スピリット・リング (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (539ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488587017

作品紹介・あらすじ

魔法の素質は本物でも、女の子ゆえに魔術の道に進ませてもらえず、かといって持参金不足で結婚もできずに悩む、年頃のフィアメッタ。父親は大魔術師にして公爵に仕える金細工師。だがその父はいまや息絶え、その強力な霊は邪悪な者のもつ“死霊の指輪(スピリツト・リング)”に囚われようとしていた! 黒魔術から父を守るため、炎の乙女が立ち上がる。時代はルネサンス、恋と冒険の歴史ファンタジイ。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公が女の子だからという理由で行動や発言を制限される展開が度々あり、本編を通しそれが改善されていくのかな?と読み進めたが、根本的な解決には至らず。穿った見方なんでしょうが父の、夫の、男性の指導に従い慎ましくあることが美徳という着地をした感じがあり、彼女自身が認められる展開が読みたかったなと思いました。トゥールのお話です。

  • ロイス・マクマスター・ビジョルド祭りを極個人的に開催中で、執筆順にマイルズシリーズを読んでいたところ、「バラヤー内乱」の次にあたる本書を実は入手していなかったことに気づいてAmazonで即ゲット。知らない間に絶版になり、復刊していたらしい。今となってはSFとファンタジーの堂々の二本立てが看板のビジョルドだが、キャリアの初期はマイルズシリーズを中心としたSFのみの期間が長く、間にポツンと本書がはさまっている。あまり受けなかったのかなあ、面白くないのかなあ、とドキドキしながら読み始めた。
    物語の舞台はルネサンス期イタリア北部。普通の時代小説のような感じで始まるものの、呪いよりも理論だった「魔術」がそこここに顔を出し始め、コボルトは出るは死霊は出るわとだんだん世界がずれていき、最後は特撮映画のようなド派手な立ち回りの見せ場(私の頭の中では「大魔神」的な映像がぐるぐる)がたっぷりサービスされるという、あれもこれも詰め込んだファンタジー大活劇でした。イメージとしては「映画『陰陽師(野村萬斎主演)』イタリア女子版」って感じか。読み始めに心配したよりは面白かったんだけど、ビジョルドにしては奥行きがあまりなく、めでたしめでたしの物語的であった。
    ビジョルド作品らしいところといえば、人物造形の妙。主人公二人はもちろん、登場人物全てが悪役も含めとても魅力的で、続編も読みたい、遡って両親編も読みたい、スピンオフでもなんでもいいからもっと読みたいと思わせる。脇役のモンレアレ様の若き日の冒険とかあったらめちゃめちゃ読みたい。著者本人もシリーズ化したいと思っているかのような伏線があったりするのだが、今に至るまで出ていないということはもう飽きちゃったのかなあ。残念。


  • ルネサンス期のイタリア、死者の魂を指輪に封じこめる魔法をめぐっての物語。しばらくぶりの「ページ繰る手が止まらない」系の本だった。
    フィアメッタとトゥールは一緒に冒険をするのだろうと予想(期待?)していたのだが、意外とそうでもなく。しかし、これはこれで良かった。
    キャラクターの描写が生き生きしているし、生活感も感じられる。華やかな近衛隊長ウーリと素朴な坑夫トゥールの兄弟、とても良い。
    真っ赤に焼けたブロンズのペルセウス像(ウーリの魂入り&メドゥーサの首つき)が鋳型の中から身を震わせながら現れ、街の皆を従えて城へ攻め上がっていくところ、圧巻壮観。

  • なんで「推理文庫」所蔵なのかはいまいち理解不能だが、マイルズシリーズの作者が送る、冒険ファンタジー。

    舞台はルネサンス華やかりしイタリア。高名な錬金術師であり、大魔術師として名高いプロスペロ・ベネフォルテを父に持つ、フィアメッタという少女が主人公。


    父の手伝いをしながらこっそり魔法の勉強もして、そして父のところにお城の仕事でくる近衛隊長に恋心をいだき、結婚していく友人たちに嫉妬をし、女の子だからと本格的に魔法を教えてくれない父に怒りを覚えるフィアメッタ。

    領主の一人娘の結婚式の当日、その結婚相手に城をのっとられることからフィアメッタの生への冒険が始まる。
    敵はロジモ公、目的は父の魂の「死霊の指輪=スピリット・リング」化の阻止。相棒は、淡い恋を抱いた近衛隊長の(彼とは似ても似つかぬ田舎男だけど)弟、トゥール。

    しょっぱなからハラハラドキドキの連続。フィアメッタの父の芸術とも言える魔法の数々や、「スピリット・リング」の作り方、トゥールの優柔不断っぷり、フィアメッタの逃亡シーンなどなど見所満載となっている。

    フィアメッタの恋の相手、近衛隊長の弟思いが見られるシーンや、ベネフォルテが娘を思うシーンなど、家族愛がテーマなのか、とも思えてしまうほどである。

  • 錬金術+魔法。面白い要素がいっぱいあったから、倍の長さでゆっくり書いてもよかったかも。

  • 久方ぶりの翻訳ものファンタジー。言葉が堅いなあ。
    イタリア16世紀ごろを舞台にした宗教と魔法と鉄火な女の子の話。
    当時の中流以上の女の子は職にはつけず、親が用意してくれる持参金を持って嫁ぎ、未亡人になって初めて社会的地位と自分の財産が持てる。中々思うようには生きられないのだけれど、見つけた伴侶がその辺大まかな田舎のスイス人なのでやり易そう。

  • マイルズものからビジョルドにはまって、
    「ファンタジーもあるんだ」とこの本を読みました。

    私としてはがっかり。

    小道具とキャラクターばかりばたばたとして、
    ぜんぜん話に入っていけませんでした。

  • 読了:2002?

    2021/4/1追記:いつのまにか表紙が漫画ちっくな絵に変わっていた…前の方が黒人の血が混じっていることとか、負けん気の強そうな感じとか、それでいて少女っぽい感じとかすごく良く出ていたのに。

    海外ファンタジー小説の中では今のところこれが一番好き。

    中世イタリアが舞台で、世界観もしっかりしている。魔法も出てくるが、「毒を載せると無害な塩に変えてしまう塩入れ」とか、「指先程度の炎を一言で出現させる」など、世界観を壊すほどに破壊的な魔法は出てこない(それをうまーく使って、最終章は派手なことをやらかすけれど)。

    フィアメッタは普通の女の子で、この時代では女は常に脇役、結婚しない女は女じゃない、物事が失敗すれば女のせいにされる、などなど障壁がたくさんあり、敵国に襲われるわ、父親が死んで孤児になるわと、困難も次々降りかかるのだけど、すごく気が強くて抑圧に対して逆らいまくるし、精神がたくましくけっして折れないので読んでて気持ちが良い。トゥールに対しては歳相応の女の子でとてもかわいい。

    トゥールは「いいやつ」という言葉が一番しっくり来る。兄のような「いい男」にはまだ遠いかもしれないけど。城に侵入してからの活躍っぷり、フィアメッタに対する純朴な愛情、子どもにやさしいところ、尻に敷かれつつ頼りになるところ、などなど、おいしいキャラクター。

    その他の人物も、単純な性格、単調な人生の者は一人もおらず、みなそれぞれ味があってよかった(ヴィテルリだけは典型的な悪役かも)。ロジモ公フェランテ、フィアメッタの父プロスペロ・ベネフォルテ、モンレアレ司教、みんななかなか一筋縄ではいかない性格をしている。

    お話も、登場人物たちが機転をきかせて状況をくるくると変えていくので読んでいてまったく飽きなかった。また、描写もすごく丁寧で、物語中に出てくる金細工の姿かたち、プロメテウスのブロンズ像を完成させようとフィアメッタ、トゥールと協力者のみんなが奮闘するところなど、目に浮かぶようだった。

    ラストも、主役2人のかわいらしいカップルが困難もありつつ幸せにやっていくんだろうなぁ、と思わせる終わり方で、良い読後感だった。

  • 架空イタリア。魔術師の話。
    マイルズのシリーズとは別物。

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