スクエア・アンド・タワー(上): ネットワークが創り変えた世界

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492371268

作品紹介・あらすじ

世界を動かすのは、垂直に延びる階層制組織の頂点に立つ権力者か?
あるいは、水平に延びる草の根のネットワークをもつ革命家か?
「人的ネットワーク(スクエア)」と「階層制組織(タワー)」の視点から歴史を捉え直した、比類なき試み。

フリーメイソンからジョージ・ソロス、トランプ大統領まで
「いま最もすぐれた知性」による文明を見る眼


ルネサンス、印刷術、宗教改革、科学革命、産業革命、ロシア革命、ダヴォス会議、アメリカ同時多発テロ、リーマン・ショック、フリーメイソン、イルミナティ、メディチ家、ロスチャイルド家、スターリン、ヒトラー、キッシンジャー、フェイスブック、トランプ……

社会的ネットワークが世界を変えたと言ったならば、一握りの集団が世界を動かしているといった陰謀論を思い浮かべることだろう。

だが、歴史にネットワーク理論をもちこめば、さまざまな人物のつながりが、どのように世界を動かしてきたのかが明らかになる。

人類の歴史におけるさまざまな変化は、階層制の秩序に対する、社会的ネットワークに基づく挑戦とも言える。

イノベーションは異なる組織に属する人々のネットワークから生じ、アイデアはネットワーク内の弱いつながりを通して、水平方向に広がる。近代文明はそのネットワークの力によって、爆発的に発展したのである。

しかし一方で、国家に見られるような垂直にそびえ立つ階層制がなければ、ネットワークが内包する脆弱性ゆえに、社会は崩壊しかねない……

タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、「いまもっとも優れた知性」と目される歴史学者が、ネットワークと階層制というかつてない視点で世界を読み解く!

【推薦の言葉】
「ファーガソンはシリコンヴァレーが必要とする歴史を提示してみせた」――エリック・シュミット(元グーグルCEO)
「歴史の知識を大きな問題へと関連づける」――インディペンデント紙
「魅惑的で人の心をつかんで離さない」ーーニューヨーク・タイムズ紙
「彼が捉えなおした歴史は、今後何年も影響を与え続けることだろう」ーーガーディアン紙
「ニーアル・ファーガソンは再び素晴らしい本を著した」ーーウォールストリート・ジャーナル紙

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、これまであまり注目されていなかった歴史における人々の横のつながり(社会的ネットワーク)の影響に光を当てたものである。タイトルの『スクエア・アンド・タワー』は、スクエア=社会ネットワーク、タワー=階層制、を象徴している。

    著者の主張は次の通りだ。
    「中心テーマは社会的ネットワークであり、社会的ネットワークはこれまでの歴史でずっと、国家のような階層制の組織に執着してきた大方の歴史家が認めているよりもはるかに重要だったというのが私の見方だ」

    本書でも分析の題材のひとつとして取り上げられているヘンリー・キッシンジャーの伝記執筆が本書執筆のきっかけとなっている。キッシンジャーが、自身が構築したネットワークを通して多くの影響を与え、そして多くの外交上の成果を上げたことが著者にとっても明らかになったからだ。そうであれば、これまでの歴史においても今まで見えていなかったネットワークを考慮することで、今までとは異なる見方をすることができるのではないか。そこで、イルミナティ、ザクセン=コーブルク=ゴータ家、ロスチャイルド家、欧州の王族の親族ネットワーク、ダヴォス会議のネットワーク、など数多くの歴史を動かしたネットワークが分析される。

    著者のネットワーク分析において特徴的であるのは、実際のつながりをやりとりされた手紙の分析などデータをもとにして人の間のネットワークを見える化して解析をしていることだ。例えばヴォルテールやジャン・ジャック・ルソーが誰と手紙のやりとり(6,000人を超える著述家の何万通の手紙を分析)をしていたのかということからそのつながりが明確に浮かび上がり、例えばそのネットワークがヨーロッパ横断というものではなく実際にはフランスに偏っていたことが示される。もちろん、筆不精な人のネットワークが過小評価されたり、実際に手紙を書くまでもなく顔を突き合わせてやりとりをできる関係が実際よりも細い関係とされるなどの誤差は生じるであろうが傾向の分析としては妥当であろう。
    また、近代アメリカ政治界の分析では主要な人物のそれぞれの自伝の中で言及された人名の回数でそのネットワークを評価している。もちろん、そこには実際の関係の重要性とは異なるバイアスが生じてしまうことは否めないだろう。しかしながら、こういった分析によって、隠されたネットワークの影響が浮かび上がってくることもまた事実なのだ。

    そういった過去の歴史における権力の階層構造とネットワーク構造の分析を通じて、著者は、社会的ネットワークの重要性が顕著だった時代がこれまで二回あるという。一回目が印刷機が発明された15世紀後半から18世紀末、その次がインターネットが拡がった現在である。その間の1790年代後期から1960年代後期までの期間には逆の傾向が見られ、階層制権力が最も強かった時代は、20世紀中期全体主義の時代であった、と結論づける。19世紀後半の欧州五大国のネットワークのバランスの崩壊、共産党の革命ネットワークはロシアにおいて階層化をますます強め、ドイツはナチスの扇動により世界は一気に階層制へと重心が移っていった。
    そして今、ソヴィエト連邦の崩壊に伴う東西冷戦構造の終焉からインターネットの隆盛を受けて、再びネットワークへとその重心はシフトした。インターネットの世界をそれが生まれたときには想像していなかった形で支配するFANGの本質や、それに対抗する中国の習近平政権およびBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)についても分析を加える。

    著者は、「インターネットのグローバルな影響に匹敵する例としては、16世紀のヨーロッパにおける印刷術の影響以上のものはほとんどない」という。今般のネットワークは、著者が指摘するように「相転移」を起こし、創発性を持った複雑で適応性のあるシステムへと変化したのかもしれない。そこでは、理想とは異なり貧富の差が拡大する ―「富める者はますます富む ― ほとんどの社会的ネットワークは、優先的選択のせいで不平等極まりない」。通貨危機、アメリカ同時テロ、イスラム過激派ネットワーク、リーマン・ショック、SNS、アラブの春、トランプの米政権奪取、などインターネット後において発生した現代の多くの事象を階層制とネットワークという観点から記述して見せる。

    著者は、ネットワークと階層制の補完関係を次のように表現する。
    「やがて明らかになるだろうが、歴史的な類推に基づけば、私たちはおそらく次のように予期するべきなのだろう。自らを刷新できない階層性をネットワークが崩壊させ続けるだけでなく、ネットワークだけでは無政府状態に陥るのを防げないことがはっきりしたときに、階層制の秩序が何らかのかたちで復興する可能性もある、と」

    非常に大部であり、歴史の中で様々な題材が取り上げられている。著者の意図もネットワーク(スクエア)と階層制(タワー)とが絡み合ってその時代を形作っていることを示し、決してどちらか一方に過度に肩入れすることを避ける姿勢を保っているため、全体として歯切れが悪い印象もぬぐえない。そして、その歯切れの悪さ自体が価値であることも確かなのである。最後にシリコンバレーとスクエアに譬えて、ニューヨーク五番街に建つトランプタワーをタワーになぞらえる。トランプに対する批判と懸念を滲み出すように表現する。著者が言いたかったのは、世界は思いもよらなかった形で、思いもよらない方向に動いていくのだ、ということなのかもしれない。

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    『スクエア・アンド・タワー(下): ネットワークが創り変えた世界』(ニーアル・ファーガソン)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492371273

  • h10-図書館2022/03/18ー期限延期4/8 返却4/3h10-図書館2022/04/3ー期限4/24 読了4/22 返却4/24

  • 評価が難しい。
    歴史学ではいままでネットワークを過小評価していたというのは分かったんだけど、では階層性に対して、どれだけ重要なのかという点は明示的でなかったように読んでいて思える。

    具体的なエピソードとして、キッシンジャーの業績は、彼自身の優れたネットワーク構築能力にあるというのは同意する。
    では本書で主張したい「ネットワーク」が作り替えたといえるものは何なのかと言われると・・・非才の私では理解できなかった。

  • ふむ

  • 「弱い紐帯」について説明がある。

  • イケメンと雰囲気イケメンの関係はウナギとうな次郎だろう。現実とVRでも良い。

    滅多に知られていないことだがこれらの最も大きな違いは本物と偽物である。前者は希少なので絶滅しやすい(数量に於いてではなく人間の脳からという意味である)。したがってそろそろ「それ」がなにかも知らない世代が登場するかもしれない。

    さて、かつてB層という言葉があった。たとえばこの本に「何かが書いてある」と「何も書かれていない」の区別がつかない層のことだ。
    あるいは「何も書かれていない」一択である私のことだ。この本の著者はTIME誌が選んだ現代の天才100人とのことらしい。したがってここで私が裸の王様という童話を思い浮かべたならそれはB層を証明することに他ならない。王not found 子供(B)。
    これを私はスクエア(子供)アンドタワー(王)1と名付ける。

    つぎに、私は教員の選定方式が特殊な大学に通った。目指したのは科挙だろう。国で唯一の経歴と縁故、つまり生まれという階級の完全な撤廃を標榜する学校だった。その目的は別として、やり口としてはTIMEの天才100人とさしてかわらない。王様vs子供(B)。ネットワーク孤立者。無教養ガラパゴス諸島。差別対象。あるいはカウンターカルチャー。
    これを私はスクエア(王)アンドタワー(子供)2と名付ける。

    なにごとにもメリットとデメリットがあり、需要と供給があり、お導きがある。そして最もだいじなことは多様性だ。多様性という《学齢》を経ずに学ぶことは私たち4次元生物にはできないからだ。それは相対性、あるいは愛というシステム、とも言い換えられる地上の絶対的「真理」だ。誰もがその学齢クラスターでは肯定される。

    1と2が有するメリットの違いは単純かつ明白である。だが1にはそれを理解することができない。2は数多の1の結果に誕生するからだ。王に詐欺師は見抜けなかった。なぜ己が人類の遺産を利用できる立場にあるのかを理解しなかったから。王の仕事のなんたるかを理解しなかったから。王not found子供(B)だから。
    これを私はスクエア(王and子供)アンドタワー(王'and子供')3と名付ける。

    最初に戻る。
    イケメンを模す雰囲気イケメンが評価されるとき、女性の脳では無意識的に下記の生き残り戦略が発動されている。
    「評価しておくために極力顔面を見ないようにしておこう。そうすれば"現実"に気づかずに済むから」
    そうしてストックホルムシンドロームは再生産されプリミティブな美の概念は消失する。人々は消え去るタワーを追いかけ、ついには現実とは都合のいいように捏造しながら拡大させていくものなのだと理解する。

    かくて目を背けられながら雰囲気のみ保全された裸の王様はイケメンのアイコンとなり、ウナギはうな次郎となる。

    (たぶん著者の国ではそれっぽいことを言いさえすれば仕事をしたと評価される国民性なのでしょう。日本で言えば材料を揃えて料理した気になれる芥川某や太宰某とそれにフィーバーできる日本人。
    あるいは具体的に何が凄いかはぜんぜんわからないんだけどこれが凄いって気づいてしまえる俺スゲー。だってそれが凄いってまだ誰も言ってないし!の某目某石とか)

    追記:4月2日
    いかにオペラが三文ぶりを競う趣味の悪い遊びだとしても方向性がひたすらキモいに振り切れてしまっているタイスはどうなのか。と知人に言ったら書いた本人が一番自分にがっかりしているよと言った。芥川さんと太宰さんはそれで自殺したんだった。悪かった。

  • ヒレラルキーとネットワークは必ずしも縦と横で排除する関係ではなく、共存しうる。ただフランス革命のようにヒエラルキーを完全に否定してしまうと無秩序になってしまう。その点はアメリカの独立戦争と異なり、アメリカではネットワークがあり、それが機能しつつもヒエラルキーを否定するのにはいかなかった。フランスはのちにナボレオン、王政復古があり、ヒエラルキーが復活させようとしたが(特に外国の圧力で)うまくはいかなかった。

  • https://xieal.com/?p=1088
    「誰々によれば~、が言うには、…」がページ稼ぎ?かと思うほど異常に多く、しかもトランプなどのメジャーどころよりも、著者の知人?などそれ誰やねん、というのが少なくはない
    著者の知識前提なので読ませる気は皆無な本であり、人名の引用に続くセリフや文はほとんど意味を持たないことが多いので、そのあたりは飛ばして読むほうがいいと思います笑

  • Square or Tower、人類の発展をもたらした結合体は非公式なネットワーク型かはたまた公式な階層型か、世界史を読み解く。イルミナティやフリーメーソン、ロスチャイルドなど陰謀論ファン垂涎の話題が豊富だが新たなInsightがあるかというとそうでもない。公式文書には正式な組織すなわち階層型が記録に残され、ネットワーク型は非公式な手紙や人的接触で特に歴史的転換点において重要な役割を果たしてきたが、まあ当然の話である。

    着眼点は面白くスケールも壮大で相当膨大な資料を調査・分析したのであろうが、体系的に纏まっておらず、論点・主張が伝わってこない。ボリュームの割には得るものが少ない。下巻に期待。

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著者プロフィール

ニーアル・ファーガソン
世界でもっとも著名な歴史家の1人。『憎悪の世紀』、『マネーの進化史』、『文明』、『劣化国家』、『大英帝国の歴史』、『キッシンジャー』、『スクエア・アンド・タワー』など、16点の著書がある。スタンフォード大学フーヴァー研究所のミルバンク・ファミリー・シニア・フェローであり、グリーンマントル社のマネージング・ディレクター。「ブルームバーグ・オピニオン」にも定期的にコラムを寄稿している。国際エミー賞のベスト・ドキュメンタリー部門(2009年)や、ベンジャミン・フランクリン賞の公共サービス部門(2010年)、外交問題評議会が主催するアーサー・ロス書籍賞(2016年)など、多数の受賞歴がある。

「2022年 『大惨事(カタストロフィ)の人類史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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