武器としての「資本論」

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492212417

感想・レビュー・書評

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  • 東京で、値上がりした110円のペットボトルの水を飲みつつ、140円のコンビニパンを食べている。
    実家にいた頃、山盛りのフルーツ・とうもろこし・枝豆を頬張っていたあの時間がどれだけ充実していたのかを思い出す。

    筆者は指摘する。「現代人は、ネオリベラリズムの価値観に侵され、魂を資本に包摂されてしまっている」と。その自覚はある。そうは言っても、スキルを身につけなければ、稼ぐことはできない。スキルを身につけて応用することにも楽しさがある。スキルを身につけていきながら一定の時給で働くことは、自分の労働価値を下げていることも自覚している。仕事を素早く終わらせることは、自分の利得にはなっておらず、究極的には資本に奉仕しているだけであることも自覚している。そういった自己矛盾を理解した上で、東京生活を送っている。

    だからこそ、実家から送られてくる「ひん曲がったキュウリ・大きさがバラバラのトマト」ほど美味しいものは無い。資本主義に染まっていない味がするのである。キレイさを追求しすぎると、情報量が少なすぎてつまらなくなってしまう。スーパーに並んだ「まっすぐなキュウリ・大きさの整った球体のトマト」を見てそう思う。

    プライベート生活で資本主義に抗いながら、仕事では資本主義に従順になり、「AIで仕事を奪う」仕事をやっている。しかし、AutoMLの登場で、そんな仕事もいずれ奪われそうである。その頃には、リスキリング制度の基盤が整っていることを願う。もしくはマネジメント側に移り、部下たちに「成長」という餌を与えて、スキル獲得と利益向上に勤しんでもらおうと思う。

  • マルクス入門書としてのNo. 1クオリティ。
    文章も平易で、切り口、白井節感じるアイロニー、引用文献のいずれをとってもセンス抜群。
    マルクスってなに?という人に読んで欲しい一冊。
    中高生でも読み切れる内容。

  • 資本主義ってそもそもなんだ?今どういう問題を抱えているんだ?ということが分かってよかった

    特に資本主義が人間の魂までをも包摂しつつあるというのは納得。

    ここから私の考えですが、資本主義による魂の包摂に個人のレベルで対抗するには
    •まず資本主義が我々の幸せのためにあるものではないと認識すること。
    •その上で効率をもとめすぎることや、誰かと競争して勝つ、人と比べて優劣をつけると言った、いわゆる資本主義的な価値観から脱出すること。
    •効率化によって切り落とされた手間暇と、それに伴う感情や愛着を取り戻すこと。(例えば料理をする、サブスクばかりでなくレコードを聞いてみる、コーヒーを入れる)
    =効率を求めれば「無駄」に見えてしまうものこそが豊かさであり、それを愛すること。
    •趣味を持ち、自らの心を涵養すること。
    •利害や損得を超えた友人やパートナーと出会い、助け合うこと。
    などが大事なのかなぁと思います。

  • ネオリベによる魂の包摂を防ぐためには、感性の再建が必要。美味いものを食い、美しいものを見る権利があると信じること。

    産業革命がイギリス料理をまずくした。

  • 資本主義の度合いが高まることは、共同体的世界の領域が狭まっていくこと

    共同体の外の権利が共同体を包み込み内部に浸透していくプロセス=包摂

    ネオリベラリズムでは、相対的剰余価値の追求がより加速した。
    人間を資本に奉仕する道具としか見ていない。という見方。

    資本主義=物質代謝の大半が商品によって媒介される。
    資本主義ではこの大半が際限なく高まってゆく性格を持つ。

    資本主義では原則が等価交換。
    労働の対価が労働力の所持者の維持のために必要な生活手段の価値。
    →賃金の生存費説

    だが、デフレマインドで必要の水準が下がっている。

    供給が増えても消費者=労働者が貧しいと買い手がいないため、国外にそれを求めることとなる。
    →帝国主義、世界大戦

  • 情報化社会を耳にして久しくなるが、そこに疑念を抱くどころか加速する現代、ファスト〇〇がその極地となるのか、もはや文化を "愉しむ" のではなく情報化して "知る" で満足してはいないか。"知らない" は恥ずかしいから "知る"。そこで完結する。思考の放棄に気付かない悲劇はこの国の教育に起因している。受験という "知識の詰め込み" は考えること、数多の解答を良しとせず、"これはこうだ" という方程式でしか教えない。だから学ぶ側は "知る" を優先する。知らないは不都合になる、疎外されたくない、と。そんな環境で育つと格差社会に打ちひしがれても、恵まれる手段を "知らなかった" 自己責任で諦める。それは間違っている。もちろん本書で "知る" こともあるが、大切なのは "思考" であると筆者は訴える。この社会に包摂されたままでいいのか。

  • 資本論→新自由主義への闘い(上から下への階級闘争)
    ・資本主義ー余剰価値を追求するため、労働者から搾取する構造は変わっていない。

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。思想史家、政治学者、京都精華大学教員。著書に『永続敗戦論─戦後日本の核心』(太田出版/講談社+α文庫)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)など。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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