男性不況――「男の職場崩壊」が日本を変える

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395769

作品紹介・あらすじ

日本の変質を解く鍵は、男と女にある。増えない給料、晩婚・少子化、格差拡大から女子会ブームまで、さまざまな変化を引き起こした真因に鋭く迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 研究発表の文献に使用した,数少ない男性不況の書籍。データを中心にわかりやすく述べられており,他のジェンダー関連の本に比較して客観性が高いものの,論文集ではないため男性に対する主観的偏見も混ざっている。どの書籍でもそうだと思うが,表やグラフを読み取るときの批判的思考は必要であり,本書もそれに相当すると感じた。ミクロからマクロまで,幅広い観点から考察されていて興味深い一冊だった。

  • なるほど、男性が萎縮し、女性が元気な理由がうなづける。男性が多く就く製造業・建設業は雇用が減り、また人件費を削減してきた。一方、女性が多く就く医療・福祉は、雇用が増大中である。
    著者は第一生命のアナリストであり、雇用・経済等の数多くの統計資料を引用しながら、陥っている現状を分析し、また処方箋を論ずる。法人税減税、自由貿易の促進、円高是正、労働法規の緩和である。

    ただし円高是正のみ、正直よくわからなかった。購買力平価で見ると、以下のようになる。
    ドル    100
    日本円   130
    韓国ウォン 70
    中国人民元 60

    つまり、韓国ウォン・中国人民元に対し、日本円は2倍も割高である。製造業不況の諸悪の根源は言うまでもなく円高であることが分かる。円高こそ是正できれば、製造業の苦境は乗り越えることができる。

    しかし、円高是正は簡単ではない。池田信夫氏の指摘する「流動性の罠」をここでも指摘しており、単純に日銀が量的緩和をしただけでは、デフレ脱却・円高是正にはならない。

    著者は日銀によるリスク資産への直接供給を提言する。アメリカではFRBが住宅ローン担保証券を8000億ドルも保有している。はたして、日本でそれができるだろうか?また既に国債残高が1000兆円に迫る日本で、果たしてインフレを目指すことが吉と出るのだろうか?

    <目次>
    はじめに
    第一章 男性不況とは何か?
     1 働きたくても職場がない −消える「男の職場」、増える「女の職場」
     2 鍵を握るのは製造業と建設業
     3 医療・福祉とホワイトカラーは女性優位に?
    第二章 男性不況で替わる男女の立ち位置
     1 萎縮する男性、元気な女性
     2 縮小する男女の給与格差
     3 さらに拡大する男性不況
    第三章 男性不況が格差を広げ、少子化へのスパイラルに拍車をかける
     1 男女の賃金格差が縮まると、なぜか広がる世帯間の所得格差
     2 女性が結婚相手に求める条件
     3 晩婚化・未婚化を生む男性不況
     コラム 高所得女性は低所得男性と結婚してくれるのか?
    第四章 男性不況が変える日本の姿ー消費・家庭・雇用
     1 減る「男の消費」、増える「女の消費」
     2 男性不況が変える家庭の姿
     3 エリートにも忍び寄る男性不況
    第五章 男性f今日に勝つための戦略
     1 マクロ政策の男性不況対策
      製造業が直面する4重奏
       高い法人税
       高関税率
       円高
       労働規制
     2 個人としての男性不況対策
      付加価値の高い成長分野の職に就く
      海外で日本人であることがプラスに働く職に就く
      女性がメインだった職場にも職を求める
      専業主婦を目指す

    2012.11.03 国立の本屋で見つける。
    2012.11.18 予約
    2012.11.25 借りる
    2012.12.02 読書開始
    2012.12.06 読了

  • わざわざ「男性不況」という言い方をするのは、女性の不遇な職場環境については問題としないという前提があるのでは?と思い、読み進めてみた。実際にそういった論調に感じてしまった。確かに、高学歴女性が正社員のポストにつくことで男性の正社員ポストが減るということはあり得るし、夫婦間所得格差も拡大するというのは納得できる。事実としてそう語るのであれば、その通りではあるが、著者の女性の社会進出こそがとにかく男性不況を促進したとでもいいたいかのような論調は、読んでいて不快だった。読んでから時間が経ってしまったので、記憶が曖昧です。記憶違いでしたらすみません。

  • 先が暗くなる本。けど、現実かもしれないので、考えないとね。

  • 「1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから、女性の社会進出は目覚ましいものがある。だけれどもその一方で男性は失業率が上がってたり、労働市場における価値が下がったりどんどん不況に陥っているのだ」ということを各種データを引きながら、書いた本。日本の労働市場を考える視点として面白い。とりあえずこれからは共働きの時代らしいです。(出産とかで奥さんが正社員の仕事辞めたら家庭内での損失は約2億だそう。それは大きいな・・・)
    筆者が最後のほうで書いてる経済対策が今まさにその通りになっていて(日本はもっとインフレの方向に経済を持っていくべき。リフレが何なのかやっと分かった・・・)興味深い。

  • この数十年の労働市場における日本の男性の価値は相対的に大きく低下している。男性の雇用が100万人以上減少し、平均賃金が下落し、家族を養うことのできない男性が増加している一方、女性の雇用は増加し、男性の賃金格差が大幅に改善されている。男性の雇用を支えてきた製造業や建設業が不振である一方、女性が多く働く医療・福祉の雇用が増えている。このような労働市場の「女性高・男性安」傾向により、少子高齢化や格差の拡大、家族のあり方や消費市場の変化が起こっている。男性不況発祥の地アメリカでは、自国通貨安を容認しつつ製造業の輸出拡大策により雇用者数が改善に転じている。

  • ■男性不況

    男女間の給与格差が縮まると、男性並みの給与をもらう「高所得女性」が増える。
    この高所得女性と高収入の男性のカップルの増加が、家計間の所得格差を広げる一因になっている。

  •  詳細なレビューはこちらです↓
    http://maemuki-blog.com/?p=8830

  • 男性の雇用が減り女性の雇用が増える社会構造の変化に広く浅く言及している本。テーマは面白いが、結論を言い切らないところも多く、ふわふわした本なので、議論を期待するなら読むべきではない。おいおい小町からの引用かよ、海外で寿司屋になれって結論は例えが下手すぎだろ、などとツッコミを入れながら読んで楽しむのが良いだろう。

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著者プロフィール

早稲田大学理工学部工業経営学科卒、 東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。
第一生命保険に入社後、 日本経済研究センターに出向。 現在、第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 内閣府経済財政諮問会議有識者、 総務省消費統計研究会委員、 景気循環学会常務理事、 跡見学園女子大学非常勤講師。 2015年に景気循環学会中原奨励賞受賞。 著書は『給料が上がらないのは、円安のせいですか?通貨で読み解く経済の仕組み』(PHP研究所)、『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)ほか多数。 趣味は車と体を鍛えること。 一男(大4)一女(大1)の父(書籍発売時)

「2023年 『エコノミストの父が、子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話 増補・改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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