中国自壊: 賢すぎる支配者の悲劇

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492443965

作品紹介・あらすじ

「戸籍の厳格な管理によって都市戸籍保有者と農村戸籍保有者のあいだの身分差別を維持することは、中国共産党にとって核心利益にかかわる問題であり、共産党独裁体制が続くかぎり廃止も緩和も望めない。
……それでは、中国の民衆、とくに全人口の約3分の2を占める農村戸籍保有者たちは、未来永劫にわたって、どんなに経済全体が発展してもほんのわずかなおこぼれしか頂戴できない状態に押しとどめられるのだろうか。
さいわいなことに、どうがんばっても現体制が維持できそうもない兆候が、あちこちから噴出してきた。」──「はじめに」より

「本書の内容は『全編、これ内政干渉』といえる、きわどいものだ。中国の現政権は、あきらかに人類がこれまでの歴史で積み重ねてきた、どこに生まれようと人間であれば普遍的に持っているはずの権利を踏みにじって、人類史そのものを何世紀か押し戻そうとするような政治を続けている。
その象徴が、中国独特の戸籍制度だ。この制度については、農村から都市への人口流入を防ぐ制度だと思いこんでいる人が多いようだ。だが、まったく違う。中国の全国民の身分を、生まれによって固定化させる制度なのだ。こんな制度がいつまでも続いていること自体が、中国がいかに横暴で身勝手な権力者によって支配されているかを示している。
ここまで歪んだ政治制度は、どんなに強固に構築されているようでも、どこかでほころびが生じたら、あっという間に崩壊するだろう。そして、この政権崩壊は、中国の労働者、農民にとって画期的な境遇の改善につながるはずだ。」──「おわりに」より

感想・レビュー・書評

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  • 戸籍制度 格差社会 資源浪費バブル

    GDP の内訳 一党独裁 裸官 ジニ係数

    所得配分

    党軍幹部、資本家、都市戸籍、農村戸籍、黒子、少数民族

    平和的政権交代

  • 2013/09/18読了:
    中国崩壊本の1つ。
    表グラフで、中国の崩壊を説明。
    あんまりおもしろくない

  • 増田氏の本はもう何年も追いかけていますが、この本は中国に関する彼の最新本です。彼の本の特徴は、その気になれば誰でも手に入れることができる一次データを解析している点で、自分で作成された図も多く登場します。理系の論文を読むことに慣れてきた私にとっては、グラフで著者の考えを理解することができ、読んでいて楽しいです。

    この本によれば、リーマンショックの2009年以降から、かなり無理をして成長している中国は、いずれ、バブル崩壊となるとしています。私もこの数年の中国の鉄鋼生産量や、資源や食料の消費量の変化は異常だと思います。

    私が高校生の頃に「ソ連が崩壊する」と言われた時には、誰も信じていま
    せんでしたが、その後にその信じられないことが起きました。中国の崩壊がいつになるかわかりませんが、それを延命させるとすれば、この本でポイントと私が思った「身分差別:都市戸籍と農村戸籍そして無戸籍(1958年導入、p295)」がいつまで維持できるかにかかっているようです。

    農村地区において、一人っ子政策を大目に見て二人目まで許容していたのが、この制度を維持する奥の手という考え方(p5)には、目からウロコでしたが、中国の賢人たちが知恵を絞っている様子がわかりました。これがソ連とは明らかに異なっているポイントですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・中国の高級官僚たちは現時点で、逃げ支度をほぼ完了している、証拠は、1)少なくとも家族の一人が海外の生活拠点を確立している人間は9割以上、2)海外への不正送金が10年間累計で 250兆円以上、2位のメキシコの6倍以上(はじめにp5、p235)

    ・八○后世代という特別呼称が成立したかは、1979年に一人っ子政策が中国全土に強制されてから生まれた世代、甘やかされて育ってきたこの世代で離婚率が30%に達している(p4)

    ・農村戸籍の人は一人目が女の子の場合は、二人目を持てる例外がある、これは農村戸籍者を多数派にしつづけるためという政治的理由(p5)

    ・GDP 1%を成長させるのに必要とする鉄鋼消費量は毎年増えて、2011年は 1996年比較で7倍、中国以外の国は鉄鋼消費量を絞りながら経済成長を維持している、高くなった素材を投入できるのは中国が統制経済である証拠(p15、18、19)

    ・中国の工業部門に占める外資系企業の割合は、2007年で従業員30%、輸出は57%、国有企業は1999年において従業員70%強でありながら、生産額は30%を切っている(p23、34)

    ・中国共産党が、都市住民と農村住民の身分を固定化したのは、国共内戦に勝利してから(p41)

    ・海岸沿いの東部地方と、内陸の中部・西部では、経済発展のペース異なる、東部の農村戸籍のほうが、中西部の都市戸籍者よりも高い生活水準(p43)

    ・ソ連の粗鋼生産量は当時2-3位だったアメリカや日本の5割増しであったが、中国の場合は2位の日本の5-6倍、これは意図的に経済資源を浪費しながら支配階級にとっての利権を維持する政策がもたらした(p66)

    ・最近、中国ではエネルギー資源を買い切れなくなってきているので、中国の貿易港に入港してから引き取り拒否されている、そのため石炭価格が急落している(p71)

    ・一人の労働者がどの程度の資本装備を使って働いているかを比較すると、日本は中国に16倍の差(日本は32万ドル)、日本は2011年の世界エネルギー消費量の3.9%でGDP 8.6%程度を算出、世界平均の半分の消費量ですんだ、これは中国の4分の1(p86、105)

    ・中国では、あれだけ高度成長が続きながら、中国企業の自己資本利益率はインフレを割り引く実質ベースでは、過去5年間一貫してマイナス、とんでもない話(p94)

    ・現在の中国は、低賃金の強みではなく、投資の拡大で成長を確保している、本来なら償却年限がきていない資本設備まで廃棄して新しい機械を導入している(p103、104)

    ・ジニ係数の比較において、アメリカは全世帯、中国は都市戸籍をもった住民のみ、母集団が違う、中国もアメリカも、保有資産の世帯平均値が、中央値の6倍、平均値が中央値の6倍になるには、合計7人と考えた場合、1人が持っている資産は、残りの人の36倍の資産を持っていることになる(p124,132,135)

    ・アメリカでは、1999年には時給で14ガロンのガソリンが買えたが、今はたったの5.1ガロン、10年間で約3分の1になったのが、アメリカ社会の現状(p129)

    ・中国では都市戸籍保有者の場合、「高考:センター試験に相当」において自動的に50点加算される(p137)

    ・中国製品の輸出不振は、世界経済の貿易の低下ではなく、中国製品が
    他国の製品に負けているから(p149)

    ・沿岸部において、地域の住民の60%は都市地域に住んでいるが、都市戸籍を持っているのは40%、残りは都市で生活している農村戸籍(p158)

    ・日中韓の要素コストシェアを見ると、1)日本は、中間財に付け加える付加価値が韓国・中国よりも大きい、2)日本は、付加価値のうち8割を労働がとって資本は2割、中国は資本が6割もとっている(p182)

    ・日米欧中国の中央銀行の総資産推移を見ると、米国は2008年後半、中国と欧州は2006年くらいからずっと伸びてきている、中国は2002-12年で9倍(p266)

    ・中国での実質の潜在消費者は都市戸籍を持っている4-5億人、農村戸籍者はいつまでたっても日本製品の消費者になれない、4億程度であれば ASEAN、トルコ、西アジアにもある、過去15年の日本の対外直接投資をみれば、日本は中国からASEANへの乗り換えが順調に進んでいるのが分かる(p275)

    ・主要商品の消費量が人口に比例するとすれば、中国の消費量は20%程度のはず、それが、セメント53%、鉄鉱石48%、石炭47%である(p283)

    ・蘇州程度の中規模都市でも、下に直轄市をもっている、下の直轄市は蘇州市に税金を上納しなければならないにもかかわらず、こうなっているのは、蘇州市に直属する市の市民は、蘇州市の戸籍が持てるから(p293)

    ・鉄道が航空機に対する利点(乗り降りの区間を自由に選べる)を活かすための条件として、1)かなり狭い帯状の地域に人口密度の高い都市が繋がっている、2)沿線人口が高速鉄道の最寄駅に出てこれるような鉄道網が存在していること(p323)

    2013年7月7日作成

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著者プロフィール

1949年東京都生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で歴史学・経済学の修士号取得、博士課程単位修得退学。ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て帰国。HSBC証券、JPモルガン等の外資系証券会社で建設・住宅・不動産担当アナリストなどを務めたのち、著述業に専念。経済アナリスト・文明評論家。主著に『クルマ社会・七つの大罪』、『奇跡の日本史――花づな列島の恵みを言祝ぐ』、(ともにPHP研究所)、『デフレ救国論――本当は恐ろしいアベノミクスの正体』、『戦争とインフレが終わり激変する世界経済と日本』(ともに徳間書店)、『投資はするな! なぜ2027年まで大不況は続くのか』、『日本経済2020 恐怖の三重底から日本は異次元急上昇』、『新型コロナウイルスは世界をどう変えたか』(3冊ともビジネス社)、『米中貿易戦争 アメリカの真の狙いは日本』(コスミック出版)などがある。

「2021年 『日本人が知らないトランプ後の世界を本当に動かす人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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