ハイ・ライズ (創元SF文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488629151

作品紹介・あらすじ

ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校まで備えたこの一個の世界は、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の上層部に階層化していた。全室が入居済みとなったある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。中期の傑作。解説=渡邊利道

感想・レビュー・書評

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  • 徐々に崩壊し狂っていく人々の様な、王道ストーリーではなく自然に、何なら爽やかなくらいベースが狂人。そんな狂人達に立ち向かうヒーロー的な存在がいるかと思えば、ただひたすら狂人だった。

    解決しなくていい、ハッピーエンド嫌い、不穏な空気大好きマン。こんな性悪の私がなぜ楽しめなかったのだろうか。
    アップテンポな子守唄聞かされてビート刻みながら揺りかご揺らされている状態なんです。絶対眠れないだろうのこの状態でも、それが続けばいつか慣れ が来る。新鮮さは無くなり 眠ってしまう。

    いつかリベンジを。

  • ロンドン中心部に聳え立つ高層マンション。
    40階建て1000戸、商業施設や小学校もある
    一つの《世界》に生じた異常事態について、
    三人の住人の視点で綴った作品。
    1975年の時点で、
    21世紀現代の俗に言う「タワマンヒエラルキー」を透視・描出し、
    当時の“近未来”消費社会のヴィジョンを提示した怪作。

    25階に住む大学医学部の上級講師ロバート・ラングの
    過去2~3ヶ月の回想。
    マンション上層部、中層部、下層部の居住者が
    共用設備の使用法やマナーなどを巡って
    反目し合っていたが、停電が発生した際、
    37階の住人である女優のペットの犬が溺死させられ、
    また、最上階の宝石商が転落死したことで
    不穏な空気が流れ始めた――。

    階級闘争をスタイリッシュに描いた小説かと思いきや、
    グロテスクなスラップスティックの様相。
    悪臭芬々たる血みどろの無惨絵が展開されるのだが、
    主要登場人物がクールで、語り口がスッキリしているので、
    そのギャップがおかしくて、つい笑ってしまった。

    映画版も観てみたい。

  • 派遣会社から仕事をもらってアルバイトをさせてもらってた頃、よく顔を合わせてた人にばったり会った。二十代の後半だった俺は三十代の中盤になり、三十代の中盤だったXさんは、今年で四十になると言っていた。たった数年のあいだに、なんだかお互い老けてしまった。会社員として、適当な給料を貰って適当な暮らしをし、ばったり会って「時間ある?」「あ、メシ行きます?」と言って軽メシ軽飲みをし、近況を話し、笑い、最低にはならなかったけど最高でもない互いの日常を確認すると、「じゃあ」「また」と笑って散会した。
    帰り道、色んなことを思い出した。若く、貧しく、過剰で、不足していて、現実味のない、無防備な暮らし。仮に時間が巻き戻って、と考えると、背筋に怖気が走る。でも同時に、心躍るような感覚もないことはない。未知数だったからだ、と思う。あらゆることがまるで既定されておらず、どのようにでもなり得る可能性があったからだ、と。当然そこには乞食になる可能性も含まれている。おそらく”怖気”の理由はそこにある。逆に心躍る理由は?自分のことを本当に芸術家だと思っていたことの名残りだろう。表現することがすべてであり、現実はその素材に過ぎなかった。そのように市井から外れるのは快楽の一種だ。そしてその快楽は、嵌ったが最期、容易には抜け出せなくなる。芸術家はホームレスに酷似している。芸術家は犯罪者に酷似している。白線の内側に芸術家が、外側には彼らが存在している。その白線を跨ぎながら、隣人と上手くやることに疲れ果てる人間は少なくない。俺もその一人だった。あるとき不意に、快楽が苦痛へと変転した。幾つかの前触れのあと、夢から醒めたのだ。
    地下鉄のホームは人で溢れかえっている。どちらでもよいことで日常は溢れかえっている。列車がホームに滑り込み、扉が開く。人間が出て行き、人間が入って行く。列車は人間の交換、あるいは循環を済ませ、徐に動き出す。対岸のホームに、ホームレスが立っている。男は汚れを着込み、影のように揺れている。一瞬、あれは俺だ、と思う。正確に言うと、俺であっても何も変わらない、と思う。目前を若い女が通り過ぎる。ウェーブした髪から、いつか誰かが使っていたシャワージェルの匂いを発散させながら。胸ポケットで端末が振るえる。メールだ。どうせamazonか、ゾゾタウンのどちらかだ。

  • バラードはこれまで2作品しか読んだことがありません。扱うテーマは魅力的で本屋でもついつい手に取ってしまうのですが、どうもその回りくどい文体に忌避感を覚えてしまっているらしく、結局レジまでもっていかないことばかり。本書はたまたま古本屋で発見し、もともと興味のある作品であったので、ええいままよ、と購入。

    回りくどい表現は相変わらずでしたが、読みにくいほどではなく、結構すいすいと読み進めることができました。さて、その内容。最初の方は隣人同士のよくあるトラブル。それが苛烈になってきて…までは理解しうるのですが、その後、いつの間にやら狂気が支配してしまいます。狂気の階段を一段一段あがって、というのではなく、気付いたら狂気の霧が濃くなっていた、というそのシームレスさにびっくり。ただ、読み手までその狂気に囚われるかというと、そうではなく、異常すぎる様に途中から引いてしまうのが実態でしょう。隣人トラブルの延長線上の物語と捉えていたところ、予想もしない方向に話が展開したため、親近感が薄れ、気付けば頭のおかしな舞台を遠目で眺めている、といったところかと。

    本作は、バラードの作品の中で「テクノロジー三部作」に数えられるようで、科学技術の産物と人間の関係を追及している模様。そう考えると、最後まで狂気が去らない筋書は物語としてとても魅力的。最後の最後、もしかしたら、正常に戻るかも、と思わせつつ、狂気が更に周りを覆い始める描写には薄ら怖ささえ感じました。
    食べず嫌いせず他のバラード作品にも挑戦してみよう。

  • 1975年に書かれたと知って驚いた。

    隔絶された社会で秩序がどんどん崩壊していく様子が恐ろしすぎて、その進行の様を本を閉じるたびに家族に「この本ヤバい、みんな狂ってく」と吐き出さないとやってられなかったw

  • 理想のマンション生活と思いきや・・・


    人間とは あなおそろしや・・・

  • 超高層マンションがディストピアになるSF作品。住環境から遊離した建物に居住していると人間を歪ませてしまう。

  • 高層ビルに住む人々が、小さな綻びをきっかけにおかしくなっていく話。想像の範疇を超えた……という感じはあまりないし、淡々と話が進んでいく面があるのでスリルみたいなものはないが、普段から平然と平和に生きている自分の環境が当然じゃないかもしれない……という身近な所に恐怖を感じるという面で良い作品だった。

  • 最初に犬を食べてるシーンで、この時代のこの国では犬食いがあるあるなんだ〜と思っていたら、異常性の描写だったらしいことを後から知って笑ってしまった。

  • マンションが内部崩壊していく感じは、なんかやたらと高いビルが好きな香港にはありそうなイメージで、中国人ならこうやるに違いない、この下等民族め!と思いきや白人も一皮むけば一緒だ、というか、そもそもモデルが香港だったりして。
    犬を食ったり、ていうのはまだ許せるけど、まぁ別に腹減ったらしょうがない、だけど、なんでうんこやらションベンを撒き散らすのか。しかも自分の家の周辺にすら。
    それさえなければ後は無問題。

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