- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488607074
感想・レビュー・書評
-
あのB級の映画がいけないのだ。読みながらあの映画のシーンが目に浮かぶのだ。ノベライズのような気がしてくるくらいだ。無人島で新しい人間を創造しようとする老いた天才科学者。その秘密を覗き見てしまった青年に襲いかかる恐怖。海野十三、蘭郁次郎、日本でも多くの作家に影響を与えたホラーSFの傑作のはずなのだが…。読まないと気が済まない話ではある。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
動物改造の恐ろしい話ではあるが、この島から脱出した後の、人間社会に戻ってからの話も、何気に恐ろしいと感じた。
-
“「これぞ〈掟〉なり。われら人間ならずや?」”
「自分の研究の犠牲になれ」と高みから他人に強いる系のマッド科学者には「なら自分が同じ立場になってみろ」と思う方ですが、その点モロー博士は話の合間に自らの腿にナイフを突き立て「ほら見ろ苦痛いかほどのものか!」と啖呵を切っていたので黙るほかなかった。危ない人だ。タガの外れた人間の行き着く先に怖気をふるいつつ、いつの日か神を超越せんと挑んだすべてが獣性の前に虚しく敗れ去る姿に思わず涙。
-
[作品]
1896年。原題「The Island of Dr.Moreau」
H・G・ウェルズ 著
[内容・あらすじ]
海難事故に遭遇したが運よく一命を取り留めた主人公のエドワードであったが、成り行きから謎の科学者モロー博士の住む島にたどり着く。
化け物のような風貌の島の住民や夜な夜な聞こえる叫び声がきこえる怪しい島。その島でモロー博士の手によって密かに行われていた実験とは、動物を改造し人間に近づける研究だった。
[感想]
全編通して短くかつ読みやすかった。物語終盤の狂気に満ちた展開は、ハラハラすると同時に動物と人間、自然界と人間界の共通点と相違点を考えさせられた。他にも、モロー博士の動物を人間に近づける理由である、人間の真理を解明するためというヤツは現代の科学全般に通じる考え方なのでは?と思い感心した。
本作で何より驚きなのが、発表された年だ。1896年といえば日本で言えば日清戦争が終わった直後である。だからどうした?という話だが、ついこの間までちょんまげを結っていた人間がぞろぞろいるようなそんな昔にこれほど科学と空想をたくみに掛け合わせた作品が存在するということは、単純にすごいと思うという話である。
本作は100年前の作品だが、我々が享受している様な文化文明も100年後の人類には驚きと感動を持って受け入れられるのだろうか?もしそうなるなら自分自身とはあまり関係ない気がするが、うれしいものだ。 -
人間が動物のようになってしまうのではないか? という恐ろしさを描いた小説。人=善、獣=悪という構図は、西洋的でもあり時代的でもある。獣性の薄気味悪さ、おぞましさがひたひたと迫るような作品。解説も必読。
-
外の世界から隔絶された孤島で行われているモロー博士の実験とは?「人間」と「動物」の境界線を考えさせるSF小説です。
-
フランケンシュタインと似たような感じだが、もっと獣分が多い
フランケンシュタインの方が苦悩が描かれていて好き -
むしろホラーに近いと感じるほどダークサイドなサイエンス・フィクション。獣人たちの異形の姿は想像するだに怖ろしいです。科学によって歪められたものは野性(自然?)により在るべき場所へ戻ろうとしたのでしょうか。