個別最適な学びと協働的な学び

著者 :
  • 東洋館出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784491047263

作品紹介・あらすじ

有能な学び手としての子どもの姿から突きつけられたのは、
「教師は、何のためにいるのか」という問いでした。
中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」(答申)で提起された、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」は、一校のカリキュラムの中でどのように実現可能なのか。学習指導要領改訂において重要な役割を担い、学校教育の課題に現場と協働して向き合い続ける著者(奈須正裕/上智大学教授)が、山形県天童市立天童中部小学校を舞台に考える。

○実践校:山形県天童市立天童中部小学校

教師の「理解」と「覚悟」をベースに、4つの授業の型を意図的・計画的に組み合わせ、集団の中で個が育つことを意識した教育活動に取り組んでいる。「子どもがする(子ども主体の)授業」の具現化に向けて研究を推進しながら、「子どもたちが、今も将来も幸せにくらすこと」の実現を目指している。

○実践提案寄稿ー先達の授業提案をもとに、「教師の専門性」とは何か分析するー

授業提案1 佐藤卓生(山形市立鈴川小学校教諭)小学校国語科
授業提案2 齊藤一弥(島根県立大学教授)小学校算数科
授業提案3 大谷敦司(山形県天童市立天童中部小学校長)小学校社会科

感想・レビュー・書評

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  • 最近話題になっている個別最適な学びと協働的な学びについて、山形県の天童中部小学校での実践をもとに書かれている。
    子どもが授業を進める自学自習、子どもが単元丸ごと学習計画を立てて進めるマイプラン学習、学ぶ内容も方法も自分で決めるフリースタイルプロジェクトという、3つの特色ある取組が紹介されている。
    これまではどう教えるか、どんな展開で進めるかなど、「自分が教えるなら…」という視点を当たり前のように持っていた。しかし、子ども主体の学習を行うにあたって、手引きを作ることや環境を整えることなど、教師のやるべきことも大きく変わると感じた。
    また、その主体的取組も、全授業の2割ほどという点も、現実的で実践できそうだと感じた。主体的に学習に取り組む態度をはかる指標になる粘り強さと自己調整も、この取り組みを通して見とりやすくなるように思う。
    2学期。まずは社会科の学習で自学自習を行い、実践を深めていきたい。
    キーワードは理解と「覚悟」!

    本書の中に出てくる奈良女附属小の取り組みも気になる。

  • 職員室でおすすめされて読みましたが、私もおすすめしたいです。
    読みながら唸りますし、納得しますし、ひらめきます。

    他の方々がうまいこと評価と感想をまとめられています。
    私はただただ多くの先生におすすめできれば…と思い、投稿させていただきました。賛同が得られたら、学校はもっとおもしろくなる気がしてます。

  • 現在叫ばれている「令和の日本型学校教育」の構築を目指してについて、山形県天童市天童中部小学校を舞台にわかりやすく解説した本です。
    個別最適化な学びと協働的な学びの実践を具体的に述べており、これからの教育の指針となる一冊とも言えます。
    【印象に残っている箇所】
    ①マイプラン学習
     マイプラン学習とは、一般に「単元内自由進路学習」と呼ばれる学習方法で、一単元分の学習時間を丸ごと子ども一人一人に委ね、各自が自分に最適だと考える学習計画を立案し、自らの判断と責任で自由に学んでいくスタイルである。

    ②ジョン・キャロルの提起(P 137)
     キャロルは、誰でも十分な時間さえかければ、どのような学習課題でも達成することができると考える。
     キャロル流で考えれば、話し合いで活躍できる子どもとできない子どもの違いは優秀さではなく、それぞれの学びのペース、必要とする学習時間に他ならない。
    しかも、従来の学習スタイルではタイムリミットをどこに設定するかは教師次第で、そもそも何を持って速い、遅いが決まっているのかさえきわめて恣意的であり、そこにどれほどの合理性なり妥当性があるのか、実にあやしいのである。

    ③自立的な学びを進める子どもを目の前にして(教師の存在意義)P245
     教師の都合とタイミングで教える授業から、子どもたちの都合とタイミングで学ぶ学習への転換である。今学校学習は、教師による情報の伝達を基本的な作業とするあり方から、子どもたちによる意味の創出を中心的な主題とするあり方へと大きく姿を変えようとしている。
     そこで問われるのが教師の存在意義である。
     まずは新たに主要な教育方法となった学習環境整備や、これまで以上にその重要性が高まってくる子どもの見取り、そしてタイミングよく行われる個別的な支援は、教師がなすべき大切な仕事の数々である。
    *さらに詳しく教師に求められる専門性については、最終章に書かれてある。

    ④国語のおける「内言領域」(P252)
     子どもがすらすらと話すことができることは、実は内言領域において既にある程度整理され筋道立てられている内容である。こうした内言は外言化されていなくても、既に子どもが形式知的に捉えている内容であるため、これを発話という形を取っても外言化しても、単に内言領域に形成された原稿を読むような状態であるため、内言領域を豊かにするために十分なものであるとは言い難い。
     内言化が不十分な時の子どももからまず話されることは、整理されたり筋道立てたりしていないためにスムーズでなく、言い淀んだり、言い直したり、あるいは途中で沈黙したりする場合が多い。こうした内容について、問い返しなどの言語化できるような働きかけをしていくことが必要である。
     このように感覚や感情のレベルで捉えていたことが言語化されたり、分散的・直感的だった思考が文脈をもつ思考として紡がれたりしていく過程において、内言領域が豊かになるのではないかと考える。

    ⑤今後に求められる教師の専門性 P 286
     その第一は、いわゆる教科等の本質、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を的確に押さえることである。
     第二は、教科教育と生活教育の間に質の高い「知の総合化」を実現することである。教科教育とは文化遺産を基盤とした科学・学問・芸術の教育(教科)である。それは家庭や地域ではなし得ない教育であり、近代学校は教科教育を行うために成立・発展してきた。しかし、それだけでは子どもの十全は学び育たない。
     教科で学んだことを膨大な事実的知識と多様な方法論、そして民主的な話し合いによってこれを吟味し、より納得のいくあり方を求めて不断に更新し続けていく学びの領域、いわゆる生活教育がさらに必要である。
     この二つの学びの領域を充実させるとともに、両者の間に質の高い「知の総合化」を図ることが肝要であり、学習指導要領が強く求めていることである。
     第三は、丁寧な見取りに基づく深い子ども理解と、その子どもの今に即した的確な支援の実施である。子どもたちの知識や思考、感情状態を正確かつ多面的に把握し、単元構成や教材開発、授業過程のデザインに生かすことが重要である。

  • あー、なるほど、、、って思った。
    いかに子どもたちが自分を、自分たちをつくるか…

    「教師が頑張る」から「子どもが頑張る」という
    主語の転換。
    本当にいかに子どもを自分と同じ一人の人間としてとらえ、
    その人間の力を信じ、手放せるか。
    その資質が教師にあるか、それを伸ばそうとしているか。

    社会の授業をしていて
    これで子どもに疑問を調べて解決する力はついたのだろうかとよく思う。
    学習問題をみんなで立てて同一の方法でみんなで調べて
    ひとまず学習問題は解決する。
    iPadで調べるときもあれば教科書、ゲストティーチャーの話から調べることもある。
    でも今の自分の授業は調べるものを子どもに与えている。
    それで本当に力がつくのか、と疑問に思っていた。

    そう思うとやはりマイプラン学習の良さは
    何事も自分からできる点だと思う。
    自分からしたことが身につく、力になる
    というのは教育における原則だと思う。

    読んで、すごい!で終わるのではなく
    自分の行動を変えたい。

  • 教育現場が見えてくる一冊。

    作文のくだりがわかりやすい。
    個人的にも鉛筆でもパソコンでもなんでもよく、
    何を伝えたいかという本質書いてあるところは良いと思いました。
    紙で清書は違うな。ただ、鉛筆の書き方や姿勢とそちらに見方をかけると、また、色々話が変わってくる。

  • 教師は41人目の探求者である。
    個別最適な学びをここまでできるんだということが自身の学びになった。
    いま、週一時間、マイプラン学習的なことをしているが、かなり放任になってしまっている。自由と放任の違いが難しい。そこで、鍵となるのは教師として何ができるか。教科の本質を踏まえて、それを出発点とし、着地点とする。
    この実践で何を学ぶのか?指導要領で語られていることだか、それを自分なりに腹落ちするように咀嚼して授業をしたい。
    本当に素晴らしい実践、哲学であるが、実際にやるとなった時、やはり足枷になるのが、受験であり、成績であるが…

  • 個別最適な学びと協働的な学びとは何なのか、実践例はどんなものかがよくわかる。
    子どもの学びに関する面白い事例やエビデンスが盛りだくさん。
    小学生はここまでできるのかと脱帽。
    胸が熱くなる。
    この本を読んで胸が熱くならない日がきたら、教育に携わるのを辞めることにします。
    人によっては既知の事柄があり、物足りない章もあるかもしれません。

  • 大造じいさんとガンのお話で、小学5年生が、ハヤブサとガンが戦ったというのは生物学的にみるとおかしい、ガンじゃなくて大造じいさんはガンとカルガモを見間違えたんじゃないかと考察しているのが多様な学び方の良い例だと感じた。

  • 天童中央小学校の最新の実践を題材にしながらも、そのヒントやアイデアのもとは以前からの各地での実践にあることにも触れ、最新の指導要領が新たに創られた教授法等ではなく、これまでを土台に整理されたものであることを体系的に理解できる。カリキュラムマネジメントについて読み手の思考を論理的に整理するのを助けてくれる良書。

  • 個別最適な学び,協働的な学びをタイトルに含む本の多いこと!それだけ注目されているし,理解できないことも多いからだろう。国(文科省)の方針にしたがって,教育行政は行われるので末端も当然影響をうける。方針の理念を理解して実践することは案外難しく,下にいくほどデフォルメされていき,これをしておけばいいという発想になりがち。理想的にはトップダウンとボトムアップによる練り合いが必要なんだろうけど,練り上がってきた頃には次の方針だったりする。方針の本質的理解(why)があればいくらでも実践は工夫できるので,教員個人やグループの学習会,公的研修の資料として読み,自分(達)の実践や現状と関連づけるとよいだろう。

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著者プロフィール

奈須正裕(上智大学教授)
神奈川大学助教授、国立教育研究所教育方法研究室長、立教大学教授などを経て2005年より現職。 現行の学習指導要領等に関わっては、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会、教育課程企画特別部会、総則・評価特別部会、幼児教育部会、中学校部会、生活・総合的な学習の時間ワーキンググループ、小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議、小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議、2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会等の委員として、重要な役割を担う。主著に『「資質・能力」と学びのメカニズム』(東洋館出版社)、『次代の学びを創る知恵とワザ』『「少ない時数で豊かに学ぶ」授業のつくり方』(ともに、ぎょうせい)など。

「2022年 『個別最適な学びの足場を組む。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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