GPIF 世界最大の機関投資家

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492396063

作品紹介・あらすじ

危うし、年金財政。130兆円の運用資産改革はアベノミクスの救世主にはならない。
2014年4月までGPIFの運用委員を務めていた著者が、知られざる世界最大の機関投資家の全容と、
あるべきGPIF改革について説く、緊急提言の書。

安倍政権が株価引き上げのネタとしてGPIF改革を利用したかどうかは議論しません。そんなことはどうでもいいのです。大事なことは、GPIFというものの存在を、国民が突然意識したのですが、それが何かもどのようなものかもまったく知らない。そして、政権はそのGPIFを大きく変えようとしている。しかも、まさにいますぐに、です。これは危険です。私は4月22日までGPIFの運用委員というものをやっていました。運用委員を運良く退任して、ある分野の守秘義務は依然あるものの、自由に記述できる立場にある私が、いまできることは、GPIFの理解を少しでも幅広く多くの人と共有することだと思うのです。したがって、理解が浅く、誤りもあるかもしれませんが、とにもかくにも、全力でこの本を緊急出版することにしたのです。  (「まえがき」より抜粋)

感想・レビュー・書評

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  • 現時点で年金の運用構造とその課題を理解するために格好の書物である。
    利回りについて割かれた分量は多いが、その分丁寧な説明で分かりやすい。
    ➡6章、8章は読むべきポイントが多い。

    そして、話はガバナンスの話へと向かう。
    著者自身がガバナンスを専門としており、ガバナンスの入門書としても通用する分かりやすい説明であった。
    ➡9章、12章が良い。

    それ以外のポートフォリオの提言などは、アイディアの一つとしてはありかもしれないが、中身としては深まっていないように感じた。
    外部からメディアなどが具体的ポートフォリオに口出しすべきでないと書きながら提言している形になっており、むしろポートフォリオの提言は書かず、途中までの年金運用とGPIFのガバナンスについての紹介書で良かったのではないかと感じた。

    全体としては、類書が少ないなかで、GPIFだけでなく年金運用、さらにはガバナンスについて分かりやすく触れた良書であった。

  • 書き口調がやさしい

  • 2014年と少し古いが、GPIFに関わってた著者が書いたもの。読みやすかった。
    一点、緊急的に出版したと書いてあるため、そのせいなのかもしれないが、著者の意見表明をするといった趣であり、入門書というか、何も知らない読者にわかりやすく説明しようという物ではない。話し言葉のように、だーっと書き連ねてあり、同じことも何度か繰り返される。まぁなので、タイトルの付け方に問題があるかな。

  • GPIFとは何かについて基本のキを整理していて、便利。組織構造、ガバナンス体制、運用方針策定にかかるイロハ、そもそもの存在意義など、基礎情報が分かりやすい口調で整理されていて読みやすい。エキサイティングな本ではないけど、役に立つ。

  • 餅は餅屋。国債はもはやリスクオンとはいえ、これだけ巨大な投資機関の矛先は、やはり国債であるべき。なぜなら巨艦が支え続ける限り、それ自体リスクヘッジになるから。なのに何を勘違いしたのか、株式比率を上げてきた。しかも皆が稼げてる時にマイナスを出してまで。最大の失敗は、投資方針を公言してしまったこと。これはいわば投資の手の内をばらしているようなもの。組織の仕組みから変えないとえらいことになりそうだ。

  • 儲けた時は褒められず、損を出したら成り行きでも叩かれるカワイソウな機関。
    もう、公的年金やめた方が?なんて思ってしまう。
    僕らの世代は、何れにしてもまともに貰えるとは思っていない。
    むしろ、すがろうとしている人こそ、納めることすら出来ない。
    何か新しい仕組みは出来ないか、と考えてしまう。

  • GPIFを巡る昨今の議論は過熱している
    公的年金であり、130兆円という資産規模を誇る世界最大の運用機関であるGPIF
    この本を読まざるともそのGPIFを巡る問題点は明らかだ
    即ち、恣意的な政治介入を断固避けるべきだということ
    そもそも株価(=企業価値)は企業の本源的価値そのものであり、バリュエーションの方法による差異はともかく、外的な資金流入の影響で左右されるものではない
    行動ファイナンスを取り上げるまでもなく、現代の投資理論がモメンタム重視であり、既知情報の蓄積がイコール株価であるとまでは言わないが、アベノミクス(=政治)の通信簿を良くするために株価操縦は行われてはならない
    ましてや所轄官庁の長でもない財務大臣の発言によって株価が変動することなど、まったくもってあるまじき姿であると思う
    現代ポートフォリオ理論に依拠した投資分散効果を狙うのであれば、日本株比率は増加させるどころか低下させなければならない
    日本株投資額の増加により、一時的に株価は改善するかもしれないが、なんらかの衝撃により株価が低迷することがあったら、投資分散が効率的に図れていないGPIFのポートフォリオは想定以上に壊滅的な損失を被ることになる
    奇しくも運用委員長に今年ご就任されたわが母校NFS教授の米沢委員長には、同氏が教壇で教えられたファイナス理論に忠実に基づいた運用指針の策定を強行に意見具申していただきたい!

  • 4〜5

  • 以前地方公務員の年金運用の仕事をしていたことがあり、年金運用のあり方についてはいろいろ思うところがあったので、GPIF改革について書かれたこの本には早速飛びつきました。
    運用のプロというのは世の中に大勢いますが、プロでも通常の運用している額は数百億円程度で、兆円単位の金額を運用している人というのは、少なくとも日本にはあまりいません。そのことから、年金運用の改革については、専門家でもどうも実務的にちょっと的外れのように思われる意見を言う人が多いように思っていたのですが、この本の筆者は、数年にわたってGPIFのあり方検討会の委員や運用委員を務めておられたというだけあって、さすがによく研究されており、説得力のある意見を述べられているなと思わされ、とても勉強になりました。
    最終章の運用の改革案については、非常におもしろい提案ではあるものの、やはりちょっと実務的には無理があるのではないかと思われましたが、今政府が検討しているという「もっと日本株を買わせる」という方向性よりは、よほどこちらの方が良いというのには同感です。
    一般の人にもわかるようやさしい言葉で書こうと非常に努力をされていることはよくわかったのですが、それでもこの本は運用の経験の全くない人には、やはりかなりわかりにくい内容ではないでしょうか。資金運用の専門家の人にこそ、しっかりと読んでもらいたい本です。

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著者プロフィール

小幡 績(オバタ セキ)
慶應義塾大学准教授
1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省、1999年退職。2000年IMFサマーインターン。2001年~03年一橋大学経済研究所専任講師。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應義塾大学ビジネス・スクール)准教授。専門は行動ファイナンス。2010年~14年まで年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)運用委員。主な著書に『ネット株の心理学』(毎日コミュニケーションズ)、『リフレはヤバい』(ディスカヴァー携書)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『成長戦略のまやかし』(PHP新書)、『ハイブリッド・バブル』(ダイヤモンド社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(東洋経済新報社)がある。


「2020年 『アフターバブル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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