけがするという不可解な怖さと、朽ちた船内で酷く不安定な足下と寒さという物理的危機。この二重の恐怖は―明記されていないにせよ―心霊怪談であると同時に“監禁テーマ”恐怖譚の巧みな変奏とも読めるような。

    ・「本物と偽物」L.ボールドウィン
    クリスマス休暇に大学の学友2人を実家に招いた青年マスグレイブ。修道院の跡地に建てられたこの邸宅に幽霊が出るらしいという言い伝えの話が出たことから、幽霊の有無について論争になる3人。否定派のローリーは2人を驚かすある悪戯を企むが。
    幽霊の存在について肯定、懐疑、否定の三派に分かれるがそれぞれの主張が面白い。彼らは近所に住む若い姉妹とも親しくなって、どこか青春もののような雰囲気も帯びるだけに、一気に暗転するようなラストが一層効いている。

    ・「青い部屋」L.ガルブレイス
    四代続いて或る名家に仕える家政婦が語る、屋敷内で封じられていた部屋の逸話。
    発表されたのがドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズ初期と時代が重なることもあってか、部屋の怪異を解き明かす人物のキャラクターは、ヘッセリウス博士とジョン・サイレンスの間を埋めるゴーストハンターキャラの魁とも読める。それだけに著者の経歴が不詳で作品も少ないというのが何とも残念(著名な作家の別名義ってことは……ないよなぁ)。聞き手(という体の作者)の補足によって怪異の正体が明かされるラストが鮮やかで、その真相もガジェット自体は古典的であるのにどこかモダンホラーに通じている印象。

    冒頭の「クリスマス・ツリー」が発表されたのが1850年で掉尾を飾る「青い部屋」は1897年。半世紀の間に発表された作品を年代順に読み進めることで、描写されるヴィクトリア朝の英国人や社会通念、その推移みたいなものを、怪談そのものの変化と共に垣間見れる―ようにも感じられた。

    定番として常に店頭で手に取れるようにしておいて欲しい1冊。

  • ゴーストストーリーが13篇。アドベントカレンダーのように、クリスマスまでに毎日1話ずつ読む、というのはどうでしょう。

    どれもそれぞれに面白かった。

  • ヴィクトリア朝期に書かれた英国怪談の選集。当然のように古式ゆかしく、雰囲気たっぷりだが、もうひとつのクリスマスの方は関連がもうひとつ希薄。どこがクリスマスだったっけ?と読み終えて首をひねるような作も多いがこれはご愛敬。基本的に幽霊が出ましたで終ってしまうお話ばかりなので、今読んで怖いか問われると正直微妙。それより世知辛い現代人の目からは浮世離れしているようにさえ思える、悠長な雰囲気を愉しむものだろう。その中では読み物としてモダンな「青い部屋」とすっきりしない感じが後を引く「メルローズ・スクエア二番地」あたりを押す。

  • これこれ!
    怪談はこうでなくっちゃという見本のような一冊。と言ってもまだ読み始めたばかりだけれどね。
    ヴィクトリア朝怪談というだけで手にして幸せな一冊。

  • 英国では定番のクリスマス怪談。寒い時期にさらにぞくっとする物語です。どちらかといえばどれもひそやかな恐怖を描いた作品ですが、それでも怖いものは怖い。
    お気に入りはセオ・ギフト「メルローズ・スクエア二番地」。オーソドックスな幽霊屋敷もので、しかしもともとの因縁の正体がいったい何だったのか、どのような出来事があったのか、がはっきり明かされないところがなお怖い作品。フランク・クーパー「幽霊廃船のクリスマス・イヴ」も怖いし、嫌な作品でした。じわじわ来る感じ、そしてじっとりと湿って冷たい恐怖を感じさせられます。
    J・H・リデル夫人「胡桃邸の幽霊」はジェントル・ゴーストストーリーといえるかも。ほっとさせられる読み心地です。

  • 年末にかなり面白いゴーストストーリーに出会えた…!
    (クリスマスには間に合わなかったが)
    心霊スポット・事故物件が持て囃される幽霊の国・イギリスらしい味わいのある怪談ばかり。
    名物の古い屋敷に染み付いた幽霊譚はもちろん、異色の廃船での心霊談、美しい風景描写が際立つヨーロッパアルプス版山の怪談、年の瀬の薄暗さのある幻想文学…と、違った風味の、ほどよい長さの作品でまとめられて、違った雰囲気を味わいながらサクサク読める。
    あいだにある「胡桃邸の幽霊」は箸休めにとても良い一編。
    「青い部屋」の面々はキャラが立っており、このメンバーでの別な話も読んでみたい気持ちになる。

    クリスマス・年末には、キリスト教より古いケルトなどの世界観では妖精や異界の住人が顔を覗かせるという。
    キリストや聖人の誕生日や祝日も、元はこれら古い信仰の影響を受けているとか。
    それを思えば、「クリスマス・キャロル」含め、この時期に幽霊が顔を出して、こちらがそれらを出迎えるのもなんとなくわかる気がする。

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