- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488803056
作品紹介・あらすじ
柿埼先生に、手紙を書こうと思う――中学三年になる春、山坂百音は、かつて通っていた小学校の元教員・田児あやめにそう伝えた。三年半前に起きたできごとについて、五年三組の担任だった柿埼に向け当時の思い出を綴ってゆく。「どうでしょう。今年一年、このクラスのみんなでゲームをしませんか?」柿埼の考案した奇妙なゲーム〈ニンテイ〉。それが彼らの未来を大きく左右する事を、このときは誰も予想していなかった。衝撃の傑作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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netgalleyにて読了。
6年ほど前に、新聞の書評で紹介されていて読んでみたいと思っていた小説。
思っていた以上に内容に重みがあり、読みがいのある小説だった。
主人公の中学3年生の百音が、5年生だった当時を振り返り、担任だった柿崎に宛てた手紙を書くという形で始まる小説。
小学5年は、微妙な年齢だ。
思春期の入口にあるが、その成長度合いは、精神面でも肉体面でもかなりバラつきがあり、だからこそクラス内の力関係やイジメの問題も起こりやすい。しかし低学年と違って、表から見えにくいことが多いのも事実だ。
教師が管理し、上から押さえるのではなく、自分達の中で解決を図る力を養わせるために柿崎が考えたのは「ニンテイ」という名のゲーム。
柿崎の考えは功を奏し、子ども達は「ニンテイ」のルールを守りつつ、自分達の力で問題を解決しようとする機運が生まれてきつつあった…。
読んでいると、小学5年生ってこんな感じだったな、と思い出される。
子どものようでいて、自立の芽もきちんと育ってきている。
途中から不穏な空気が流れ始め、緊迫する場面が続く。
最後に中学3年の百音が再び登場するが、その成長した姿に、見守ってきた保護者のような気持ちにさせられる。
決して話を丸く収めない、作者の筆致にも感服した。
小学校が舞台の話だが、中学生でも読む子を選ぶ内容だと思う。
2022.10詳細をみるコメント0件をすべて表示