イノベーターたちの日本史

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.72
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492371206

作品紹介・あらすじ

彼らはどのように未来を切り拓いていったのか? 
従来の史実では描かれなかった躍動感あふれるストーリーがここにある

高島秋帆、大隈重信、笠井順八、三野村利左衛門、益田孝、岩崎弥太郎、高峰譲吉、大河内正敏――
アヘン戦争、開国、財政政策、秩禄処分、士族授産、三井と三菱財閥、理化学研究所――

本書は、明治から昭和初期にかけての日本のイノベーターたちが、津波のように押し寄せる大変化にきわめて創造的に対応し、思いもよらない独創性を発揮していった過程をたどる試みである。そこには、これまで歴史の片隅に追いやられていた重要な事実の再発見もある。たとえば、アヘン戦争で解任された中国の高級官僚が残した西洋に関する文献や著作が、さまざまな偶然を経て国境を越え、江戸幕府が開国決断へと至るストーリー、勤王の志士がわずか数年にして明治政府の経済政策を作り上げていくストーリー、研究所から新興財閥を作り上げた理研の創業者のストーリーなど、従来の日本史では注目されることの少なかった人物と、彼らが突破した難題と、それらが社会にもたらしたインパクトを紹介していくものである。

感想・レビュー・書評

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  • 財閥、理研などイノベーターがいた。
    これから日本の復興を始めたい。

  • 長沼伸一郎著「世界史の構造的理解」を読んだため、手に取る。
    小野田セメント、笠井順八。理研第三代所長、大河内正敏。そのほかの偉人たちもその時々に懸命に考え行動し、藁をもすがる思いで事業に邁進したことに感動する。
    「すでに見慣れたものを全く新しく見ること」ヴジャデと呼ぶそうだ。

  • いつの世も志と行動力のある人物が社会を変えていくもの。近代史がさらっと流れてしまう学校の教科書では深く知り得ない、先人の取組の創造性がよく理解できる。読みやすかった。

  • アヘン戦争から幕末、明治維新の頃の日本のイノベーターらのサクセスストーリーを追う一冊。高島秋帆、大隈重信、笠井順八、三野村利左衛門、岩崎弥太郎、高峰譲吉、大河内正敏らが紹介されている。

    圧倒的な列強国を前に江戸幕府が崩れていく様、明治維新によって秩序維持に貢献してきた武士らが見捨てられていく様を見るにつけ、これらを現代日本に置き換えると、どんな現象になるだろうか?と思いを馳せた。例えば、共同体意識や所属の欲求を満たしてきた企業体の解体だろうか、選挙制度から政府のあり方がガラガラポンで変貌するとか。

    ヒエラルキーの縦の序列・忠誠心が瓦解して、フラットな横への信頼に関係性が再編されている。そんな中で、これまで誇りを持って働いてきた多くの人たちの社会貢献が、今や「ブルシット・ジョブ(クソ仕事)」と吐き捨てられている。本書で描かれている時代も、戦後も、あるいは戦国時代もそうであったように、こんな世の中だからこそ、新たなイノベーターが誕生する。

  • 幕末から明治に掛けて、諸外国からの脅威もある中、愛国心、野心を持つて活動した男達の話

    以前に高杉晋作の本を読んだが、(というのも高杉晋作の没地「東行庵」に行き、具体的に何をした人かを再確認したかったため)本書にも少しでてきた。やはり鎖国、攘夷の考え方では日本は海外から大きな遅れを取り滅びる。進んで海外の技術や知識を取り入れる「富国強兵」が大切であると。
    本書ではあまり有名ではないが、日本の今を形作った重要な人物を沢山紹介している。
    「高島秋帆」幕末の志士に好まれる旧来型の即断決、全面対決のような捨て身の英雄論はなく、冷静沈着に、開国した方が多くの血がながれずに済むと考え、和平の道を探した 。
    「大隈重信」維新には影響を及ばさずとも官僚の立場から海外とのやりとりで、幕末の貨幣改悪等、日本の財政破綻を危惧し、海外との外交は国家財政の確立が最も重要であると説き、自身の出身土族を解体し、外務官僚となった。
    高島秋帆、大隈重信の活躍がなければ海外の脅威に屈して違った近代を迎えたかもしれない。
    「笠井順八」小野田セメントを設立、明治維新の遂行者であった長州の下級士族でありながら、明治の近代化により、笠井等、士族層は打倒されるべき封建勢力になった。その下級士族の怒りが自己存在意義を求め、士族層の公債を集めて会社を興した。
    「高峰譲吉」世界的科学者であり、理化学研究所の提唱者である。(設立は渋沢栄一)アドレナリンの発見、開発。また今で言うベンチャーの形態を19世紀のアメリカで行い、アメリカ人と結婚する。その飽くなき精神、行動力、また成果は当時の日本を沸かせた。彼は野口英世より12歳年上だが、野口の名声に比べ、高峰は過小評価されていると本書は言っている。
    「大河内正敏」理研の3代目所長であり、高峰の理化学研究所構想を「楽園」と呼ばれるまでに変えた。
    彼は研究生に「自由」をあたえ、欲しい研究材料があれば赤字であろうと買い与えた。その結果国内特許約800件、外国特許約200件、実用新案約250件にも達した。
    本書は他にも様々な近代日本の貢献者を紹介している。やはり昔は誰が何と言おうと愛国心を持ち、何かイノベーションを起こしたいと言う人が多かったように思える。特に今の日本を見るに相当なギャップを感じ、本当にこんな志が強い時代、人物がいたのかと思う。今の日本は先進国でもなく、発展途上でもなく衰退国だと思う。福沢諭吉の「学問のすゝめ」に国民の質は政治の質とあるように今の日本は平和ボケしている。自身もどっぷり肩まで浸かっている。自分に何が出来るか、歴史から学び、まずは自身のイノベーションのきっかけになればと思った。

  • 江戸から明治への移行が日本の歴史的な転換点な点は皆、一致するであろう。
    国内だけでなく海外情勢も激変する中で、当時のリーダーが、どのように創造的対応をおこなったか?

    とくに、武士階級がリードした明治維新のリーダ層が、自らの母体である武士階級を解体する創造的対応が興味深い。

  • 明治維新の解釈として独創的であり印象的
    植民地化の危機意識→天皇を中心とした絶対国家→富国強兵
    武士の廃止→国民軍の創出 士族の政府が武士制度を廃止 明治維新のイノベーション
    「自己否定」

    明治維新を資本主義経済のインキュベーターに
    (1)経営人材 武士を充当 職種転換 必ずしも成功しなかったが・・・失敗経験
    (2)リスク資本 秩禄公債を出資金に リスクマネーへの変換を実現

    官営工場の意義 失敗説もあるが
    先端技術の導入 人材育成 工業化初期における失敗の代行など意義

    フランス視察 外国との格差に泣いた 益田孝
    慶喜公 幕府が脆く倒れたのは、内部が全くダメになっていたから
        最も良く見抜いていたのは慶喜公
    「覚悟と人材登用」(144)
    格式などにこだわって人材登用ができない組織は、どんなに歴史や権威があっても、
    あっという間に崩壊する
    薩長には人材があり、覚悟が違っていた

    組織は成長・拡大につれ、「リスク回避」の傾向になる
    企業革新を継続するためには 人材・資本 →所有と経営の分離

  • 20170927読了

  • 明治日本の先人たちの伝記にしてはコマ切れだし、「創造的対応」という横軸で括るにしては考察が浅すぎる。どちらかに絞ったほうがよかったのではないかとの感想をもった。
    明治日本の知識をやや増やせるという利点はあるが、「イノベーター」という言葉からの期待に比べて本書の内容はちょっとがっかり。

    2017年8月読了。

  • 幕末から明治、戦前までの時期、日本における産業、科学の勃興の物語。この時代を語るのに、いわゆる幕末志士伝は数多くあるが、起業家や科学者を主役に描いたものはあまりなく、本書ではその志や自立精神、未来志向などは志士の物語と変わらない迫力や情熱を感じることができる。作者がなんども強調しているように日本人がみな創造的でないというのは自虐的な思い込みであり、本書に登場する傑出した人物のことを思えば、勇気が湧いてくる。

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著者プロフィール

一橋大学教授

「2015年 『オープン・イノベーションのマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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