- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784502657306
作品紹介・あらすじ
本書は、経営学や経済学分野で急速に発展してきた「新制度派経済学」あるいは「組織の経済学」と呼ばれている新しい理論的アプローチ(取引コスト理論・エージェンシー理論・所有権理論)を用いて、日本の様々な業界の組織や戦略を分析することを目的としている。各業界内の日本企業が、どのような課題にさらされているのかが明らかになる。
感想・レビュー・書評
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専門書にしてはなんだか切れ味悪い文章だなあと思ったら、大学院生のレポートをまとめたものでした。
用語の定義や論理展開などのひとつひとつが微妙に曖昧ではっきりしない。そういうはっきりしないものが積み重なった結果すごくぼんやりとしたものになってしまっている。
実際の分析も、印象論が先立ってしまって産業構造を明示できていないし定量的な分析も全くない。通常の戦略論の分析の中に、ちょっと新制度派の用語をちりばめた程度の内容になっているように思える。
それと、どの論文もはじめに妙に社会学っぽい話から始まるのに、実際の分析とほとんど関連しないのも無理に知的に見せようとしているようで気恥ずかしいなあと。何の気なしに読んでいるけど、やっぱり一線で活躍している学者さんの本てのはちゃんとしてるんだなあ。
ただ、新制度派の理論をつかって業界を分析するというアプローチはとても面白い。これを財務情報から定量化できるまでになれば、いろいろ実際の企業行動が説明できるようになるんだろうとは思う。実務的にもM&Aで使えるツールの開発とかできるかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
マスメディア、化学工業、酒類メーカー、ヘッジファンド、VCを題材にした新制度派経済学の応用論。
マスコミ・コンサル・酒類メーカーは、△。
化学工業・ヘッジファンド・VCは、○。
化学工業で出てきたウィリアムソンの「革新のプロセスの3つの段階」の話は勉強になりました。発明・開発・効率的最終供給の3つのプロセスがあるとすれば、最初の二つは大企業でなくていいという話。 -
組織の経済学・新制度派経済学を、様々な分野に応用している論文をまとめたもの。
具体的には、マスコミ・化学メーカー・ヘッジファンド・ベンチャーキャピタルといった個別業界を見たものや、ナレッジ・マネジメントといったトピックを扱っているものなどがある。個々の論文は主に大学院生の方が執筆されたものであり、菊澤先生が全部書いている訳ではないという点に若干注意。
一つ一つの章がコンパクトにまとめられており、また話題自体も珍しいものが多いので、使い方によっては卒論に困っている学生の大きな助けになるかもしれない。実務家の方にとっては、視野を広げてくれる一冊となりうる。
新制度派に関する前提知識は、なくてもいいけどあればなお良い。菊澤先生の他の著作と比べると、コストパフォーマンス面で若干劣る。
2730円。 -
「新制度派経済学」を学んだ社会人たちによる、理論の現実への応用論文集。社会人の手になるので、非常に現実に根ざした内容となっている反面、章によっては完成度が低く、幾分穴のある論文が散見される。特に酒類メーカーの章には致命的なミスが・・・(そのミスに気づいたのは私ではないのですが。笑)