時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫) (創元SF文庫 ウ 9-3)
- 東京創元社 (2008年10月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488706036
感想・レビュー・書評
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翻訳と思えない自然な文体で読みやすい。ミステリーっぽい構成と展開も良し。下巻も期待。
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SF
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地球が正体不明の膜に覆われ、地球内外で時間の進み方が極端に変わる世界。地球での1秒が、膜外では数年になる。異星人の仕業だと思えるが、正体を見せないし、目的を明かす行動もない。地球だけで時間がほぼ進まなくなり、邦題の「時間封鎖」という表現がものすごくしっくりくる。時間の流れの差を利用して、火星をテラフォーミングするプロジェクトが動き、成功したかに思える。だが火星も時間封鎖の目に遭ってしまう。ここまでが上巻の出来事。火星と地球の関係はどうなるのか、時間封鎖は解けるのか、解けた場合に地球に起きることは何か、疑問ばかりが出てくる。これをどうまとめるのか、下巻に期待する。
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どんだけ頭が良いんだこの作者は。終末を目の前にした時人間は何かしらの拠り所を求める。それは”科学”か”宗教”のどちらかだ。これは何も物語の中だけの話ではなく大なり小なりこれまでの歴史の中でもそうだったのではないだろうか。SF的な要素だけではなく、タイラー・デュプリーの視点とその二人の親友の行動を通して人類の終末を描いた壮大な作品。その計算され尽くした緻密な構成には本当に舌を巻く。むしろその点だけをとっても感動すら覚える。実に面白い作品だ。
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ある夜、突然いっせいに空から星が消える。そのとき地球は、何者かによってすっぽり皮膜のようなものに覆われてしまったのだ。同時に、地球上の時間だけが一億分の一になってしまっていた…。
いったい誰が?何のために?という疑問は最後の最後まで明かされない。わけのわからない状況に直面したとき、ひとは「科学的に理解するか、それとも宗教的に認識するかの二者択一を迫られる」。前者がここではジェイソンであり、後者がサイモンである。その仕方は正反対だが、ふたりはこの《スピン》と呼ばれる不可解な現象を自分なりに理解しようと努める点ではコインの表と裏のような存在といえるだろう。
《火星移住計画》《仮定体》といったキーワードは登場するけれど、この小説の背骨にあたるのはやはり人間を描くこと、ゆるぎない存在と信じていた地球がもはやグズグズと崩壊してゆく頼りない足場に過ぎないと知ったとき、ひとはなにを考え、どう行動するか、という人間のドラマを描くことにあるようだ。
いわゆるSFを読んだのは2冊めだが、人間のありようがしっかり描かれていること、訳文がこなれていて読みやすかったこと、そのふたつのおかげで最後まで一息に読み進むことができた。
追記 ただし…
ぼくの理解力不足だとは思うが、皮膜の外側に移住した地球の人間がなぜ「外側の時間」の制約を受けないのか?最後までなんとなく腑に落ちないままだった。 -
ある日空から星が消えた。変わらず太陽は昇る。しかしその時、地球の外では恐ろしいことが起きていた…
傑作。おもしろいSFであると同時に、これは少年少女の成長の物語である。 -
導入部を飛び飛びに読んだこともあり当初の印象はSFというよりも青春小説風・・・と思っているうちにのめりこんでしまいました。まだまだ凡人の私には何がどうなるのか想像つかず、わくわくしながら下巻に取り組むところです。火星人がブラッドベリの「火星年代記」他、火星についての小説をどんな風に読んだかを考えると面白い。
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会社の同僚から借りた本。SFですが、かなり面白いです。
地球の外では一億倍で時間が流れる!という発想の奇抜さだけに頼らない、確かな著者の筆致と、しっかりと描かれた人間模様が魅力的です。表現もアカデミックですが読みやすく、サクサクページが進みます。
下巻の展開が気になるところです。
ただ、分からないのが、カバーの巻末にJPホーガン作品が紹介されているところです。この作品はホーガンのセカンドネームで出しているのでしょうか……? -
これぞSFの王道!地球が何者かによって時間封鎖を受け、地球の外は1億倍のスピードで時間が進むという荒唐無稽な設定。
人類の誇る英知がいかに無力であるかを骨の髄までわからせてくれる上巻の展開は見事。
上巻だけで、一つの物語のクライマックスになるくらい、読み応え充分。
下巻に至るまで、期待と驚きの連続。 -
SFパニックものだと勝手に勘違いをしていた。もちろんSFなんだけれども、主人公とその友人姉弟との人間関係が語られていて、普通のドラマとしても面白く、翻訳物とは思えないほど読み易い。そして問題のスピン。その性質を逆手にとり火星にあんなことをしてしまうとは…。下巻で仮定体の正体は明かされるのか?