- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488765019
作品紹介・あらすじ
犬に似た奇妙な生き物を育てる三姉妹の人生をユーモラスに描き、第1回創元SF短編賞佳作となった表題作、郊外のぼろアパートの住人たちの可笑しな日々「シキ零レイ零 ミドリ荘」、十五人姉妹が暮らす孤島を見舞った異常事態「母のいる島」、ウェブ上に現れた子供の日記から始まるシュールな冒険「おやすみラジオ」、ねぶたの街・青森を舞台に時を超えて紡がれる幻想譚「巨きなものの還る場所」の全五編を収録。
感想・レビュー・書評
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「うどん キツネつきの」☆☆
ある日女子高生が拾ってきた不思議な犬が狐につかれていて宇宙人とも関係があって?
何を読まされているのか全く分からなかった。
読書を始めたばかりのころはそういうこともあったが、久ぶりに何の話なのか理解できない作品に出会った。
「シキ零レイ零 ミドリ荘」☆☆
1作品目でわけのわからない作品を書く作家だということはわかったので身構えながら取り掛かったところ、わずかながら理解が及んだように思う。それでも奇想天外すぎて感想を書くまでに至らない。
在日外国人とか低所得者向けのオンボロアパートの住人たちの間で起こる奇怪な非日常的日常。
「母のいる島」☆☆
母から特別な訓練を受けている十五人姉妹のお話。
だから何?という感想しかわかない。
「おやすみラジオ」☆☆☆
主人公は、不思議なラジオを拾った小学生が書いているブログを読んでいる。ある日、ブログに書かれている町とそこでの出来事は、主人公が住む町と同じであることに気づく。主人公は小学生たちとラジオの正体を追っていくが、そこには同じように彼らを追ってきた人たちが集まり始める。実はラジオについて記述されているのは主人公が読んだブログだけではなく、他のブログや媒体でも発信されているものだった。
ここで、これはテロ行為なのではないか?という考えに至る。インターネット上で攻撃を予告したり、テロ行為を煽動するような内容を発信することはアウトだが、ほんの少しだけ民衆を動かす内容を媒体や形を変えて発信した場合はどうだろうか。小さな一つ一つの行動が全体として大きなテロ行為になるのだとしたら。
やっと私にも理解できる作品が出てきてよかった。社会や集団の大きさというか不確定さというか、そういう怖さがあった。
「巨きなものの還る場所」☆☆☆
登場人物も時代も違うシーンが次々に入れ替わるのでまた話についていけなくなりそうだったが、共通するのは巨大なものが登場するという点。いわく、巨大なものには一つに戻ろうとする力がある。
物語に登場する巨大なものと同様に、それぞれの物語が構成要素として一つの大きな物語につながっていくのが面白かった。 -
タイトルで話がイメージできず、
妙に印象深かったので読んでみた。
なんだか不思議な話が多かったが
こういうの嫌いじゃない。 -
2020-12-27
少し不思議系かと思ったら、わりとガッチリ系。
ふわっと終わるのが多いので、好みは分かれるかも。
1番好きなのは、「母のいる島」かな。オチがあるというか、スッキリした。 -
お、おう。子どものときに、オチのないこういう感覚のマンガをかきたくなるよな〜!子どものときって、オチは要らないよな〜!作者さんの脳とアウトプットが直結している感覚に共感した。夢のなかの出来事みたい。アウトプットする時、寝ぼけてるか、お酒のまないと、こういう脳の自動書記みたいな感覚にはならないよな〜。
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さっぱりおもしろくなかったが、「これはおもしろく感じなきゃ」と気負うこともなく、さくさく読めたので逆に良かった(?)
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タイトルにきつねが入っているので読んでみた作品です
創元SF文庫というレーベルのこともあり、SFを読むつもりで飲み始めたらかなり面食らう作品でした
日常寄りの怪奇小説なんだろうか、でもわりとハチャメチャなところもある、ちゃんと説明がされてる話でもなく、結局アレってどういうことだったの? と明かされないままで終わる話ばかりだけど、でも想像の余地はちゃんとあるし、月並みな表現ですが、説明されたら野暮になる、感じとる作品に思います
でもそれはこの作家さんの持ち味なんだろうな
あえてカテライズしてしまうなら、日常系SFかも知れない
諸星大二郎さんや高野文子さんの作風にも通じる、日常の中にしれっと異物が混じり込んで、馴染んで、異世界へと変貌するさまを見せながらも日常はそれはそれとして進むというような
登場人物も、そうした異物や怪異に対して騒いだり構えたりするタイプではなくて、淡々とやるべきことをする、自分のペースは崩さない独特な図太さ(や鈍さ)がある、それが心地よい作品集でした
短編集なので各話の感想も記載します
『うどん、キツネつきの』
瀕死の子犬のような謎の生物を拾って育てる女の子とその姉妹のお話ですが、その家族や同級生、交際相手との話にも及んで、これは何の話なのか? と訝しく感じるけど、読み込めば大きなひとつのテーマに貫かれている骨太な作品
でも姉妹とその回りの人たちとの会話は、軽やかでリアルでもある その描写は優しくてユーモアもある
結局、うどんは何者だったのかっていうのは些細な話で、このお話が描いてることは、だって放っておけない、何とかしてあげたい、そばにいてあげたい、そんなある意味ありふれた感情、エゴの話だと感じました
『シキ零レイ零 ミドリ荘』
おんぼろアパートに住む、個性豊かでちょっと困った住人とその大家さんと孫の群像劇のお話
昔の漫画にこういう、アパートものってあったよなあなんて思った 住人の個性と困った感じが生き生きしており、ちょっと人情ものっぽいエピソードもあって、でも普通に宇宙ネタ(らしきもの)も忍び入っている アニメっぽさのかわいい作品
『母のいる島』
十五人もの娘を出産し、十六人目の娘を生んで満身創痍の母を見舞うために、育った島に久しぶりに集まった娘たちが、その異能を発揮して襲いかかるテロリストを撃退する話
ピンとこないとこもありつつ、勢いが凄いのと、古事記のイザナギとイザナミの問答のエピソードを思わせる箇所があったので、古事記好きは大喜びします
そうだよな、殺すほうじゃなくて産むほうが女の神であってほしいよな、なんて思ったりもしました
『おやすみラジオ』
この短編集の中では、いくぶんかシリアスで怖い、都市伝説やネットミームに繋がる話
好奇心を持って、愛読しているブログの書き手が身近に居るのでは? と調査を初めてしまうのは、止めとけ止めとけと思わなくもない
『巨きなものの還る場所』
短編集の最後の作品らしい、堂々とした物語
この世界の色んな場所の色んな逸話、人間が作り出した様々な芸術品、工芸品、巨大な機械、
そこに入り交じるのは、やっぱり人間が古くからの生活の中で産み出して伝承されてきた神話、
『うどん、キツネつきの』でもあったそれぞれの物語の断片がじわじわと収束されていき、そして驚く絵面の大破壊が発生する場面はとんでもない荒唐無稽さがあるけれども、そこにあるのはきっと、再生とか、復活とか、蘇りとか、産まれ出るものの強さで、そう思うとこの短編集の物語はすべてそうしたテーマに沿ったものだったのかも知れない、なんて感じたのです -
★意味、完全に解ってる言葉しか使っちゃいけねえなんて、誰が決めたんだよ(p.86)
よく把握できないままになんとなく魅力的な作品群/わかろうとせず気分で適当に読んでしまうのが吉かも/「シキ零レイ零 ミドリ荘」かなり好きです/SFとかカテゴライズする必要もないかも。
【一行目】「今、あのゴリラ啼かなかった?」
【うどん キツネつきの】ヘンな犬を拾った三姉妹は「うどん」と名づけた。《長生きして死ぬならそれが幸せだと・・・・・・少なくとも私はそう思うよ》p.32
【シキ零レイ零 ミドリ荘】ミドリ荘のミドリと住人たち/キイ坊/自称元宇宙飛行士のおっちゃん/背の高いベトナム人のグェンさん/自分の中で迷子になるタニムラ青年/顔文字でしゃべるエノキさん/王さん/キクイムシ/行方不明の犬たち/《まーね、私だって、両親が必要かと言えばそうでもないタイプの子供だし》p.70/《なにより、二人は同じ日本語を喋っているつもりだがお互いの言葉をほとんど理解していないようだった。》p.88/《読む人が文字だって思えば、傷だって文字でしょ》p.100。
【母のいる島】島の十六人姉妹/黄泉比良坂。
【おやすみラジオ】謎のブログ/大きくなっていく物体(ラジオ?)/複数のブログ/調べると整合性が取れなくなる/ノアの方舟/《虹も乗り物に乗って旅をしたいのかもしれないと考えた。》p.215。
【巨きなものの還る場所】いくつかの話/巨きなものは動きだす/ねぶた/シャガール/オシラサマ/学天即/《意識とか、魂みたいなものは、ひょっとしたら私自身にあるんじゃなくて、所属している集団とか、場所のほうにあるのかも。そこにたまたま私みたいなひとつの生き物がいるから、私に魂があるように見えるだけで・・・・・・》p.304 -
〈すこしふしぎ〉な意味でのSF短編集。収録作は5作。どの作品も素晴らしい。最後の『巨きなものの還る場所』は、他の収録作よりもとぼけた雰囲気は控えめ。そのぶんスケールも大きめ、いや巨きめな傑作。