経済成長という呪い

  • 東洋経済新報社
2.87
  • (2)
  • (3)
  • (16)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 152
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492315026

作品紹介・あらすじ

水野和夫氏推薦!
人類は無限の欲望から逃れられないのか。ピケティ、アタリと並ぶ欧州を代表する知性による、歴史的な観点から見た現代資本主義への警鐘と提言。

経済成長は、幸福という目的を達成する手段ではなく、むしろ生活の苦悩から人間を救い出す役割を担う宗教のような存在となった。
しかし、数億人の人々が経済成長という神を崇めたせいで、地球上の生命が危険にさらされている。
経済成長は、持続的ではない。
しかし、人が経済成長を求めるかぎり、成長は私たちの無限の欲望と化す。
歴史を振り返れば、人は、何度も、メンタリティを変化させてきた。
人と社会のメンタリティは、変化する。あるべき方向にメンテリティを変化させるために、進歩とは何かを、考え直さなくてはならない。
経済成長や進歩という概念を見直すためのガイドブックであり、欧州のインテリによる、歴史的な観点から見た現代資本主義への警鐘の書。
著者の前著『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』は、欧州でジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』を超えるベストセラーとなった。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 経済、ビジネス書だと思ったら全然違った。
    ヨーロッパの思想に対する知識背景がまだ足りないので、自分には難しいところもあった。この不確実な時代、改めて歴史や哲学に目を向けて、自分の生き方を見つめ直す姿勢が必要。
    人間には欲があり、その欲が経済成長の原動力になった。
    ただし、いまのITが大発展してきたいま、分断を生んだのは間違いない。
    デンマークの例が出ていたが、色々なコミュニティと関わり、豊かに生きていく。これから意識してそういう生き方を選んで個人としての幸せを高めていきたい。

  • ダニエル・コーエン氏、チュニジア生まれの経済学者で現在はフランスで活躍をされていますが、その意味ではいかにもフランスの経済学者が書きそうな本ではありました。というのも経済成長そのものをメカニズムとして捉えるというより、人類学的、社会学的、また思想的な視点から分析をされていて、かつかなり長期間の歴史を振り返っています。参照されている書籍も経済学者の本よりは歴史学者や文化人類学者などが多く、特にフランスを代表するSocial Scienceの大家たちの叡智がちりばめられた本という印象です。その意味では興味深く読ませていただきましたが、日本人読者にはかなりハードルが高いとも言えます。おそらくこの本を味わいつくせる人は日本人でもなかなかいないのではないでしょうか。経済学の知識だけを持っていても半分以上理解できない可能性もありますし、ましてやフランスの歴史的なイベントについての知識も要求されます。

    ただ、著者が言わんとしていることは伝わりました。我々人類はここ数世紀にわたって、進歩=経済成長と信じてきたわけですが、もしこの等式が崩れるとしたら、それは啓蒙主義によって教会の権威が失墜し、民衆の心の支えが崩壊することに等しいということです。その代わりとなる根本思想についての明確なイメージは提示されてはいませんでしたが、コーエン氏はそこまで悲観的ではなく、人間の総体的な適応力を信じているというトーンでした。繰り返しになりますが個々の記述はかなり難解な箇所も多いですが、キーメッセージは伝わる本です。

  • ー経済成長は目的をもたらす手段ではなく、むしろ生活の苦悩から人間を救い出す役割を期待される宗教のような働きをするのだ。

    デジタル革命が一世紀前の電気革命と同様の経済成長の加速をもたらさないのはなぜか。20世紀には農村部を追われた農民たちが大きな成長の見込まれる産業に就職したため、高度経済成長が実現したが、デジタル革命は、新しい消費社会を作り出さず、雇用の変革もなかったからだと著者は言う。確かに、一人当たりの生産性が上がり人員合理化が進んでも、新たな雇用の受け皿が無ければ、付加価値の総量は変わらない。

    パソコンを駆使し、コミニュケーションの速度が上がれば経済成長は加速するような気がするが、そうはならない。先進国の失速は、高齢化や後進国に生産手段が奪われていった事も一因だろうが、その上、デジタル化によるコストダウンや合理化がディスインフレに作用する一面がある事も事実だ。産業革命が経済成長を齎すというのは、生産面よりも消費刺激。インターネットの普及が新聞、雑誌媒体の需要を減らすように、必ずしも消費拡大に繋がらぬと言われれば、確かにそうだ。

    面白いなと思うが、個々のテーマをより深く洞察した内容ならば、より良かった。

  • 水野和夫先生の推薦。だが、さまざまな経済学者の書籍紹介。109ページのモデルA/Bの引用は良い。ソーヴィーの『機械と失業』は、GAFAの台頭の説明として納得。170ページのデンマークモデルは、興味深いモデル。このような社会に移行できるのか?の処方箋は何だろうか?

  • 全体的に浅い。もう少し突っ込んだ議論がほしい。

  • フランスの経済学者、ダニエル・コーエンの2015年の著作の翻訳。経済学の本かと思ったけど、結構歴史、哲学、社会学的な考察が豊富。多数の論者からの引用があるけど、残念ながら結構知らない人も多かった・・・
    将来の経済成長の見通しは暗く、多くの人々は環境問題の悪化や労働強化による人間疎外で希望を失っている。しかし、人口問題が出生率の低下で解決されようとしているように、人々の心境の変化で解放されるだろう?
    フロイトやバタイユまで引用されて著者の豊富な知識がうかがえるが、ネオリベラリズムによって苦境に立つ人々にとって具体的な助けになるかどうかは微妙な気がします。確かに経済成長なくして未来がない、みたいなご託宣をまず疑ってかかることは大事ですけどね。.

  • NHKスペシャル「欲望の経済史」でコメントしていたフランスを代表する経済学者ダニエル・コーエン氏の著書。地球という閉じた生態系の中での経済成長には限界があり、すべての人が豊かになれないのだとすると人類に未来はあるのかという重たい問い。最後まで読んでも楽観的な解はない。「狩猟時代から農耕時代になって、人類の格差はむしろ大幅に拡大し、戦争や飢餓の原因となった」「技術の進展により恩恵を受けるのは一部の投資家、資本家であり、大多数の貧者は無料のサービスを提供するために働き続ける」「アメリカの成長率を収入別に分析すると、全人口の上位1%の成長率は7%前後、残りの99%の成長率は1%前後にとどまっている。すなわち、経済が少しでも低迷したら全人口のほとんどの経済成長がゼロになる」「ITにより誰でも繋がる時代が到来したというが、実際につながっているのは、同族、同階層の閉じた世界のみ」「シェアする世界は物を購入しない世界、つまり経済成長に反する世界という実質を持つ」「かつて亡びた文明におけるその原因のほとんどが人口と環境破壊を制御できなかったため。今の人類にも当てはまるのではないか」

  • 18/02/18。

  • 人類の無限ともいえる欲望が現代の経済社会を生み出した。しかし、マクロ的には経済成長、個人にとって富に対する飽くなき欲望は決して、幸福感をもたらすものではない。
    本書は、人類の歴史を経済・社会的に辿って論じ、文章や分析内容は高尚だ。しかし、読み方が甘いのかもしれないが、結論は新味がないように感じた。

  • フランスの経済学者の人類が歩んできた経済活動分析から、21世紀未来を読み解くという本でして、
    内容は、
    序論 経済成長なき進歩はありうるのか
     他の誰かがもっているものを欲しがる存在
     理想を壊したポスト工業社会
     デジタル革命が経済成長をもたらさない理由
     われわれは無限という「呪い」から逃れられるのか
    第1部 経済成長の源泉
     人類の時代
     脱出――絶滅の危機
     2026年11月13日――人類を救った予想外の人口転換
     貨幣の誕生――富に関する言語の発明
     歴史の飛翔――ヨーロッパ独自のものはあったのか?
     閉じた世界から無限の宇宙へ―キリスト教と科学革命
    第2部 未来だ、未来だ
     テクノロジーの特異点が迫りつつある
     人間の労働はどうなるのか
     失われた経済成長
     マルクスからハリウッドへ――機械化と失業
     新たな衝撃――人口転換という「奇跡」
    第3部 進歩を再考する
     “新たな”大転換
     自主独立とサバイバル
     神話と恨み――物質的な富から解放されない人間
     ダブル・バインド〔二重の拘束〕
     どうすればデンマーク人のようになれるのか
      ―ポスト工業社会への移行
     社会的族内結婚――誰と一緒に暮らすのか
     経済成長を超えて
      ―異端者糾弾から社会的つながりの消費社会へ
    結論 トライアングル地獄からの脱出と超越

    でしたが、どの項目の分析も、他の学者の引用で、こうなる、ああなるという風な書きぶりで、読んでいて何か皮相的なアプローチだと感じたし、ヨーロッパの歴史的な経済現象分析が主で、親近感が感じられませんでした。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1953年、チュニジア生まれ。フランスの経済学者・思想家。パリ高等師範学校経済学部長。『ル・モンド』論説委員。2006年にトマ・ピケティらとパリ経済学校(EEP)設立。著書にフランスで『銃・病原菌・鉄』を越えるベストセラーとなった『経済と人類の1万年史から、21 世紀世界を考える』など。

「2019年 『ホモ・デジタリスの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ダニエル・コーエンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×